12話 想定外
「グ、グレン君!!」
「グレン君無事かああ!!」
「あ、あれは、?」
砂埃が消えるとそこには、大きなクレーターができ、その中心に腹部に大穴をあけ仰向けに倒れているガイル。
来ていた服は焼落ち、至る所に傷と火傷を負ったグレンが倒れていた。
「う、うそ、グレン君!!」
ベティを含め、トビとマレインもグレンの元に走りだす。
「グレン君!? まだ、息はある。サーシャ様! 一緒に回復魔法をかけ続けてください! 魔力も枯渇してる......トビ! カバンにまだ魔法瓶がある! 持ってきて!」
「まさか、本当に倒すなんて、! 生きてる......私たちは生きてるんだ!」
「ああ、あの少年は英雄だ!!」
騎士たちは腰が抜けた状態で涙を流し生きていることを加味してた。そして倒れているグレンが生きることを願うことしか出来なかった。
グレンに自分の限界まで回復魔法をかけ続けていた時、ハートレイ都市の方角からいくつもの馬を駆ける音が大きくなってくるのがわかった。
旗を立て向かってくるもの達の顔にはよく目にしていた顔が見えマレイン達は安堵した。
「何事だっ!! 何が、はっ! グレン!!」
先頭を走っていたのは、ラインハルトであり公爵直々に異変を感じこちらに来ていた。そして、大きなクレーターとそこに横たわる人型の魔物が目に入り、次にベティとサーシャに回復魔法を受けている傷だらけのグレンに驚愕しすぐ側に向かった。
「何があったのだ、!グレンは生きているのか!?」
「グレン君が私たちを救ってくれたんです......! 息はしてますが一刻の猶予も無い状態です! 回復が間に合ってません!!」
「マルス!! グレンに回復魔法を使え!」
「おまかせを!」
マルスはベティが所属する団の団長であり、魔力の高まりを感じ騎士を集めここに向かうように進言した人であった。
「ベティ! 貴方様は......! まずはお2人とも魔法を使いすぎだ! 私が変わる魔法瓶を今すぐ飲むんだ」
マルスはグレンの状態に顔を顰め、すぐに魔法を使い始めた、
「団長。グレン君を、よろしくお願いします」
ベティが声を出す時にはサーシャは倒れてしまい、それに続きベティも倒れた。
「お嬢様!!」
「ベティ!」
メイドと、トビが2人に近寄った。
「なんだあの魔物は......! マレイン! 何があった?ディーンはどうした!?」
「はっ!盗賊との交戦中に人が魔物に変わり。ハートレイ様......ディーンとガロンは重症の傷を負い馬車の横で休んでいます。グレン君が最後......私たちを守りました。私は騎士失格です。何も出来なかった......!」
「ディーンがいながら......! 詳しいことは後で聞こう! すぐに都市へと戻る!その魔物とそこら辺に寝転んでいる盗賊も共に運べ!」
(なんて事だ......グレン。すまない、! 何を使っても助けるぞ、!)
