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あなたの魂浄霊します 横浜関内特級ファイルII  作者: KYOKO
【終わりと始まり セラピストへ向けて】

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エピローグ

 2024年3月18日月曜日

年末のビルの改装の影響で、暖かくなってから大掃除をすることにしていたが、未だに外は寒く桜の咲く気配はない。

せめて春分の日までには終わらせようと、計画していたが、依頼が続いたためギリギリになっていた。


雑巾で棚を拭いていると、ブーっとスマホが振動した。バックから取り出すと、LINEに通知がある。


「椿姫のチケット取れたよ。莉奈も予定大丈夫だって。」

「わー嬉しい!浩ちゃん、ありがとう!」

夫にLINEを送り、喜びに浸っていると、オフィスのドアが開く音がした。

「好子さん、コーヒー買ってきたよ。どっちがいい?」

「あー、山本さん。ありがとう。じゃぁミルクが入っている方で。」

山本さんから、缶コーヒーを受け取ると、朝からの掃除の疲れがどっと押し寄せた。

掃除はこれぐらいにして休もうと、カーディガンの袖をもとに戻しバックからクッキーの缶を取り出した。


「これね、昨日莉奈がバイト帰りに買ってきてくれたのよ。(Dean and Deluca)のチョコレートクッキー。」

山本さんは、なんかおしゃれな店なんだっけ?と言うと、クッキーに手を伸ばした。

サクサクした生地にほろ苦いチョコレートが良いアクセントになっている。


「莉奈ちゃんって今年何歳になるんだっけ?」

「もう二十歳よ。成人式の振袖の準備もしないとね。」

山本さんは、子供の成長は早いねーと呟いた。


「本当に。福ちゃんが来てから8年よ。莉奈が拾ってきた時と比べたら随分大きくなったわ。食べ過ぎかもしれないけど。」

「三毛猫だっけ?」

「そうよ。」

莉奈が小学校6年生の夏、瀕死の猫を拾って帰って来た。

動物病院に連れて行き一命を取り留めたが、猫アレルギーの父の元では飼うことができず、里親が見つかるまで一時的に保護する事で了承を得たが、いくら待っても見つからなかった。


 ちょうどその頃、横浜にオフィスを出すと啓介先生から連絡があり、こっちで仕事をしないかと、声をかけられた。それをかわきりに、莉奈と横浜まで引っ越して来た。


「最初、「名前はブッチーにする」って、莉奈が言ってたのよ。読んでた本のキャラクターに三毛猫のブッチーがいたから一緒にするってね。でも、お世話してるうちに、体がまん丸で、ふくふくしてきたから、いつの間にか福ちゃんになったわね。」


「へー、面白いね。浩一さんは猫、大丈夫だったの?」


「うん、大丈夫。でも、演奏会の間は出張ばかりでしょ?だからほとんど家にいないの。あ、今度ね、みんなで椿姫のオペラ観に行くの。」


窓ガラスをバンと強く叩く音がした。

見ると街路樹の枝が大きく揺れ、突風が吹いていた。


「山本さん、高木さんは明日の3時でよかったよね?」

「うん、場所はメールで送ってるから、直接来られるよ。」

「そう。きっと大丈夫よ。」

また、風の唸る声が聞こえるが、意識を向けないようにしていた。

不意に、山本さんがこちらを見た。

「好子さん。聞いて良い?」

「何?」

「どうして、好子さんはセラピストになったの?」

山本さんは、なんとなく気になってと付け足した。


「うーん。そうだね、話すと長いよ…」


季節外れの大掃除を終え、お茶をする頃、外はもうすっかり暗くなっていたが、雲の隙間からキラリと、星が輝いていた。



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