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第289話 くるくる(前編)

第289話 くるくる(前編)


 最近夢が不安定である。普段は夢を明晰夢にしてある程度コントロールできるのだが、その隙を縫うようにしてどこかの山林に飛ばされる。そのときはただ起床するか、あるいは元の場所をイメージするか、あるいはそのまま散策するかで、実害があるわけではない。


 嶽さんから情報が入った。何でも、その道の何某が、私に呪いをかけてほしいと依頼されたらしい。それは協会に盾突くことになるからその何某は断ったらしいが、何とも恐ろしい話である。依頼主に関しては流石に口を割らなかったそうだが、まあ、大方予想は付いた。一応注意するに越したことはない。


 弦間さんに聞いたところ、遠くから一瞬で呪殺するようなものは非常に高度で、使うことができる人物も限られているし、条件も限られているらしい。大抵は予兆があるという。私の場合、護符と人型に先に影響がみられるから、当座はそれで大丈夫だそうだ。むしろ普通に刺されたり轢かれたりする方がリスクになるとのことで、念のため傍に桾崎さんを置いておこうかと打診があったが遠慮しておいた。



 それから、私は興信所を使って前の職場の連中、特に私に呪いをかけたAその不倫相手のB、Aの取り巻きでBの不倫相手のC、D、Eとその親族の現在を調べた。協会の方から斡旋された業者だったため割引があったが、それでもそれなりの値になった。どうやらが私にかけた呪い、つまり呪詛返しで奴らが受けている呪い、例の夢から現れた幽霊もどきは破滅的な勢いを見せているようで、今のところ親族の未成年は全員事故か病気で死んでいて、当然新しく生まれることなどなく、大人もほとんどが死ぬか自殺、生き残っているのも気がおかしくなった者ばかりであった。この呪いがどこまでいったら薄まるのか分からないし、呪いなのか偶然なのか、証明する手立てはどこにあるのだろうか。


 その中で親等の割に1人、いた。彼を仮にYとする。Yは妻がAの血縁で、妻と子供2人は交通事故(速度を大幅に超過して山道から落ち、岩壁に突っ込んだ)で死んでいるが、Yはそのとき同乗していなかった。仕事はクビになっている。これは元の素行の問題らしい。


 前の職場の連中の間では奴らの死を話題にすることはタブーになっており、わざわざ加勢する者などいない。絶対とは言い切れないが、ほぼ確実にそうだ。そうなると私を呪って喜びそうなのはやはり、Y以外にいない。


 決定的なのは2つ。まず、Yが丑三つ時に小さな神社に行っているということである。五寸釘が見つかることはなかったが、お手製の呪符(?)が埋められていた。全く効果はないらしいが。それから、Yの車がまさにあのときみーさんが見せてくれたものであった。



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 この手の人物が一度誰かに断られたからというだけで、諦めるとは思っていない。恐らく協会の息の届かないような、アンダーグラウンドな所に呪いを依頼するだろう。しかし、つくづく、陰湿である。真っ向から相手に対峙しない。自分の姿を透明にした攻撃しか、ない。卑怯者だ。それでいて、エンドポイントを理解できない。


 Yの家族がどうこうは私に言われても、どうということはない。元を生み出したのは奴らであって、そこにYの恨みが飛ぶならまだ、何故会ったこともない私に行くのだろうか。論理が壊れ切っている。この手のは、受けた物を手前で反射して、それで残りがいると再び仕掛けてくる。私は自分の所で受け止めるほど度量は大きくない。残りがいる限り何度も仕掛けてくる。そうなると、確実なのは殲滅させることであるが、そうしようとはなかなか思えない。


 そうすると、一番無難な解決方法は説得(調停、というのは私からしたら変である。何もしていないのだから)だが、応じるとは思えない。一連のレポートを協会に出して、間に入ってもらおうと思う。

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