「ぐっ......身体が......ん? ここは、? あの魔物は!?」
グレンが目を覚まし、見覚えのない部屋に惑いながら自分の身体に包帯が巻かれていることで薄れていた記憶が呼び起こされていく。
その時、部屋にベティが入ってきた。
「グレン君!! 起きたのね......!」
「ベティさん! みんなは!? くっ......」
「起きてはダメよ! みんなは無事、隊長もガロンも生きてる。本当に助かって良かった......! 今公爵様を呼んでくるわ!」
(良かった、助かったのか。ここがハートレイ都市に着いたんだな......まさかこんな状態でここに着くとは)
廊下の方から何人かのドタドタと足音が聞こえ、大柄の男とグレンより少し背の低い見覚えのある顔の少年が部屋に入ってくる。その後ろにトビやマレインの姿もあった。
「グレン! 目が覚めたのだな! 良かった、本当に!」
「グレン君! 良かった、!」
「ラインハルトさん、レオン。お久しぶりです。ここに俺がいるってことは助けてくれたんですね、ありがとうございます。」
「いや俺は何もしてあげられてない。凄まじい魔力を感じてな、回復魔法に長けた者と共に向かったのだが......酷い有り様のグレンがいて肝が冷えたぞ?今回は本当に助けられたな。感謝する」
「死んだと思ったけど......助かって良かったです。こんな姿でここに来るなんて想定外ですけどね、はは。あっどのくらい休みましたか俺?」
「ぷっ、ガハハ!」 「父上! そんな大きな声を出したら傷に触ってしまいますよ!」
「おっと済まない。変わってないことが嬉しくてついな。グレンが眠りについてから3日は経ったぞ? もしもの時があったらお前の一族になんて言おうかと思ったのだが。回復してきていてよかったぞ! この真相はマレインから聞いたぞ。」
「3日も! はあーそんなに寝てたのか......」
「グレン君、そんな傷で生きているのが奇跡ってみんな声を揃えて言ってたんだ......良かったよ本当に、!」
「ああ、レオンが言った通りだ、マルスが居なかったら本当に危なかったな。流石は一族の者だと感じた」
「はは、この身体結構頑丈みたいですからね......」
「グレン君、本当に助かった。護衛を務めてる俺たちがあの有様で済まない......ありがとう。隊長やガロンもちゃんと生きている」
「ええ、本当に。もうダメだと諦めていたわ、」
「済まない、グレン君」
マレインやトビ、ベティが苦悶の表情を浮かべるのをグレンは笑顔で返した。
「何言ってるんですか、マレインさん。そしてトビさん、ベティさん。今回は俺が勝手にやった事だし、あんな事誰も想像出来なかった事ですよ? 俺の相性が良かったのかもしれないし。もう終わったことですから。俺も早く傷治して門から自分の足でちゃんと都市に入ることが今の目標です」
「ガハハ。だから言っただろう! グレンはこういう者だ。前を向くしかあるまいよ!」
コンコンとドアから音がなり、茶髪の眼鏡をかけた男が入ってきた。
「ラインハルト様。レオン様。そろそろグレン様を休ませましょう。傷に触ってしまいます。回復魔法もかけますので」
「おお、そうだな。グレン!まだ傷は治っておらん。完全に治るまではしっかり休むのだぞ。それまでは魔法も使ってはならん。身の回りの生活は、その、なんだ......任せておる者もいるから心配はするな。」
「グレン君。本当に久しぶりだから、色々話をしにくるからね!」
ラインハルトとレオンを先頭に部屋から出ていき、残るのはマルスと2人の女性が残った。
「はあ〜ベティ! お前も下がれ! あとサーシャ様も下がって頂けますか?」
「団長! 私は公爵様から許可を得てますよ!」
「マルス様!私もです。身の回りの世話は私がやるようにと!」
(はあ、サーシャ様まで何を言ってるんだ、まったく......)
「あの〜、身の回りの世話って、まさか2人が?」
「そうよ!」 「そうです!」
「済まない、グレン様。2人がどうしてもと、ラインハルト様に言ってな。おっと済まない。私は第3師団の団長のマルスという。今日も回復魔法をかけよう」
「はは、ちょっと言ってる意味が分からないですけど......グレン・アビスです。マルスさんが助けてくれたんですね。ありがとうございます。あと様なんてつけなくても呼び捨てでいいですよ」
そうしてついていけてないグレンを横にマルスは回復魔法をかけていくのだった。
時間は遡り、魔物と戦ったもの達をラインハルトは急ぎ都市まで運び、傷の大きいグレン、ディーン、ガロンの治療に当たった。サーシャの護衛であった騎士も傷は残すものの状態は安定しておりベティとサーシャは都市に着くと怠さの残るが目を覚ましていた。
