旅立ち...5
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<毎週土曜日掲載>
何とか日暮れ前に、次の村にたどり着くことが出来た。
前の村同様に、入り口には守衛がいた。
身分証明に関しては此処に立ち寄る前の村で、説明した事情(汗?)で納得はしてくれたようで、特に拘留されたりする事も無く入ることが出来た。
前の村とそれ程規模は変わらないようで、入り口近くの宿に向かい1泊することにした。
此処も入り口には物見櫓が立っていて、回りを簡素な堀と塀で囲んで盛土した小高い平地に、家屋が立ち並んでいる感じは、前の村と同じ様相を呈していたが、領主館(?)は高台ではなく奥まった所にあった。
魔物がいる世界なので、こういった村落は標準仕様なのかもしれない。
この村落にも雑貨店はあったが、ここもメルクスさんが営んでいるのか、店は閉じていて何も販売は行っていなかった。 まあ、別に買うものは無いんだけど・・・
その日は夕食を口にしたら、明日は朝日が出ると共に発とうと、そのまま眠りにつき翌朝を迎えた。
◆◇
「・・・わぁ・・・領主様。 よろしく・・・ます」
「わぁ・・・いって・・・ませ。 領主様・・・」
「領主様・・・んざい・・・」
翌朝、宿の前が騒がしい・・・窓に視線を向けると日は既に顔をだしていて、また寝過ごしてしまったようだ。
「うぅ~ん。 疲れてるのかな・・・ふぅ~、さあ準備しないとな」
「てか、何かあったのかな?」
外の騒がしさに疑問を持ちつつ、準備するものも無いのでさっと整え、宿の1階に下りて外に出てみる。
そこには村民が集まっており、その先には従者を従えた鎧姿の人物が、馬に跨って回りに手を振っていたのだった。
ん? 何かの催しものかな?
などと思いつつ、近くいた人に聞いてみた。
「あの、すみません」
「あん? なんだい?」
「いえ、旅のもので昨晩、此方で泊めていただいたんですが・・・」
「ああ、旅の人かね。 で、如何かしたんかい?」
「ええ、朝から沢山の人が集まられて、何かあったんでしょうかと思いまして・・・」
「ああ、領主様が今から、魔物退治に向かってくださるんだよ」
「・・・魔物退治、ですか?」
「そうさ、昨日この先の村に向かう街道沿いで、村はずれの畑で作業してた者が”ゴブリン数匹を見た”って事で、放置しとくと村人にも被害が出るもんだから、領主様にお願いして退治していただくのさ」
「はあ、ゴブリン、ですか・・・」
村はずれってまさか、昨日のアレじゃないよな・・・
内心気にしつつも問われる事がなければどうも無いので、周りの群集と同じようにその光景を見送っていた。
領主が宿の前を、通り過ぎようとしていた。
その時、集まる村人の中で旅装の自分が目に留まったのか、歩みを止め従者に声を掛ける様が見えた・・・と思ったら、今度はその従者が、此方に向かって徐に歩いてきたよ。
えっ? 何でこっちに、真っ直ぐ向かってきてるの?
えっ? えっ! え----------っ! 来ちゃったよ・・・
「其方のお方・・・」
「・・・えぇっと、わたしの事、でしょうかぁ?」
一応、聞き返してみた。
「はい。 この地では見掛けませんが、旅のお方でよろしいでしょうか?」
「まあ、はい。それが何か?」
「いえ、この近隣で魔物が出たため、どちらから来られたか、確認したくお声掛けした次第」
「それは、この先の村からで、昨晩此方に着きまして・・・」
「この先の村から昨晩、そうですか・・・」
何やら思案顔なんですけど・・・ってか、旅装の自分に”来た方向を聞きに来ただけ”って感じだし、気にしなくていいと思いたいけど、態々見つけた相手に話を聞きにくるものなの?
「はぁ、何か問題でも・・・」
「いえ、その方向で魔物が出没しているとの事で、我が主が今から討伐に向かう為、何か異変でも無かったかと思い・・・」
う~ん。 昨日のアレだったら、行っても無駄になるし・・・一応正直に答えてみる?しない?
「異変ですか・・・あの、私も旅を急ぎますので、失礼でなければ入り口まで、歩きながらでも宜しいでしょうか?」
「ええ、それは構いません。 では、我が主のもとに」
「はいぃ、ではぁ・・・」
面倒くさい予感しかしないんですけど・・・
「ああ、申し遅れました。 私は主の従者をしております。 ポンジョと申します」
「あっ、はぁ。 ご丁寧にどうも・・・私は、ジークフリートと申します」
「ジークフリート殿、良いお名前ですな」
「はぁ、ありがとうございます」
そんなやり取りをしていると、領主様のもとに近づいていて、ポンジョさんが駆け寄り報告をしていた。
簡単なやり取りの後、此方に視線を向けて語り掛けてくれた。
「旅のお方、お呼び立てして申し訳ない」
あれ? 貴族ってもっと庶民を、見下してるって言うか、ぞんざいな態度って言うか、本の知識ではそうだって思ってたけど、実際は大分違うものなのかな?
