11 〜婚約者デビside〜
婚約者のデビ目線になります。
俺には婚約者がいる。スカーレット・ホワイティ。
『選ばれし技術』を使わない方法とかって夢物語を延々喋り続ける変な女だ。
初めて会ったのは王家主催のパーティ。だったはずなんだけど、もっと前に会ってるらしい。覚えてないけど。
そのパーティでは、いつもみたいに従兄弟とその取り巻き達にちょっかいを出されてた。俺があいつより優秀だからってひがんでるんだ。これだから単細胞は困る。
剣術?これからは頭脳の時代だろ。戦争だって戦略を立てる奴が勝つんだよ。
「そんな風に人を見下してるから、お前には婚約者どころか友達すらできないんだ!」
頭まで筋肉のやつよりマシだ。
そう言ったら胸を思いっきり押されてよろけた。前に顔を殴って来た時は痣になって、従兄弟の父親と謝りに来て、それからは殴らなくなった。猿でも学ぶらしい。
「いたいっ」
「うわっ」
よろけただけなのに、後ろにいたやつのせいで尻餅をつく羽目になった。
なんでこんなとこ歩いてんだよ。そう思っていたら「デビっ!?」と急に呼ばれた。
は?
おれはデビッド・ナヴァルだからデビと言われればデビではあるが…。
従兄弟と取り巻き達は、おれに女の子の知り合いがいたことにびっくりしていた。ホワイティ家の名前をあいつが言うと、さらに驚愕の表情。
「お、お前…ホワイティ令嬢と知り合いだったのか…?」
その顔が面白くて、ついフッと笑ったら、肯定と取られて「マジかよ…」とか「嘘だろ?」とか言ってた。
家に帰って、父上に今日あった出来事を伝えたら「なんだと!?ホワイティ家と知り合いになったのか!?」と喜ばれた。最近いろんなものを売り出しては業績を伸ばしている家で、商品は手に入れたくても入れられないんだとか。母上がお茶会でご一緒できたら夢のようだわ、とか言っていたらしい。そんなにすごい家だったのか。
売り出せるものは穀物だけという、つまらない領地しかない我が伯爵家。肩書だけは立派だが天候によっても大きく左右されて落ち着ける年がない。打開策を模索し続けている、そんな家。
父上が急いで婚約の申し込みをしたのは当然だろう。よくやったと褒められた。しかし、おれには会った時の記憶がない。
少しの不安を口にすると、「なあに、きっとどこかでお前を見かけたのだろう。それを覚えていたんだ」と上機嫌に言われた。そんな感じではなかったが…。「きれいになりすぎてて気づかなかったとでも言えばいい。ついでに手にキスでもしてこい」
父親の言う通りに伝えると納得してるみたいだった。流石にキスはできなかったが…。
⭐︎
婚約者になって5年。おれは王都学園に入学する年になる。入学前に大々的に婚約発表をしようと、侯爵家でパーティーをすることになった。
今日も研究がどうたら薬草がなんたらと来た相手に話している。それを横で聞きながら内心うんざりしていると、友達を見つけたからと離れていった。
やっと自由になった。あんなうるさい女、侯爵家の財産さえなければ今すぐにでも別れてやるのに…。
飲み物をもらい一息つく。
すると、婚約者の父親であるホワイティ侯爵がそばに来た。久しぶりに会ったので、そのように挨拶をすると、もっと会いに来いと苦言を言われた。仕方ないだろ、あんたの娘と一緒にいると疲れるんだ。でもそんなことは言えるはずもなく、苦笑いを浮かべて「…時間がなくて。申し訳ありません」とだけ返した。
すると伯爵は「…あの子は私とって可愛い娘だ。どうしてもわがままを聞いてしまう」と言った。
ん?侯爵様もわがまま娘には手を焼いているってことか? つまり、おれに期待してるってこと?
なるほど、そうだよな。侯爵や子息の真似事で研究だなんだと言っているが、結局は令嬢だ。慎ましやかに男を立てて、淑女として生きていって欲しいと思っているんだろう。
「…お任せください、侯爵様」
しっかりと、侯爵の目を見て胸に手を置き腰を曲げる。
ふんっと言って侯爵は離れていく。言質は取った。結婚までに、あの婚約者を立派な淑女に叩き直してやる。
ここまで読んでいただき、本っ当にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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