そしてその日の夜、マレイン、トビ、ベティ、サーシャからことの真相を聞き頭を悩ませた。
「まずは、皆が無事でよかった。そしてサーシャ殿も無事で良かったな、本当にタイミングが悪いというか良かったというか......今回はお忍びだと聞いたが?」
「本当に申し訳ございません。ハートレイの都市をこの目で見たかった私の我儘を通してお父様とお母様には手紙を残してこちらに向かったのです。全部私のせいです......」
「そうか。サーシャ殿、貴族としてこのような事はあってはならないことは分かってますな?」
消え入る声ではいとサーシャは答える。貴族の中の最高位である公爵に、自分のせいでこのような事が起こってしまい事の大事さに青ざめていた。
「起こったことに後悔しても仕方ない。私もお忍びなど数え切れんほどやりましたからな。今後このような事が起きないように肝に命じてくだされ。今回は忠告だけで済ます。しかしランブル家には手紙を送ろう。サーシャ殿も送りなさい」
びっくりした表情でラインハルトを見るサーシャ。
「え。こんな事が起きてしまったのに......寛大な心に感謝致します」
「よし、サーシャ殿は下がりなさい」
「公爵様、すみません。最後にあの男の子は何者ですか、?状態は大丈夫でしょうか?」
「サーシャ様、それは後にお伝えします。なので今はーー」
「よい、エバンス。サーシャ殿にもグレンは助けって貰ったのだからな」
「しかしーー」
「いいじゃねえか、エバンス。ラインハルト様がそう言ってるんだからよ」
「まったく団長方ときたら......」
ラインハルトの後ろに第1師団団長のエバンス。第2師団団長グレイブ。第3師団副団長の1人カーリアが立っていた。
「サーシャ殿。これは国王様からのお達しでもあり今は他言無用にして欲しい。あの少年の名はグレン・アビス。アビス家、宝具の一族の長子なのだ。昔からハートレイは関係が密接にあり、今回グレンがここで修行をかねて参ったのだ」
「え!? あのアビス家ですか!? そんな、まさか本当に」
貴族の中でも公爵、侯爵といった高位の貴族、そして古参の貴族しかアビス家が現在も生きていることは知らなく、一般的には絵本や伝承でしか存在していなかった。現にハートレイ領の隣にあるアビス領となっている強力な魔物が住む山々には人が住んでいるとは誰も思わなかった。
また伝承にある永劫の称号として宝具の一族には辺境伯が送られているが、それも今は名誉として残されているだけだと思っていたのだ。
「そういう言うのも無理は無い。何せずっと王家や貴族の限られた者だけが知りうる話であるからな。今はなんとか一命を取り留めたが予断を許さない状態だ。だが宝具の一族の者だ、必ず助ける」
「なんということでしょう......まさか伝承に伝わる英雄の宝具の一族とは。本当に存命であったのですね」
サーシャもどこか腑に落ちた感覚であった。最初はフードを被り分からなかったが戦いが始まりフードがはだけると、見惚れるほどどこか神秘めいた顔が見え、その戦いも凄まじいものであったからだ。
今まで貴族の社交界で俗にいうイケメンと言われる人を見てきたサーシャだがグレンはそれと比べられない何かを感じていたのだ。
「失礼を申し上げます......お怪我が治るまで身の回りの世話は誰が行うのでしょうか?」
「ん?それはメイドが行う予定ではあるが......」
「それはやめておいた方がよろしいかと思います。宝具の一族だと知らなくてもあの顔立ちやオーラは普通とは違います。私のせいでこのような状況になったことと、今真相を知った私が身の回りのお世話をさせていただけないでしょうか?」
「なるほど。確かに一理あるが、信頼のおける者を側につかせようと思っているが?」
「もちろん、それは承知の上です。ですが......なんというか、そのグレン様の顔立ちに」
言いづらそうなサーシャにグレイブが声を上げる。
「なるほどな......!確かに俺もさっき初めて見たがあれは見惚れるかもな。だが、そういう貴方はどうですかな?」
「私は婚約者様が決まっています。なのでその心配はいらないかと」
「そうか......わかった。これも事の罰として、サーシャ殿にグレンのお世話をしてもらおう」
(一族の者とは何回もあっているから、感じなかったがやはり、あの一族の持つ雰囲気や顔立ちは目立つか......)
「なっ!お待ちくださいラインハルト様!私もお世話をさせてください。旅路でグレン君とはーー」
「ばかっ! ベティ、やめろ!」
「どうして、私たちは一緒に旅をした仲間なのよ? 知っている顔があった方がいいでしょ!?」
「ベティ?ラインハルト様に直接ものを言うなんてどういうことかしら?
