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目の前の景色がぐにゃりと歪む。


次の瞬間、私は強い風に包まれていた。足元の感覚が消え、まるで空中に投げ出されたような感覚が襲う。


「——っ!」


思わず叫びそうになったが、すぐに腕を引かれた。


「大丈夫、落ちたりしないよ。」


“私”が手を握ったまま、冷静にそう告げる。


気がつくと、私たちは黒い霧の中を進んでいた。足元に地面の感覚はない。それなのに、落ちることもなく、ただ前へと進んでいく。不思議と恐怖はなかった。ただ、身体が宙に浮いている違和感だけが、現実感を薄れさせていく。


「もうすぐ着くよ。」


“私”が前方を指さした。


霧の向こうに、巨大な城の輪郭が浮かび上がる。


まるで古の神殿のように荘厳な姿をしたその建物は、黒い石で作られていた。塔がいくつもそびえ立ち、窓はどれも暗闇に包まれている。


しかし、城の中央——巨大な扉の部分だけが、不気味な赤い光を放っていた。


「……何なの、ここ?」


「“境界の城”だよ。」


“私”は静かに答えた。


「ここは、世界の狭間。君がいるべき場所じゃない。でも、君が知るべきことがある。」


「知るべきこと……?」


「そう。」


“私”は足を止め、私の手をゆっくりと離した。そして、扉の方へと向かっていく。


私は、その背中を見つめながら、不安を拭いきれずにいた。


——この城の中に、何があるんだろう?


そこに待っている気がしてならなかった。私の運命を決めるような何かが。

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