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扉の向こうから、冷たい風が吹き込んできた。


まるで私を招き入れるかのように。


けれど、足が動かない。


目の前に立つ「私」が、じっとこちらを見つめていた。


「怖い?」


その問いに、私はゆっくり首を振った。


「……違う。」


「じゃあ、何に迷っているの?」


何に——?


分からない。


でも、確かに胸の奥に引っかかる何かがある。


「“選択”って、どういう意味?」


私の問いに、彼は微笑む。


「君がここまで来た理由は、分かっているはずだよ。」


「私は……」


言葉が詰まる。


脳裏に、これまでの出来事がよぎる。


気がつけば見知らぬ世界にいて、“もう一人の自分”と向き合い——


そして今、この扉の前に立っている。


「君が、“本当の自分”になれるかどうか。」


「本当の……?」


「そう。」


彼は静かに手を伸ばした。


「この扉を開けば、君は”真実”を知ることができる。」


「でも、その代わり——」


「君は”今の自分”ではいられなくなるかもしれない。」


「……どういうこと?」


「君が”何者”なのか、本当に知りたい?」


私は息をのんだ。


知りたい。


けれど——


「選ぶのは君だよ。」


彼の瞳が、まっすぐこちらを見据えている。


まるで私自身が、私に問いかけているように。


私は、唇をかすかに噛んだ。


この扉の向こうに、“私”の答えがあるのなら——


私は——


——扉に、手をかけた。

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