北へ...3
面白いと思っていただければ幸いです。
評価やコメントも頂けると、今後の励みになります。
拙い文章力ですが、引き続き書き続けますので、よろしくお願いします。
<毎週土曜日掲載>
「全員、奴から離れろっ!」
ブレナンが叫んだので、一旦距離を取って様子を窺おうとしたら、アイノにその場に押し倒される形で地面、と言うか雪へ顔から突っ込む形になった。 何が起こったのか分からず、雪に塗れ顔だけ上げてみると、ブレナンは楯を構えたオーロフの後ろに、それ以外のメンバーは、アイノや俺と同じように雪面にうつ伏せになっている。
「いいかっ! ジーク、ヴィ! そこを、動くんじゃねぇぞっ!」
それから間もなく、氷雪岩亀の全体が青白く光った・・・。
「くっ・・・・・・・・・」
一瞬視界が奪われ戻ってくると眼前に、甲羅全体に棘のように氷柱を生やした氷雪岩亀が・・・。 奴は顔だけ出して辺りを見回すと、目標と定めた処へ氷柱を飛ばし始めた。
辺り一面にも氷柱が降り注ぐが、大半はブレナンとオーロフへ集中している。 俺達は雪に埋もれていたことで、奴の標的からは外れているようだ。って言うか、あれって魔術なのか?
魔物が魔術を使うって・・・えぇぇぇっ!? あっ!そう言えば、ブレナンに講習を受けた時、森の中でそんな魔物も居るって・・・。 暫らくすると全て打ち尽くしたのか、甲羅から手足を出してまた動き始めた。
「気をつけろよ! 奴は一定時間ごとに、さっきの攻撃を仕掛けてくる。 ある程度距離を開けていれば、ばら撒き攻撃自体は脅威にならないが、視界に入ってしまったら俺達みたいに集中攻撃される。 攻撃前の予兆はあるから、予兆が見えたら離れて伏せてろ。 ジーク、ヴィ、分かったなっ!」
「ああ、分かった!」
「は、はいっ!」
「アイノ!」
「あいよっ! なんだい?」
「こっちへの攻撃はフォロー程度にして、周囲の警戒を行っていてくれ! 恐らく他の魔物か獣が、音と奴や俺達の血の匂いで、寄ってくる可能性が高い。 不意打ちは避けたい。 頼んだぞっ!」
「はいはい、任されたって、安心してなっ!」
アイノが若干距離を取って、周囲を確認し易い位置へ移動する。
若干の切り傷はあるようだけど、ブレナンとオーロフも大きな怪我はしていないようで、そのまま先程と同じように、奴に接近して攻撃を再開している。 スヴェンも遠距離から、火弾を撃ち込んでいる。 ヴィは・・・スヴェンの近くを、チョロチョロしているな。 あっ!またこけた。
その後も先程と同じ攻撃を受けつつ、気長に戦い続けていると・・・。
「ブレナンッ! 右後方、林の中から何か来るよっ!」
「何が来るっ! 対象は分かるか?!」
「あ~、待っとくれ・・・ん~恐らく、猪型が一体。 他は、今は無いよっ! だけど、長引くと他にも、続けてくるよっ!」
「ああ、分かってる! ジーク! アイノと協力して、林から出てきた奴を倒せっ! 任せたからなっ!」
「ジーク、行くよっ!」
「ああ!」
◆◇
アイノに続き林方向へ移動し、目の前に飛び出してきた魔物と対峙する。 青と白とが混ざった毛並で、全体が光っている中型の猪だ。 えっと確か前に、読んだ(取り込んだ?)本に書いてたような・・・。
猪はそのまま突っ込んで来ずに、林を出た所で此方の様子を見ながら、前足をかいて突進の機会を窺ってるようだ。
「ほぉ~、こいつはいいねぇ~。 水晶猪とはねぇ~」
「アイノ、水晶猪って何だ?」
「ああ、こいつはね。 氷雪岩亀みたいに魔術は使えないが、その水晶の毛に守られた体で、一直線に突進して来るのさ。 元々硬い毛並と突進の威力が合わさって、跳ね飛ばされたら即死は間違いなしさ」
「ええっと・・・此処の魔物って、魔術が使えるんですか?」
「まあ、使える奴もそこそこ居るけど、多くは体躯や表皮等の強化型が主だね」
「で、その説明だと目の前の奴も、ヤバイ感じしかしないが?」
「魔術使わないだけマシだけど、特にこんな足場が悪いときは最悪だね。 奴は硬い蹄で地面をかくから、深い雪でもなければ関係ないし・・・」
な、何で、半笑いなんだ? えっ?これって、笑う状況なの?
