旅立ち...6
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<毎週土曜日掲載>
領主様が近寄ってき、馬から下り声を掛けてくれる。
「よくぞ、よくぞ、倒してくださった」
「この村を代表する者として、是非ともお礼をしたいのだが・・・もう1日出発を延ばし、滞在してくれんだろうか?」
ん? お礼? もう1日滞在するの?
次に行きたいのに・・・これ断ったら、駄目なヤツだよね?
「無理には引き止められんが、見聞を広められるという事でしたら、是非我が家にて一献傾けながら、話のひとつでもいかがであろうか?」
領主館(?)への、ご招待ですか!?
あっ、やっぱりこれ、断ったら駄目なヤツだ・・・
「はぁ、急ぎの旅でもございませんので・・・お申し出ありがたく、頂戴いたしたく思います」
「おお、おおっ! そうか、それは嬉しい限りだ。 それでは参ろうか、ささっ・・・」
意気揚々と領主様は、馬を引くポンジョさんを伴って館に向かって行く。
回りの村人からは好意的な声を掛けられつつ、自分もその後を余り離れないように付いて行く。
どうしよう。 無碍に断る事も出来なかったから、付いてきちゃったけど・・・
今居るところは、領主様の館の中だ。
先ほどまでの喧騒は無くなり、質素だけど整った色調の応接室に通されている。
暫らく此処で待っていてくれとの事で、領主様は鎧を脱いで服装を整えるため、ポンジョさんを伴って行ってしまった。 で、通されたこの場所で、所在無く待たされている。
まあ、別に待つことは問題ないんだけど、どうにも落ち着かないんだよな~。
大き目のソファーに座りつつも、辺りをキョロキョロと見回してしまう・・・
少しすると使用人だろうか、お茶を出してくれたので、それを飲みつつ気持ちを落ち着かせよう。
紅茶かな? 種類は詳しくないけど、仄かな香気が心地よく感じる。
にしてもこんな場所、転生前で取引先に赴いた時でも、お目にかかる事も無かったからなぁ・・・
お茶を飲みつつ気楽に待っていると、応接室の扉が開いて着替えを済ませた領主様が、ポンジョさんと使用人を伴って室内に入ってきた。
鎧姿だったんで容姿もちゃんと見てなかったけど、白のワイシャツにグレーのスリーピーススーツ(?)と、シックな感じの装いで、改めて見てみると齢は40台後半ぐらいで、白みがかった金髪に青い瞳の、壮年の渋い紳士然とした男性だった。
貴族の服装って”びらびら”や”ひらひら”が、びっしり付いたの着てると思ってたけど、偏見や思い込みって、駄目だよね・・・・・・
と、そんな事を考えていると・・・
「お待たせしてしまいましたな」
座ったままだった事を思い出し、慌てて立ち上がり返答をする。
「い、いえ、そんな事はございません。 お招きいただき、ありがとうございます」
「まあ、そう畏まらんでくれ。 楽にしてくれて構わない」
領主様が目の前の椅子に腰掛けながら、苦笑で返されてしまった・・・
「は、はぁ・・・」
領主様が腰を下ろした段階で、手で促されたのでソファーに座り直した。
「では、改めて自己紹介といこう。 わしは、アレクセイ・ピューター男爵と申す」
「まあ、男爵と言っても、小さな開拓村を二つ持つだけの、しがない貴族位であるのだがな」
小さいと言っても、この前の村と此処とで、400人前後の人口を抱えてるんだよな。
仮に子どもと老人が全体の3分の1として除いても、働き手は250人前後がいると考えていいよな。
それだけの人数が居れば、それなりに税収も安定してそうだけど、パッと見の印象だと貧乏(?)とまではいかないけど、そんなに裕福には見えないんだよな・・・って、いかんいかん。
思考が全然関係ないことに逸れて、意識を戻したら話が進んでいたようだ。
「・・・改めて、礼を言わせて貰いたい」
「位の高い貴族であれば騎士等を派遣して対処するのだが、わしの様な小さい位ではそう言った組織を維持できん。 つまり、自ら事に当たらねばならんのだよ」
