お惚気ヒロインとにんに君
お久しぶりです。
更新が遅れました、すみません。
最近姫奈ちゃんに元気が無い。
今日も、窓の外を眺めながら一人ため息をついている。
でも、そんな姿も絵になるなんてさすがヒロインだ。
それにしても、元気な姫奈ちゃんがこんなにしおらしくなるなんて…礼子様と喧嘩でもしたのだろうか?
気になった私は、姫奈ちゃんの席へ行ってみた。
「あの、姫奈ちゃ…」
「うわああああん!唯香ちゃああんっ!」
そう叫ぶや否や、姫奈ちゃんは私に抱きついて泣き出した。
突然のことに私が慌てていると、姫奈ちゃんが急におとなしくなった。
「ど、どうしたの?」
「れ、礼子ちゃんが…風邪を引いちゃったの…」
うん。
申し訳ないけど、どこに泣く要素があるんだろう。
もしかしてあれなのか、風邪で会えないから淋しいのか?
「そんなに淋しいのなら、お見舞いに行ったらどう?」
「ん?学校には来てるよ?」
………はい?
「じゃあなんで泣いてるの?」
「だって…うつるから…き、キスしたら駄目って…うわああああん」
な・ん・だ・そ・れ!
ただのお惚気じゃないかっ!
心配した私が馬鹿みたいじゃないかっ!
…というか、キス!?
えーと。
とりあえず、姫奈ちゃんと礼子様の愛が確認できました?
…でも、これって乙女ゲームだよね?
ヒロインの設定が既におかしなことになっている気がするのは私だけだろうか?
結局、姫奈ちゃんは昼休みまでずっと目に涙を浮かべていた。
そして、休み時間の度に耳にたこができるほど礼子様の魅力を語られ続けHPを削られた私は、たまたま私の席の近くに来ていた柚葉ちゃんにバトンパスをした。
…ごめん、柚葉ちゃん。
ふっと息を吐けば、お腹も同時にぐぅ〜と音を立てた。
恥ずかしくなった私は、お弁当を持ってそそくさと屋上へ向かった。
…が、面倒臭い先客を見つけてしまい、思わず「ゲッ」と顔をしかめてしまった。
「お!馬渡!」
お!にんにく男!
ああ、この男だけはキャラクター忠実なようだ。
手の中の弁当箱にはこれでもかというほどの肉。肉。肉。
だが、口の周りはソースでベタベタ。
でも、それを拭ってやるなんて馬鹿なことはしません。
「あ、私もう行くね」
「ちょっと待って!お弁当食べに来たんでしょ?」
あーもう。
そんな顔で首をこてんってしないでいただけますか?
せめてソースが無ければ萌えたかもしれないのに。
「別の所で食べるから、またね井上君」
「…待って」
なんだよ。
いい加減しつこいぞにんに君。
そんなベタベタ顔で真顔になっても全く怖くないから!
「君が機嫌を悪くしてる理由、知ってる」
そう、私は変なフラグを立てたく無いのよ。
今日は珍しく空気が読め…
「…俺がにんにくを持ってこなかったから。
そうなんでしょ?」
え?
突っ込まないよ?
だってこれじゃあまるで喜劇じゃないの。
やってられるかこんな事!
にんにく野郎の言葉を無視して、私は黙って屋上の扉を閉めた。
シーユーアゲイン!
お気に入りありがとうございます。




