北へ...1
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<毎週土曜日掲載>
ローナン達との護衛依頼後、十数日間は薬草採取の依頼を受けつつ、平穏な日々が過ぎ去っていった。
ヴィも弓の練習の成果が出始め、それなりに形になってきた。
そんな折、その日の達成報告でギルドに赴いた際、ブレナン達と久しぶりに出会った。
「おっ、ジーク。 久しぶりだな」
「ん? ああ、ブレナン。 久しぶり」
「お嬢ちゃんも、元気だったか? 身なりだけなら、一端の冒険者だな!」
「・・・あ、はい」
「そう言えば何やら、大冒険だったんだろ? んん?」
「おい、からかうなよ。 ただの、護衛依頼じゃないか」
「うんうん。 そうだよな。 そうだよな」
イラッ・・・にやにやして、何だってんだ?
「で、何か用なのか?」
「ん? あ、ああ、忘れるところだった」
「なあ、ジーク。 ちぃ~っとばかし、遠出してみる気は無いか?」
「遠出? 何だ急に」
「いやな。 北の地で魔物の数が増えていて、こっちに応援依頼が来たんだよ」
「北? 魔物? こっちに応援って、どう言う事だ?」
「んなに、基本的には拠点とする街から、移動することは殆んどないんだが、偶にそこだけで対処出来ない時に、他の街のギルドへ応援要請が来るんだよ」
「それは、強制なのか? ”Ⅴ:クィーンクェ”の俺には、此間みたいな事でもない限り、強制とかは無いと思うんだが・・・」
「ああ、違う違う。 強制とかじゃなくて、個々人やパーティー単位の任意参加だ」
「・・・そう、なのか」
「で、どうだ? 来るか?」
「ん~、そうだな。 良い機会だし、前回(ローナン達との)旅でも、そこそこ経験も積めたが・・・」
「まあ、そりゃ経験にはなるわな」
「報酬は、どうなんだ?」
「ああ、任意参加だから、それ程高くはないぞ。 旅費込みで一人頭、大銀貨1枚ってことだ」
「大銀貨1枚か・・・」
「まあ、討伐報酬やら素材買取やらで、うまくすればそこそこ稼げるが、やっぱ止めとくか? どうする?」
ヴィも居るし、余り危ないのはな~。
でも、他の街に行ったりとか遠出する機会自体が、今後そうそうあるとも思えないし・・・。
「なあ、ブレナン」
「何だ? 気になる事でもあるか?」
「いや、北と言ったけど、具体的に何処なんだ? 行った事がないから、聞いたところでなんだが・・・」
「おっ、言い抜かってたな。 今回の依頼を出したのは、城塞都市ラーセってところだ」
「城塞都市? それって、どう言う所なんだ?」
「俺は何度か行った事があるが、あそこは東と北を分断する山脈が連なる地域だ」
「ん? 山脈が近くにあるのに城塞都市って事は、何か強力な魔物か獣でも出るのか?」
「う~ん。 魔物って言えば魔物だが、あそこは・・・巨人の襲来がちょくちょくあるんだよ」
へ~、巨人が居るんだ。 ふぅ~ん・・・・・・って、巨人!?
いや、以前仕入れた知識で、居るのは分かってたけど、えっ?巨人!?
○撃とか、○-グとか、あっ、アレは○神か、えっと目が燃えて、養成ギブスするとか、ってそれも違うっ!!