「領民の手前赴かん訳にもいかんのだが、わしもそう若くは無いのでな・・・そう言った意味でも、この度は本当に助かった。 ありがとう」
真っ直ぐに見据えられ、紳士に述べられる言に、その人柄に好感を抱いた。
今は人族の姿をとっているので、この対応なのだろうけど・・・
「さあさあ、話も雰囲気も堅くなってしまう。 庭に移動して、もう一杯お茶はいかがかな?」
「え、ええっ。 是非、いただきます」
荷物はそのまま此処に置かせてもらい、案内されたのは館の裏手側の庭園だった。
小さいながらも手入れの行き届いたその場所で、運び込まれたテーブルを囲みお茶をいただく事になった。
「して、ジークフリート殿は・・・」
「あっ、私の事は呼び捨てていただいて」
「う~む、そうもいかんだろうて・・・では、ジーク殿ではいかがかな?」
「はぁ、まあ、そう仰られるのでしたら」
「うむうむ。 で、ジーク殿は何故旅を?」
『あの人族を見つけ出し”復讐をっ!”』
『ましてや”ナニカ”って知ってます?』
なんて言う訳に、いかないでしょうに・・・どうしようかな?
「ええ、しがない商家の三男に産まれまして、家を継ぐ事も無ければ商才も乏しいため、自身の研鑽の為にも見聞を広め、何かに生かそうかと・・・」
「そうか、そうか。 北の方の商家となると、わしも詳しくは無いでの・・・」
「小さい商いですので、貴族様とは繋がりも無く。その、ですね」
「すまんの、詮索するつもりは無いのだ。 そう取られたなら、許して欲しい」
「とんでもない。 此方こそ、申し訳ございません」
気まずいなぁ・・・
「では、ゴブリン共を討伐した時の、様子を話してはくれまいか?」
「ああっ、はい。 私が昨日、この村を目指して歩いてた際に・・・・・・」
うん。 当然、権能について言える訳ないんだから、オブラートに包んで話しましたよ!
苦しい展開でしたけど、偶然に偶然が重なったって、ゴリ押ししましたとも、ええ!
「・・・と言うわけで、偶々ゴブリンを発見しまして、自分はまだ見付かっていなかったので、見付からないように離れて観察をしまして、そのまま立ち去るようでしたら、何もせずにやり過ごそうと思っていました」
「ですが、此方に近づいて来ていましたので、奴らがバラバラに離れた瞬間を狙って、狩猟用に携帯してた吹き矢に、薬を塗布して一匹ずつ麻痺させていき、暫らくして薬が効いた頃に、手持ちのナイフで一匹ずつ止めを刺しました」
「その後は、お渡しした物を回収しまして、死体は穴を掘って街道の脇に埋めました。 吹き矢も使い捨てなので、同じ穴に捨てまし・・・・・・あの、どうかされましたか?」
聞き入ってくれてたみたいだけど、あんまりにも静かなんで・・・何か不味いこと言ったかな?
「あっ、ご検分が必要でしたら、今からでもご案内しますが・・・」
って、検分しようにも、暴食が喰っちゃったから、死体も無いんだけどね!
行くって言われたら、どうしよう・・・・・・
「いや、問題は無い。 ポンジョどう思う?」
あっ、同席してたの忘れてた・・・
「お話の際のご様子や内容に、特におかしな点はございませんが・・・ジーク様? 商家のお生れ、と言う事でしたが・・・」
「そうですが、何か?」
「いえ、何と、いいますか、度胸がおありと言いますか・・・怖くは、ございませんでしたか?」
しまった------------っ!?
全然、気にしてませんでした!
そうですよね~。 普通、そうですようね~。
商家の設定だったら・・・いや、そもそも普通の人だったら、怖いし立ち向かわずに逃げますよね~。
自分、魔物ですけど・・・
「それは・・・」
「まあ、ポンジョよ。 森を抜けて来るぐらいだ。 多少の獣や魔物とコトを構えるのは、それなりに場数を踏んでおるのだろう。 でなければ、態々挑んだりはすまいて」
「・・・左様で、ございますな。 ジーク様、失礼の段ご容赦ください」
「いえ、いえいえ。 私の方こそ、蛮勇が過ぎました。 ははっ、はははっ・・・」
セーフ! セーフだよね? これ?
