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転生した侯爵令嬢の奮闘〜前世の記憶を生かして研究開発したら溺愛されました〜  作者: みずのあんこ


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 学園が始まって、デビは不機嫌を極めている。


 事の始まりはクラス分け。 同じクィーンクラスだが、私はクラス1、ロージーはクラス2、デビはクラス3だった。そしてこのクラス分けは成績順らしい。 要は「デビよりも私とロージーの方が成績が良いですよ〜」と学園側が可視化したというわけだ。


 クラスの数字の意味を知ったのは入学式もあった初日目。担任が「クィーンの中で成績優秀な貴方達」発言だった。

(わ〜、これをデビは知ることがないといいなぁ〜)という祈りは届かず、しっかり説明があった。

 まぁ致し方ないよね。進級のたびにクラスは変更されて、その都度成績順らしいから。説明して『もっと上を目指せ』と先生は伝えますよね。クィーンクラス全員にされる話ですよ。致し方ない。うん、致し方ない。


 致し方ないのだが、デビは知ってしまったわけです。 馬鹿にしてたであろう婚約者が自分より優秀な成績だったことを。 私だって初めて知ったけど。


 その日の帰りの馬車は最悪だった。 何を話しかけても無視。 徹底的に無視。 びっくりするほど無視。

「お疲れさま」から始まって「今日どうだった?」「クラスに知り合いはいた?」「うち寄って行く?」「お茶でもどお?」「今日は疲れたよね、初日だし」「じゃあまた明日ね」まで。ずっっっっっと無視。 本当にびっくりする。


 私の初恋の君はこんなに心が狭い男に落ちぶれたのか!? 格好悪い!! やめていただきたい!!!



 帰りの馬車で残っていたエネルギーを使い果たした私は、侍女達の「おかえりなさい」の言葉にも小さく反応しただけで、部屋でバタンQしてしまった。


 無視はその日だけで次の日からは返事をしてくれるようにはなったが、それでも不機嫌には変わりなかった。

 今まで以上に、顔は常にムスっとさせて返事もテンプレ。 行きと帰りの馬車以外では全然会えず。 避けられてる?とわかったのは1週間後くらい。

 あぁ、意味がわからない。もしかして1年間続けるつもりですか? 来年も私の方がクラスが上だったらどうするんですか? もしかして3年間このままもあり得るんですか?

 あぁぁ、なにそれしんどい。 しんどい以外の言葉が出てこないほどしんどい。

 大体、自分の勉強不足を棚に上げて周りに当たるとか…。 格好悪い! 格好悪すぎる!! どうしよう!! 私の婚約者が格好悪いヨぉおおぉぉぉおおお!!!



 そんな日常に変化があったのは、いいかげん我慢の限界になってきた3ヶ月後。





「あなたがナヴァル様の婚約者?」


 移動教室のためにクラスの子と廊下を歩いている時、3人組の女の子達に声をかけられた。


 ひとりは、腰に手を当てて私を頭の先から足の先までジロジロ見てきた、縦ロールの令嬢。

 もうひとりは、その令嬢の横で腕を組んで顎を上げて見下すように見てきている、ポニーテールの令嬢。 もうひとりは、そのふたりの後ろでオロオロしている風で抑えきれない笑みを手で隠している、ウェーブヘアをハーフアップにした令嬢。

 どの顔も見たことがないから、会ったことはないはずだ。



「…どちら様でしょうか?」


 質問には答えず、淑女の笑みを顔に貼り付けて聞く。質問に質問で返すのは失礼かもしれないが、敵意剥き出しの相手に答える気にはならないし、確証を持って話しかけてきてるから返事はいらないだろう。


「はじめまして、(わたくし)ローシャル・ディアンと申します」


 縦ロールのお蝶夫人…ではなく令嬢が名乗る。 頭の中で貴族家系図を広げ家名を探す。


(…ディアンと言えば、確か地方の伯爵家?)


(わたくし)はレイア・べルーリンです」


ポニーテールの令嬢は、手で髪の毛を後ろに流しながら名乗った。効果音をつけるなら、ふぁさぁ…って感じ。うん、正にポニーテール(馬のしっぽ)


(ん?…ベルーリン?)


 最近聞いた気がする家名に少し思案する、確か絵画で評価を受けていた令嬢だ。こちらは男爵家だったか…。


 この流れのまま後ろの令嬢も名乗るのだろうと思い待つ。 が、なかなか名乗らない…。 前世で見た犬の如くプルプルプルプル震えて出てこない、ストレートハーフアップ令嬢。

 ご友人らしきふたりは促すこともなく気遣う雰囲気だ。 だが時間は有限。 早く要件を言ってもらいたくて首を傾げて目線で促す。

 すると、怯えた様子ながらもふたりの間から令嬢が出てきて、意を決したように

「あっあなたにデビッド様は勿体ないと思います!」

と言い放った。




…はい?