「・・い、・・ク」
「・・・」
「・ぉ~い、・-ク」
「・・・」
「おぉ~い、ジーク~! 生きてるか~? 息してるか? 返事ぐらいしろ~!」
「・・・っああ、すまない。 で、何だったか」
「おいおい、急に黙って、ぼーっとするなよ」
「すまない。 で・・・ああ、巨人って、本当に居たのか!?」
「居るぜ。 大きさはまちまちだが、奴らは横暴で神々と他の種族を、目の敵にして挑んでくるからな」
「そうなのか・・・」
「まあ、頻繁に遭遇する事も無いし、基本単体で来る奴ばかりだから、集団で当たればそれ程脅威でもないぞ?」
「・・・やっぱり、止めとくか?」
「ん~。 ちょっと、待ってくれ」
ヴィを連れて、少し離れて話す。
「ヴィ、どうしたい? 話を聞く限り、危険度は高いと思う」
「ジークは、どうしたいの?」
「行ってはみたいが・・・」
「わたしの事なら、気にしなくていいよ」
「いや、だが・・・」
「まだまだ頼りないけど、少しは戦えると思うし、やっぱ経験しないと、いつまでも、ね」
「そう、か・・・本当に、いいのか?」
「いいよ。 危なくなったら、ジークが守ってくれるんでしょ? あの時みたいに」
「ん、ああ、まあ、な。 ブレナン達も居るし、無理に危険な事にはならないだろう」
「よし、行くか!」
「うん!」
二人でブレナンの所に戻り。
「待たせた。 行くよ。 一緒に、行かせてくれ!」
「! おほっ、よしっ! そうこなくちゃ、それでこそ”新しい絆”の一員だ。 ほんじゃ、出発は明後日の昼に乗り合い馬車で行くから、それまでに必要な物を揃えといてくれ」
「ああ、分かった。 旅程はどの位だ? 何か、必要な物はあるか?」
「そうだな。 旅程は10日ってところだ。 それと、必要な物は塩だな」
「塩? 調理に使うあれか?」
「ああ、そうだ。 水が凍るから、水筒の水に少し入れると良いんだよ」
「そう言うことか、分かった。 他にはあるか?」
「後は、防寒着や防水した物だな。 雪や氷で覆われてる地域だから、厚手の衣服は必須だし、衣服が濡れると体温が奪われて、最悪死んでしまうからな」
「分かった。 揃えておく」
「じゃあ明後日の昼に、ギルドで落ち合うってことで」
「ああ、明後日の昼だな」
話を終えブレナンとはその場で別れ、俺達は買出しの為に商業区へと向かった。
今回も、俺やヴィの装備を買った”森の木漏れ日”へ。
店主のコルムさんと話をし、北に向かうのに必要な物を揃える。
今回は新たに・・・
・背負い鞄(以前買った肩掛けは、容量が少ないからね)
・厚手の毛布
・岩塩(砕いたもの)
・厚手の上下着(防具の上から羽織れる物)
・長靴(防水加工済み)
・携帯食料(カーセウス、ユーグラーンス・ファーグス等の木の実)
って、ところを提示してもらった。 直ぐに口に入れられる木の実は、若干多めに購入しておくことにした。 それでも、銀貨4枚と大銅貨8枚が飛んでった。 今もってる荷物等は、費用を払って宿屋預かりに・・・。 残金『金貨0枚、大銀貨7枚、銀貨33枚、大銅貨61枚、銅貨2枚』
薬草採取で、日に大銅貨10枚。 コツコツ稼いでて、良かったなぁ~。 でも、金貨は、無くなっちゃったよ。 はぁ~、頑張ろうっと・・・。
翌日は休息日にして一日過ごし、翌日は遅く起きて朝食を食べ、約束の昼頃にギルドへと向かった。
着いてみると、ブレナン達は着ていたが・・・? 誰だ?
ブレナン達の輪に、女性が一人居る? 随分と親しそうだけど、付き合いのある冒険者かな?
