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リズミカルな天の音  作者: 宝月 蓮
プレリュード ちぐはぐディソナンス

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1/9

中学時代

 シュッと白いシャトルを打つラケットの音。シューズと床が擦れてキュッとリズムを刻む。アリーナ席から聞こえる仲間や保護者達からのパワフルな声援。

 それらの全てが、今の理純(りずみ)にとって心地の良いものだった。


 バドミントン女子ダブルス、準決勝。

 バドミントン部に所属する星野(ほしの)理純は、中学最後の試合の真っ最中だ。勝てば決勝戦、全国大会出場が目前になる。


 理純のペア、宮嶋(みやじま)透子(とうこ)は飛んで来たシャトルをアウトと判断して見送った。

 しかし、審判の判定はイン。


「ごめん、理純」

「気にしないで、透子。そんな時もあるよ」

 理純はニコリと笑う。

 普段実力のある透子だが、今日の試合では調子が悪い。そのせいか、透子からは焦燥感とピリピリした空気を感じた。

(中学最後の試合だもんね。それに、私達の中学が準決勝まで進めるなんてあんまりなかったし)

 呑気にそう思いながらも、理純は飛んで来たシャトルを鋭く打ち返す。

 相手コートのギリギリライン際。審判の判定結果はイン。

 試合が始まって以降、得点を取り続けている理純。普段は透子の方が実力は上だ。しかしこの日の理純は絶好調で普段の透子を凌ぐ程だった。


(バドミントンって楽しい……! それに、部活はやっぱり楽しくないと!)

 理純は今まで感じたことのない高揚感を抱き、口角を上げた。






♫♫♫♫♫♫♫♫






 結局、理純達は準決勝で敗退してしまった。

 しかし理純は心の底からバドミントンを楽しめたので、後悔はしていない。

「惜しかったね、透子」

「……うん」

 対する透子は唇を噛み締め、悔しそうである。

「あの、幸多(こうだ)中学校の星野理純さんですね?」

 その時、理純に声をかける者がいた。


 カジュアルな服装の中年男性だ。

 おまけにその男性はバドミントンの強豪、明羽(あけばね)学園の名前が書かれたジャージを羽織っている。

 私立明羽学園高等学校の関係者であることは明らかだ。


「はい、そうですが……」

 理純はおずおずと答えた。

 明羽学園関係者が一体自分に何の用なのかと疑問に思う理純である。

「僕は明羽学園バドミントン部監督の竹内(たけうち)です。先程の準決勝、星野さんの活躍を見て、是非明羽学園に来て欲しいと思いまして」


 要するに、バドミントンの強豪、明羽学園へのスポーツ推薦である。

 理純はチラリと透子に目を向ける。

 明羽学園は透子の第一志望の高校なのだ。

 透子は高校でもバドミントンを続けるつもりらしい。

 透子は俯いており、表情が分からなかった。


「えっと……明羽学園ってバドミントンの強豪校だからその……練習厳しいですよね?」

「それはもちろん。勝つ為にはそうなります」

「だったら、推薦の話はお断りします。私、バドミントンや部活は趣味で楽しくやりたいタイプですので。せっかくのお話ですけど、すみません」

 理純は柔らかくそう答えた。

「そうですか……。でももし気が変わったのなら我々明羽学園バドミントン部は大歓迎ですよ」

 竹内は少し残念そうにそう言い、立ち去った。


「えっと……透子……?」

 理純は恐る恐る透子に目を向ける。

 まさか透子の第一志望の高校からスポーツ推薦の声がかかるなど、理純は全く予想していなかった。

 相変わらず透子は俯いたままだ。

「明羽学園は透子の成績なら余裕で合格出来ると思うよ。だから」

「何のつもり?」

 透子の声は低く冷たく、刺すように鋭かった。

 聞いたことのない透子の声に、理純の表情は強張る。まるで声で心臓を刺されたような感覚になった。

「バドミントンは趣味!? 部活は楽しくやりたい!? あたしさ、あんたのそういうところがずっと嫌いだった! 理純ってさ、部活舐めてるよね! あたしは本気で勝つ為にやってるのに! 全国行く為に一生懸命部活やってたのにあんたは何!? 朝練も来ないし居残り練習もしない、緩く楽しんでるその姿勢めちゃくちゃムカつくんだけど!」

「え……?」

 理純は透子に何を言われているのか理解出来なかった。

 ただ、透子の激しい怒鳴り声にショックを受け、涙が出てしまう。


「理純!? どうしたの!? 大丈夫!?」

「亜美理(あみり)……」

 透子の怒鳴り声と理純が涙を流す様子に気付いた同級生――榊(さかき)亜美理が血相を変えて駆け付けた。

 亜美理が来たことにより、理純は少しだけ落ち着きを取り戻す。

 透子に何を言われたのか、ようやく理解した。

「透子……部活って楽しんだらいけないの? 楽しむのはいけないことなの? 私はただバドミントンを楽しみたいだけなのに」

 再び理純は涙を零した。

 ただ楽しみたい気持ちや自分の信念を否定され、どうしようもない悲しみが溢れ出す。


 亜美理は理純の背中を撫でながら透子に何か言っていたようだが、理純は自分の気持ちをどうにか整理することで精一杯だった。

読んでくださりありがとうございます!

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こちらは『君と僕の響奏曲』(https://ncode.syosetu.com/n2138mw/)と繋がりのある物語です。

『君と僕の響奏曲』に登場した響や奏達はこの物語では進級しております。

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こちらと繋がりがあります→『君と僕の響奏曲』
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