「じゃ、じゃあなんで、『こいつはいい』って言ったんだ?」
「おや? あんた随分と、落ち着いてるね。 いやさ、こいつは良い報酬になるのさ。 特に飾り物としての毛皮がね」
「いやいや、だからって今の状況は、危険度が高いんだよな?」
「そうさねぇ~。 まあ、コイツ直進しかしてこないし、二手に分かれて左右から狩ろうじゃないかねぇっ! さあさあ、行くよイクよぉっ! あぁはははっ」
あっ、何か、人格変わったよ・・・。 アイノが飛び出したのに遅れず、俺も水晶猪に向かって走って迫る。 走る最中、身に付けた祝祭の装身具が淡く光る。
『我らが、主よ』
『うん? 憤怒か』
『否。 我は憤怒にして、勇気・剛毅』
『新たなりし力もて、抗う刃を振るい立て』
頭の中でそう声がした途端に、足元の雪は余り気にならなくなり、普通の地面を蹴って走るように、体も軽く不思議と回りがよく見えた。 今までの様に、心の奥に燻る怒りは無い。 在るのは、溢るる・・・。
視線を上げると、アイノは右から曲線を描き獲物に迫ってる。 俺は左から、相手の側面へと迫っていく。
急に此方が動いた事で虚を突かれ、獲物はどちらに向かうか迷い動けずにいる。
視線の先では先に動いたアイノが、奴に肉薄して剣を振り下ろすところだ。
ガキャッ! キンッ…
「ちぃっ! やっぱり固いね。 あぁはははっ、でもねぇ!これだけ近づいたら、ジーク!あんたは・・・」
硬い毛に邪魔され、振り下ろした剣が弾かれるが、次の動作に移行しようとしている。 奴はアイノに意識が向いていて、俺の接近にはまだ気付いていない。 アイノが何か言いかけてるが、俺は比較的毛の無い顔の部分へ、剣を突き刺すようにして突き出す。 今頃気付いたようだが、遅すぎだな・・・。
俺の剣は接近時の速度と突きの勢いが加わり、突き出した剣は奴の右目を潰し止まることなく、頭を貫通し左側へと突き抜けてしまった。
「ブヒュイィィィッ・・・・・・!」
突き抜けた瞬間に断末魔の叫びを上げ、そのまま静かにその場に崩れ落ちていく。 崩れ落ちる際に自重に引き摺られ、手から剣が離れかけたがそのまま抜けた。 って、あれ?権能の時と、感覚がまったく違う? うん?
近くで次の攻撃の態勢をとってたアイノが、一撃で沈んだ獲物と俺を見てそのままの態勢で呆然と立ってる。 ?まっ、いいや。 ブレナン達は・・・。
ありゃ?まだ、戦闘中だ。 どうするかな・・・俺は徐に腰の短剣を引き抜き、投擲の要領で甲羅の隙間(首元)目掛け全力で投げ飛ばし、狙いが逸れる事無く吸い込まれていった。 見た目には一筋の、光の線が伸びた感じだな。 まったく同じタイミングで、オーロフの戦槌が頭部へ振り下ろされた。 倒れると同時に、装身具の輝きも消えていた。 う~ん。やっぱり、感じが違う。何処がどうとは、よく分からないなぁ・・・。
◆◇
「グゥオオオォォ・・・・・・」
次の瞬間に僅かな雪煙を巻き上げ、ようやく氷雪岩亀が地に伏せ沈黙した。 時間は掛かったけど、なんとか討伐には成功っと。 終わってみれば、みんな怪我らしい怪我も無く、ただただ体力を消耗してばててしまってた。 ヴィも座り込んで、荒い息が白く吐き出されてる。
「よぉ~し、みんな疲れただろうが、周辺の警戒を行ってくれ。 今回は横槍が入らなかったが、他の魔物や獣が近くに寄ってるかも知れん」
剣を振り血を払ってからアイノと共に合流し、指示に従い氷雪岩亀を中心に周囲を警戒する。ってか、此処ってこんな魔物ばかり居るのか・・・? 周囲を警戒しながら改めて岩亀を見てみると、大柄なオーロフよりも頭一つ以上は大きい魔物だった。 ブレナンは何してるかと思ったら、何かインク(?)で甲羅に印をつけていっていた。
「・・・ジーク」
「ああ、アイノ。 なんだ?」
「いや、ええと、あんたって・・・」
「ん?」
「よし!終わった。 さあ、移動を再開するぞ」
ブレナンから声が掛かり、行ってた作業が終わったようだ。ってか、何してたんだ?
