22
眩い光に包まれ、視界が白く染まる。
強烈な輝きの中で、私は思わず目を閉じた。
——でも、怖くはなかった。
「……目を開けて。」
先ほどの女性の声が、穏やかに響く。
促されるままに、私はそっとまぶたを上げた。
すると、目の前には——
白い世界 が広がっていた。
どこまでも続く光の平原。
空も地面も、すべてが淡い光に包まれている。
そして、その中心に——
私とそっくりな少女が立っていた。
黒いコートをまとい、まっすぐにこちらを見つめている。
「……やっと、ちゃんと会えたね。」
彼女は、微笑んでいた。
——まるで、私を待ち続けていたかのように。
「あなたは……私?」
「そう。でも、“全部”じゃない。」
彼女は、そっと手を差し出す。
「知りたいんでしょう? 私たちが何者なのか。」
私の心臓が、大きく跳ねた。
知りたい。怖いけれど、逃げたくない。
私は意を決して、その手を取る。
すると——
頭の奥に、無数の記憶が流れ込んできた。
断片的な映像。誰かの声。
血の匂い。雨の音。
そして、誰かが私の名前を呼ぶ声——
「っ……!」
耐えきれずに手を離すと、視界が一瞬で元に戻った。
私は息を荒げながら、彼女を見つめる。
「今のは……」
「ほんの一部。でも、これで分かったでしょう?」
彼女は静かに言った。
「あなたは、“ただの人間”じゃない。」
私の心臓が、強く打った。
「……じゃあ、私は……」
問いかけようとした、その時——
突然、世界が崩れ始めた。
白い光がひび割れ、黒い闇が押し寄せる。
「時間がない!」
彼女は私の手を強く握り、叫んだ。
「このままじゃ、あなたは消える! 早く——!」
「……っ!」
私は迷わず、彼女の手を握り返した。
その瞬間、世界が弾け飛ぶ。
——次に目を開けた時、私はまたあの暗い城の前 に立っていた。
しかし、今までとは違う。
私はもう、“何も知らない”自分ではなかった。