私はそんな事教えたつもりはないわよ」
「す、すいません。けどーー」
「ガハハ、わかった。ベティにもその役目をしてもらおう。言っていることももっともだ。遠く離れた場所に来たのだ。知っている顔があったほうがグレンも気が休まるだろう。さあ、サーシャ殿は下がりなさい。他のものは残れ。聞きたい事がまだある」
失礼いたしますとサーシャは部屋を出ていき、ラインハルトは盗賊と人を魔物にする魔道具に関して聞き、調査を第一師団に託した。
「これに関しては、東のイルベス大陸から流れてきた物を盗賊が使ったことが有力だと思うが......念のため調査を第一師団に託そう。それでグレンの戦いはどうであった??」
そしてグレンの戦いに関して聞き、内心で興奮しそして、歓喜していた。
「グレン。センの手紙では聞いていたが、乗り越えたんだな......」
「ん? ラインハルト様?」
「いやなんでも無い。それではこれで解散とする。今回の護衛役としてマレイン、ベティ、トビ。ご苦労であった。思うところがあると思うが今はしっかり休め」
皆が部屋を出ていくと、ラインハルトも立ち上がりグレンの様子を見に行くのだった。
グレンの部屋にはマルスを筆頭に回復魔法に長けた魔法師がグレンに魔法をかけていた。その横にレオンが心配する目でその様子を見ていた。
「失礼するぞ。グレンはどうだ?」
「ラインハルト様。先ほど安定してきた所です」
「公爵様、この子の回復力は凄まじいですよ......今までいろんな人を見てきましたが、人では無い錯覚を覚えます」
「ほう。詳しく聞かせてくれ」
マルスと共に回復魔法をかけてた第3師団の隊長の言葉にラインハルトは興味をもった。
「なんというか、団長の魔法もありますが、回復するスピードが尋常じゃないです。内包している魔力の量にも尋常じゃないですし。そして回復魔法は普通、傷そのものが外からの魔法で治っていくものですが......この子は何か反発するような感じがしますし、中から治っていく感じがするんですよね」
「ほう、そうか。中からな......わかった」
ラインハルトはマルスに目配せをするとマルスは一度休憩といって他の魔法師を部屋から出させた。
「なかなか、団員も成長しているではないか」
「はは、そうですね。まあ団員なら、そう感じて貰わないと困りますがね」
「マルスさん、内側から回復しているっていうのはどういうことでしょうか?」
「ああ、私も詳細を聞きたい」
「そうですね......回復魔法に関しては、他の魔法とは違い、魔力に属性を持っていますが持っていないんですよね。本当は回復魔法自体、純粋な魔力でできていて、その魔力は属性ではなく性質を持っていると言う方がいいでしょうか。
そのため自然魔法の中で、火属性は焼きつくす性質、つまりそのようなイメージがありますので傷にはほぼ効きません。その代わり水は冷たさや何かを流し消すイメージがあるので回復魔法の効果が強いです。
ですが、グレン君に関してはラインハルト様やレオン様もご存知のように純粋な魔力自体に雷光という属性も持っているので、多少回復魔法が純粋な魔力を使っているとはいえ性質上反発してしまうのでしょう。
私や先ほどの回復術師が使う回復魔法は属性がそもそもないので、最初は反発はありましたが、今は傷にも効果はあります。ですがなんというか実際にグレン君を回復しているのは雷光を持つ魔力が回復させているような感じですね。どこまで回復魔法が効いているのか正直私もわからない所です」
「なるほど、それならば今後も回復魔法は相乗魔法の枠でしか頼れないってことですね。魔道具も使えないとは聞いていたけど......」
「ああ、大きな力には代償が必要ってことか。色々自分の力で生きていく事が他の者とは違うと言っているようなものだな。マルスの付与魔法が効いて本当によかった」
「そうですね。こればっかりは色々文献をみて検証するしか無いですね。もし宝具の一族ではなく人であったら今頃最悪な状態になっていたのは間違い無いですね」
「そうか。肉体的にも優れていることが功を奏したな。よし。レオン、お前も部屋で休め。マルスあとは頼んだぞ」
「力の代償か......」
ラインハルトは一人呟いたのだった。
今回も読んで頂きありがとうございます。




