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悪役令嬢に転生した……かと思ったけど、モブキャラの公爵令嬢の方だったので、馬鹿な攻略キャラを教育します!!  作者: 綜奈 勝馬


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第三百九十三話 エカテリーナ様が王妃になった理由。


 いい笑顔で『良かった! 本当に良かった!!』というジーク。そんなジークにジト目を向けながら、私は口を開く。


「……おい。流石に失礼じゃない、ジーク? 幾らなんでもしないわよ、そんな事!! そりゃ……ジークに対してドロップキックしたり、アレンに対してリバーを放った事はあるよ? あるけど、アレだって元々はジークが失礼な事言うからだし、アレンに関してはちゃんとエカテリーナ様の許可取ったじゃん! 私だけが悪い訳じゃなくない!?」


 私がやったことが確かに一般的な貴族令嬢……というより女性……うん、認める。人としてもどうよ? とは思うよ? 思うけどさー! 相手側に非があるからな訳じゃん! 今回、陛下には非がないもん! それなのにいきなり暴力的な行動に出る訳ないじゃん!!


「そもそも、相手は国王陛下だよ? この国の最高権力者だよ? 流石の私もんな事出来るか!!」


 がるる! と唸る私。そんな私に、ジークは透き通った……というか、煤けた笑顔を浮かべて見せる。


「……そうか? 少なくともこの国の次期最高権力者である俺を簀巻きにしてその辺に転がしたり、精神的にガンガン追い詰めるじゃないか」


「そんな事私はしてないわよっ!!」


「ああ、うん。アリス『は』していないな? でもアリスの所の寄子は普通にするじゃないか。勿論、開き直るつもりはないぞ? アリスに対して非礼な事をしたのは事実だし、そのせいでサルバートの寄子が怒り心頭な事は重々承知しているし……あの訪問で言った通り、それも乗り越えてアリスと歩んでいきたいと思ってはいる。思ってはいるが……」


 気まずそうに。



「サルバートの寄子……というか、サルバート領の人間って、別に王家に対して忠誠心というか……そういうの、持ってないだろう? なら、普通に父上の頭ぐらいはぶん殴るんじゃないか?」



「しないわよっ!!」


 確かに猛獣使いとか言われてはいるけども! 流石に私自身は自制心の塊――でもないけど! そんな事で殴ったりは――


「そもそも……アリスの母上だってそうだろう? 父上、だいぶトラウマになっていたらしいし……」


「……あ、はい」


 アリス、貝になります。いや、勿論私はそんな事するつもりはないよ? そんな事するつもりはないけど……過去の実績プラス、血筋考えるとジークの心配もなんとなく分からんでもないというか……


「……アリスの……母上?」


 と、そんな風に私が自身の内なる獣の強大さに内心震えていると、ベッドの上で顔を覆っていた陛下がそっと顔を上げて――


「っ! 不味い!!」


 不意にジークの焦った様な声。が、そんな声も聞こえてこない。否、聞こえてはいるのだ。聞こえてはいるけど、頭の中には全然入ってこない。だって。



「あ……あはは……ふ、フローラ? ごめんって!! 本当にごめんって!! で、でもさ!! リンドは僕の兄貴分だよ? 新婚の君たちの邪魔をしたのは申し訳ないけど、ちょっとくらいはリンドを貸してくれても――ああ、分かった!! 悪かった!! そうだよね!! 悪いのは僕だよね!! 分かったから、その模擬剣仕舞ってよっ!! なんでサルバートの人間はリンドを除いて血の気が多いんだよっ!!」



 ――陛下が、中空を見つめてブツブツ何かを呟いていたから。ええっと……な、なんぞ、これ?


「へ、陛下?」


 思わずロッテがそう言って陛下に一歩近寄る。そんなロッテを、ジークがそっと手で制した。


「……駄目だ、シャルロッテ嬢。今の父上に近づいては」


「え? で、ですが! 今の陛下は常の状態では無いですよ!? お、お医者様!! お医者様を!!」


「無駄だ。これは……心の病だから」


 ……なるほど、トラウマか。


「……父上とアリスの母上――フローラ様は犬猿の仲でな? ああ、違った。一方的に父上がイジメられていたらしい」


「……スモル王国の最高権力者をイジメていた、ですか……?」


「当時は王太子だが。まあ、年齢的にも……三つ下? 二つ下? ともかく、父上の方が幼かったからな。加えてアリスの父上、リンド殿をお互いに慕っていたので取り合い、というか……」


「……アリスに対する、リリアーナ様とジーク様みたいな感じだったという事でしょうか?」


「ああ、言い得て妙だな。俺だってリリーには若干の苦手意識がある。直接拳を振るわれた訳でトラウマがある訳じゃないが……」


 そう言ってため息。


「……普段はこんな事は無いんだ。無いんだが……まあ、なんだ? 精神的に辛い事があると、こういう事があるんだ」


 ……大丈夫か、この国。いや、ウチの身内がした事だけども!!


「……こうなったら落ち着くのを待つしかないんだ。下手に近づいたら……しかも、シャルロッテ嬢の様な見目麗しい女性が近づいたら不味い」


「……なぜでしょうか?」


 そんなロッテの言葉に、ジークはきまずそーに視線を逸らし。


「……トラウマなんだ。父上、綺麗な女性とか、大人っぽい女性が若干苦手というか……フローラ様を思い出すらしくて……」


「「……」」


 言葉も無いんだが。それは流石に――って、あれ?


「……んじゃ、エカテリーナ様が王妃なのって……」


 私の言葉に今日一、気まずそうな顔をして。




「明言は避ける。避けるが……私の実の母上も、実年齢よりは幼く見えていたらしい……」




 ……二回目だが……大丈夫か、この国。


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