そう思いながら、近づいて声を掛けた。
「話中すまない。 遅かったか?」
「ん? おお、ジーク。 いんや、丁度ぐらいだな。 嬢ちゃんも、準備万端かぁ?」
「ん、大丈夫」
「そうかそうか。 よし!ほんじゃ、そろそろ行きますか」
そう言って連れ立って、馬車乗り場へ向かおうとすると、先程の女性も一緒に、同じ方向へ向かいだした。
あれ?と思ったが、話を終えて外に出るなら、別におかしいことは無い。 ギルドを出て皆と歩いてると、まだ同じように歩いて付いてくる。 ん?依頼で、外へ行くのかな? まあ気にせず歩くと、馬車乗り場に着いた。 けど、まだ一緒にいる。 う~ん?同じように、何処かへ行くのかな? 一応、ブレナンに聞いてみる。
「なあ、ブレナン」
「どうした?」
「えっと、ギルドで一緒にいた女性だが・・・」
「ん、なんだ。 気になるのか? ジークも、隅に置けないな」
「なに言ってる。 んなわけあるか!」
「じゃあ、何なんだ?」
「いや、その、付いて来てるが・・・」
「それがどうした?」
「? 何か別の依頼で、途中まで一緒なのかと・・・」
「んん? 何言ってんだ? こいつは”新しい絆”、俺達の仲間だぞ? あれ、言ってなかったか?」
「はぁ?! 聞いてないぞ!」
「あっ!そうだった。 こいつ、怪我してたから、まだ紹介してなかったな」
「おい、アイノ。 ちょっと、来てくれ」
「なんだい?」
「あ~、アイノ。 こいつはジーク。 あ~、ジーク。 こいつはアイノ」
「よ、よろしく」
「ああ、あんたがジークかい。 こっちこそ、こんな馬鹿ばっかだけど、よろしく頼むよ!」
「おい、馬鹿とは何だ!ったく・・・まあなんだ、仲良くやってくれ」
アイノと名乗った女性は、短く切った赤い髪と、切れ長の目が印象的な女性冒険者だ。
武装はブレナンに近い感じだけど、全体的に軽装な感じを受ける。 反り返った刃の剣を、両腰に吊るしていたので、両手使いの軽戦士ってとこかな?
そうこうしていると、馬車への乗車が始まり、俺達も乗り込んでいった。
ローナン達との旅よりも、長距離で長旅だから楽しみだな。 道中何も、起こりませんように・・・いや、ほんとに、ね!
◆◇
サロを出発して、早十日が過ぎようとしていた。
回りの景色も一変し、疎らな灌木と雪から除く草木、特に目立つものも無く、所々岩岩が転がり、天気も灰色の雲に覆われ、寒々しい景色が眼前に広がっている。 雪なんて前世でも数える程しか見たことなかったけど、こうして馬車に揺られながら見ていると厚着してても、吹き抜ける風の寒さで凍えてしまいそうだ。
って、ヴィがガタガタ震えてるよ。 鼻水氷柱だし、厚手の毛布を頭から被って、膝を抱えて丸まってる姿は・・・。
っと、そんな事はどうでも良いや。 願いが通じたのか野営や途中の村々でも、特に問題が起こる事もなく、道中アイノと話す機会も多く、ブレナンやオーロフに稽古を、スヴェンにも魔術を少し(当然、薪に火を点けるとか、ね)と、色々退屈せずに過ごし今、まだ遠い視線の先に巨大な街が薄っすら見えてきていた。
あれが、城塞都市 ラーセ・・・この距離であの大きさ、サロの何倍の大きさなんだろ。
近づくにつれその、大きさと偉容が伝わってくる。 城壁の高さはサロの、三倍近くあるんじゃないか? 街の大きさも、二倍以上かな? 城壁には等間隔に尖塔が並び、都市の中央にはそれらよりも遥かに高い城が聳えてる。
昼過ぎ頃に馬車は門を潜り、都市の内部へ入っていく。 門を潜ると大きめの広場があり、更に門を潜ると街中となっていた。 二重構造って・・・。
結局その日は夕暮れが近いため、食事を取り宿でそのまま一泊する事に、翌日ギルドへ赴き依頼内容の確認と、その後の活動計画を練る事になった。 いよいよ、北の大地か。 どんな事が、待ってるのかな? 神々の意図もよく分からないし、ほどほどの成果と良い出会いがあるといいなぁ~。
To be continued...
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