内心冷や汗流しまくりだったけど、誤魔化せたみたいだしスルーしておこう。
「では、無粋な話も此処までにして、我が家で昼食でもいかがかな? さあ、参ろう」
領主様が先に席を立ったので、それに付いて室内に入っていく。
連れられた先は庭が見える一室で、それ程大きくない机と椅子が数脚の、ここも至ってシンプルな作りだった。
領主様が上座(?)に座られたので、離れた対面に座るよう促された。
なんと言うか・・・映画とかでしか、こんな座り知らないよ。
給仕の方が入ってきて、食事が提供されるんだけど、宿屋で提供されるものと大差なかった。
貴族ってもっとこう贅沢って感じで沢山の中から、ほんのちょっと食して終わりで後は要らないって、これも偏見や思い込みって、駄目だよね(2回目)・・・・・・
「豪勢な食事とはいかないが、領民が作ってくれた自慢の作物だ。 さあ、遠慮せずに食べてくれ」
昼食の献立はこんな感じで・・・
セカレのパニスに、ファバやラープム、パスティナーカの入ったイュース、それとケルシウィアとカーセウスの簡単な食事。
領民と変わらない食事を取るその姿勢に、領民に慕われるのも分るような気がしてきた。
昼食後は領主の書斎に移動し、そこでも談笑を挟みつつ話して過ごした。
そして日も暮れ始めた頃に、そろそろお暇をと思っていたのだが、夕食も是非にと進められ更に、館に泊まっていくように勧められた。
で、夕食の献立はこんな感じで・・・
セカレのパニスに、昼とは違う野菜のイュース、香草で香りつけされた塩漬豚肉、ケルシウィアと以外に小食。
「いやいや、客人を持て成すのも、久々のことゆえ楽しかった。 つきあわせてしまって、すまんな」
「いえ、楽しい時間を過ごさせていただき、此方こそありがとうございます」
「そうか・・・では、今回の褒美に、何か欲しいものはあるかの?」
「褒美・・・ですか。 本日は過分にもお持て成しいただき、私はこれで十分と思っておりますが・・・」
「まあ、外聞と言うものもあるでな。 高価な物はやれんが、何か欲するものはないか?」
・・・欲しいものか。
ん~、そう言われてもな・・・・・・・・・あっ!
「ん? 何か思いついたか?」
「あのぉ、もしお願い出来るのでしたら、身分証の発行と書斎の蔵書の閲覧を、お願いする事はできませんでしょうか?」
「身分証と、蔵書の閲覧とな? 蔵書の閲覧は分るが、身分証の発行とはどういう事だ?」
「実は紛失してしまいまして、此処も先の村も事情を説明して、入村を許可していただた次第でして、その・・・」
「ぶぅっ、ぶはははははっ! くくくっ」
あれ? なんか、爆笑されちゃってる? 面白いこと、言ってないよね?
「肝が据わってるかと思えば、その様なところで抜けておるとは・・・くくっ」
「あの、難しいでしょうか?」
「はははっ、その程度は造作も無いことよ」
「身分証明は簡易な物しか発行出来んが、大きな町での再発行までなら問題なかろうて、書面に起こして明日にでも渡そう。 蔵書の閲覧も、なんら問題は無い。 好きなだけと言っても、就寝までの数時間なら良いだろう」
「あっ、ありがとうございます!」
よっし! 本来の身分証明の発行は、どんなものか分らないけど、簡易でも旅がスムーズになるなら、今はそれが手に入るだけで大きい。
蔵書は不足している情報の補填に、少しでも役立ってくれれば、それで良いぐらいで・・・
一時はどうなる事かと思ったけど、結果的に良い方向にいったから、さっそく褒美の読書に洒落込みますか。
To be continued...