「ああ、で、何だ?」
「あっ、ああ・・・な、何でもないさ」
「そうか? まあ、また後で話すか?」
「そ、そうだね。 はっ、ははっ・・・」
戦闘後から変なの。 途中、人格変わってたし・・・まあ、これから付き合いも増えるし、少しずつ理解し合えればいいかな?
「あっ! ブレナン」
「ジーク、どうした?」
「いや、討伐部位や素材は、回収していかないのか?」
「ああ、こんだけデカイと俺達だけじゃ、街へ持って帰るだけで一苦労だし、そんなことしてたらこの後、他の魔物とかが討伐できないだろ?」
「まあ、そうだな・・・」
「だから、特殊なインクで印を付けて、横取りされないようにしておいて、後で街から専門職の者に手配して、回収してもらうようにするんだ。 まあ、多少費用が要るのと、再度現地まで同行する必要はあるがな」
「ふぅ~ん。 で、その印って」
「これは、俺達の印だ。 インクには魔物避け効果があって、結構えげつない臭いがするぞ? 暫く取れんから、付けてやろうか?」
「やっ、やめろ! まあ、分かったよ。 勉強になった」
「ふっ、まあ少しずつ学び、一人前になってくれや。 急ぐもんでもないしな」
更にその日は、狼型・兎型・鳥型など、氷雪地帯特有の小型・中型の魔物を多数討伐し、持ち帰れる獲物だけ回収して、日が暮れる前にラーセへと戻った。 氷雪岩亀等は明日回収するとして、それ以外の魔物をギルドで換金し、酒場で夕食と酒を飲み交わし、その日は初日とは別の宿で休んだ。
そんな日をそれから数日程過ごし、これと言った脅威にも出会うことが無く、俺とヴィもこの雪と氷の土地にもなれ、行動に支障をきたすことも少なくなってきた。ただ、やはり尋常ではない位に、魔物との遭遇率は日々増えていった。その大半は平野や林に生息して居らず、主に山脈側を生息域にしている魔物ばかりで、しかも何かに追われ、傷つき、餓え、荒ぶっている物ばかり。
で、思った以上の魔物の討伐で、疲労も溜まってきた事と、稼ぎもそこそこ増えたので、休息日を設けようと言うことになり、合流は明日の昼頃ギルドで落ち合う事にし、各々一日自由に街の中で過ごすことになった。
さて、一日休日と言うことで、何をするか考えてたが、まあヴィと散策となるだろう。
ただ、出かける前に腕輪を弄っていると、『カチャ』っと言う音と供に亀裂が入って、二つに別れ外れそうになっ。 やっべ!壊しちゃった?!
境目や繋目なんて見えなかったのに・・・っと思ってたら、そのまま分かれて二つの腕輪となった。
別れた装身具の真ん中には枝葉が絡まった意匠で、その葉脈と葉脈のところから二つの葉が分かれるようになっているみたいで、もう片方も試しにやってみたら同じように外れた。 他の装身具も試そうか迷ったが、今は腕輪のみの確認にする事にした。
弄っている最中、頭の中に声が響く。
To be continued...
『面白い』『続きが』『頑張れ』と思って頂けた方、最新ページから評価をいただけると・・・。
よろしくお願いします。




