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扉の表面は、氷のように冷たかった。
それでも私は、ためらわずに指先を滑らせ、ゆっくりと押し開ける。
ギィィ……
軋む音とともに、闇が広がった。
漆黒の空間。
それはまるで、底のない深淵だった。
吸い込まれそうな感覚に、一瞬足がすくむ。
けれど、その時——
「——ようやく来たのね。」
女の声がした。
低く、しかしどこか懐かしい響き。
私は、息をのむ。
目を凝らすと、闇の中に一人の人物が立っていた。
長い黒髪が揺れ、金の瞳がこちらを見つめている。
「……あなたは?」
「あなたが知るべき“答え”の一部よ。」
「答え……?」
「ええ。」
彼女はゆっくりと近づいてくる。
その歩みは静かで、しかし確かな威圧感を伴っていた。
「あなたはまだ、自分が“何者”かを知らない。」
「私は……私だよ。」
「本当に?」
彼女の瞳が、私を試すように細められる。
「……それは、ただそう“思っている”だけじゃない?」
「……」
言葉が詰まる。
何を言えばいいのか分からない。
「あなたは、何を信じてここに来たの?」
彼女の問いに、私は思わず拳を握る。
「私は……」
自分の中に渦巻く疑問、不安、そして恐怖。
でも、それ以上に——
「私は、自分の正体を知りたい。」
その言葉を口にした瞬間——
——視界が、一瞬で光に包まれた。