「あ、あなたはっご自分の家のお陰で婚約者になれたのですっ! あなた自身が選ばれたわけじゃありませんっ!」


 わざとらしく、震えながら。いかにも『強者に立ち向かってる弱者』をアピールしている感じ。


「デビッド様は言ってらっしゃいました!昔から家族の功績を自身のもののように言うことがあると!昔から困っていると!」


 言ってることは疑問符だらけで反応に困っていると、両手を胸の前で握りしめてさらに続ける。


「それにっ あ、あなたはズルをしてクラス1になったのでしょう!?ひどいです!もっと彼の婚約者だという自覚を持っていただきたいです!テストでズルをするなんてっ!ちゃんと受けた我々に対しての冒涜です!評価は正当に受けるべきなのにっ!」



……は、はぁぁぁあああああ!????


 つい怒鳴りたくなって、ぐっと思いとどまる。

 ここは廊下、しかも移動教室で多くの同じクラスの人達は一緒に移動しているのだ。ムキになって言い返したらどんな噂が立つかわからない。


(冷静に……深呼吸……)


 深く息を吸い、長く吐く。 フーー…と息を吐いたら、ビクッっとしてるのが薄め目の先で見えた。


「…まず訂正してください。私はズルはしておりません。」

「うそです!」


 間髪入れずに否定か。 名もない…いやあるのか、名乗ってないだけか。じゃあ、名乗らずのストレートハーフアップ令嬢。 あなたは、なんの確信があって否定するのか。小一時間ほど問い正したい。


「本当です。それにあなたは自分達に対しての冒涜だとおっしゃいましたが、今の発言が、この学園の先生方を冒涜しているのがわかりませんか?」

「え?」


意味がわからないという顔。 マジか。


「…私がどのようにズルをしたというのでしょう。カンニングですか? それとも学園側に何か働きかけをしたということですか? どちらにしてもとても失礼な話です。もちろん私にだけではなく先生方にもです。カンニングだとしたら、それを許すほどの杜撰な管理だったということになりますし、働きかけたのだとしたら私に便宜を測ったということになります。どちらにしても大変に失礼なお話ですわね。そしてそのようなことは私はやっていないことを我がホワイティの名に誓います」


 まっすぐ相手の目を見ながら言う。 3人は目を見開き驚いている。 家の名前をかけて誓うのは貴族にとってこれ以上ないほどの誓いだ。


「それに、婚約できたのは私自身ではなく家の、と申しましたか? それに関しては否定はしません」


 名乗らず令嬢とその友人達が、顔をぱっと明るくし何かを言いかける、が


「でも、それは当たり前のことです」


と、何かを言われる前に畳み掛ける。


「なぜなら(わたくし)は、紛れもないホワイティ家の娘なのですから」


 生まれが違うだけで、最初から()()()()()()が違うのは前世から同じだ。私は『暴力的な父親』を持っていた。 それは決して嬉しいことではなかった。でも持っていたのだ。生まれた場所、家、親。 それらによって違うのは当たり前。 それも含めて『自分』。 その事実があるだけ。


 だから、ホワイティ家をあなたが()()()()()、という事実を彼女は言ってるだけ。 『そうですけど。だからなに?』って話。



それよりも…。


「………あなた、デビのこと名前で呼んでいるんですね…」


 一白の時間の後、意味を把握したであろう名乗らず令嬢の顔がカッと赤くなる。


「か、彼は呼んでいいと言ってくれましたわっ」


上目遣いに、頬を染めながら、デビッド・ナヴァル(その男)の許可は取ったと、婚約者の私に言うのか…。


「…あなた、名前ー」





「そこで何をしているっ!?」


 名乗らず令嬢の名前を聞こうとしていたら、渦中の婚約者(デビ)が廊下の先に現れた。


「! デビッド様っ」


 その姿を見て、嬉しくて仕方がないと言うように、私の婚約者の名を呼びながら駆け出す名乗らず令嬢。


「 シャルレ!」


 名乗らず令嬢を、迷いなくその胸に受け止める我が婚約者。


「大丈夫か?」


 右手は名乗らず令嬢の肩に、左手は名乗らず令嬢の右手を乗せ、優しく気遣う声を出す我が婚約者。


「デビッド様…私…私…」


 涙で声が出ない、と言わんばかりの名乗らず令嬢。


「こんなに震えて…あいつには近づかない方がいいと言ったじゃないか…」


 名乗らず令嬢しか目に入っていない様子の我が婚約者。


「だって…だって…」


 涙がひとつ、頬にこぼれる名乗らず令嬢。


「…泣き顔も可愛いけど、君には笑っていてほしいな…」


頬の涙を親指で拭き、笑顔で甘い言葉を吐く我が婚約者。


「デビッド様…」


その言葉にふわっと笑う名乗らず令嬢。




 あれ?私は何を見せられているのかな?




ここまで読んでいただき、本っ当にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

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