なんて考えてると・・・
「いかがされたか、旅のお方よ?」
「ああっ、大変失礼いたしました。 領主様とお話出来る事に、緊張も相まって呆けておりました。 ご無礼の程、如何かご容赦ください」
「何の何の、気にされるな。 おおっ、名乗っておらなんだな。 わしは領主の、ピューター男爵と申す。貴族と言っても此処と、先の村を治めるのみのでな。 村々の皆とも上に下に無く付き合っておるので、余り畏まる事無く話をしてくれればそれでよい」
「左様でございますか・・・」
「ふむ、旅も急がれてると思うので、馬上からではあるが暫し歩きながら、話を聞かせてもらえんだろうか?」
「はい。 で、何をお話すれば・・・」
「ふむ、この先の村から来たとの事だが、その先は森しかないのだが、森の中を越えて来られたのかな?」
正直に答える必要も無いけど、ある程度は正しく答えておかないと、痛くも無い腹を探られたくないし、何処でボロが出るか分らないし・・・
「ええっ、見聞を広めるために旅をしておりますが、北から南に向けて街道を通りますと、かなり迂回しなければなりませんので、真っ直ぐ南へ抜けるために通りました」
「左様か左様か、険しい道のりであったろうにな、腕に覚えのある御仁かな・・・で、先の村からこの村までに、魔物に遭遇したり痕跡等は見なかったかな?」
「魔物ですか・・・」
「ゴブリンと言う醜悪な魔物での、放っておけば人を襲い・女は攫い、数を増やす厄介な相手なのだ」
ああ、やっぱりアレですね・・・既に害は取り除かれてるんですけどぉ・・・
無駄手間になるし、言ってあげた方が良いんだよなぁ・・・でも、と迷いながらも伝えることにする。
「あのぉ・・・領主様」
「うん? どうかされたかな?」
「こちらをご覧いただいても・・・」
こちらが歩みを止めると、領主様もポンジョさんも歩みを止め、此方に注目してくれているので、あの時回収して包んでいた物を、ポケットの中から出してポンジョさんに手渡す。
「なっ!? これは・・・」
「ポンジョよ、どうした? 何が入っていたのだ?」
「ご無礼を、此方をご覧ください」
ポンジョさんが若干の驚きから立ち直り、領主様に近寄って包みの中身を手渡している。
領主様は包みを受け取り、中身を見た瞬間に・・・
「こっ、これは、どうしたのだ!?」
「え~、あの~、そのですね・・・討伐しましたと言うか、なんと言いますか」
「其の方が、討伐したと申すか!?」
「はぁ~、偶然と言いますか・・・たまたまですね」
まあ、片方の耳と緑色の宝石(?)があるので、疑ってると言うよりかは驚いてるんだよね?ね?
普通は騎士や冒険者なんかの職業戦士が、苦労して戦ってどうこうなんだろうなあ・・・多分。恐らく。
どうしよう・・・やっぱ、伝えない方が良かった、かな?
あちゃっ、俯いて領主様震えちゃってるよ・・・怒って、るの? 怒る要素あった??
領主様が顔を上げ、馬首を村人達に向けると・・・
「・・・ぉぉおおおっ! みなの者ぉ-!!」
「魔物の脅威は、取り除かれたぞぉ-っ!」
「既に、脅威は無い! この者が悪しき魔物を、討伐してくれたぞぉ-っ!!」
ええぇっ!! 何で叫んでるの!?
えっ? 何? 何なの? ど言う事これ? 誰か説明して!?
叫んでる先へ振り向くと、見送りに繰出していた村人達が、大声を上げてる領主の姿に呆然としているけど・・・
「ん? 領主様が叫んでいるぞ」
「魔物がって言ってるぞ・・・まさか近くに来てるのか!?」
「そりゃ、まずいぞ・・・」
「いやっ! 違うみたいぞ、慌ててらっしゃらないし・・・」
「あそこの旅の人が、どうとか言ってらっしゃらないか?」
「えっ? 旅人がどうかしたのかい?」
「あそこの旅人が討伐したから、もう魔物はいないって、そう叫んでらっしゃるぞ」
「・・・本当なのか?」
「でも領主様が、そう言ってらっしゃるぞ」
「じゃあ・・・本当なのか?」
「えっ! もう大丈夫なのかい? 昨日の今日で? 本当に?」
「なんだ、領主様を疑うのか?」
「いや、そんなつもりは・・・」
「やった・・・やったぞ! これで安心して、今日も畑に向かえるぞぉーっ!」
「わぁ----っ! 本当なのかい? まだ出発してないのに、もう討伐されてたのかい?」
「旅人なんだろ? あんた、凄いなっ!」
ってか、領主様の叫びに半信半疑だった村人達も、徐々に近寄ってきて一部は歓呼の声上げちゃってるよ? え?
疑問の声もありながらも、大半は領主様の発言を受け入れて、好意的に此方に近づいて来てくれる。
男性陣に囲まれるし、バシバシ叩かれるし、余程うれしいみたいだけど、いっ、痛い痛いって・・・
そんな中オタオタしていると、ポンジョさんが近づいてきたので、一部の人が離れて対すると一言。
「ありがとうございます。 本当に、ありがとうございます」
えっ? お礼言われちゃったよ? 何で? why?
「領主様といえども、魔物との戦いは無傷とは行きません。 それは、従者の私が加わっても変わりません。 ましてやそれが多数となると、最弱といえども油断はできません」
「領民に好かれる領主様が、危地に赴かれるのは、家臣としても心穏やかではありません。 その意味でも、あなた様には感謝しております」
ありゃ? やっちゃって・・・良かったみたい、だね?
てっきり、怪しまれるもんだと思ってたよ。
さあ、じゃあこれで、旅立ってもいいよね?ね?・・・そうこうしてると、領主様が近寄ってきていた。
え? 何で??
To be continued...




