12 〜ギルフォードside〜
お父様目線のお話になります。
私には大切な家族がいる。妻のサラに、息子のジェームス、娘のスカーレット。
特に娘は可愛い。かなり可愛い。私に似た息子も可愛かったが、娘は段違いだ。サラに似た眼差しなんてとろけてしまう。生まれてしばらくは会いに行きすぎて執務が滞り、家令のウォルターに怒られたくらいだ。日に日に可愛さは増していっている。 このまま増えていったら年頃にはどうなってしまうんだ? そう言ったらサラに笑われた。
そんな娘が5才の時に体調を崩した。その年の流行病は耐性のない人間には命をも脅かすものだった。どんなことをしても救うと誓った。薬はもちろん、医者はいくらかかっても我が家へ来させた。
しかし、どんな薬を使っても、腕のいい医者に診させても、熱は下がらず意識も戻らない。
「…ウォルター。今回の薬が効かなかったら…あの組織に頼もう」
私の言葉にウォルターは不安げな顔になった。
「旦那様、それはあまりにも危険では…」
「…あの組織なら、治す方法を見つけてくれるはずなんだ…」
謎の組織『ズワルト』。隣国を中心に活動している組織。今では各諸国にまで手を伸ばしている。その仕事内容は単純だ。『依頼物の調達』その依頼物がどんなものでも報酬さえ払えば手にいれてくる。
前までは「お望みのものを手に入れてみせましょう。人の心以外であれば。」という言葉で依頼人を骨抜きにしたという話が出る以外は、依頼内容含め、 怪しいところはなかった。ただ謎は多かった。会ったはずの依頼人が、相手のことを一切覚えていないのだ。
会ったのは確実。話したことも確実。依頼をし、その依頼物を受け取り、報酬を支払ったことも確実。なのに覚えていない。男なのか女なのか、それすらわからないのだ。
そんな団体に血生臭い噂が流れたのは5年前。どこかの要人の心臓が盗まれた。それが『ズワルト』の仕業らしい、というものだ。
「人の心は無理だけど心臓なら手に入れられるらしいね」という冗談が若者の間で一時期流行った。趣味が悪すぎると思っていたら、案の定すぐになくなった。だが、その後も黒い噂は収まらず、むしろ増えていく。
そんな組織への依頼だ、ウォルターが警戒するのも当然と言える。だが娘の方が大事だ。このまま目覚めなかったらと想像するだけで頭がおかしくなる。
5日後、ウォルターは街に出かけた。『ズワルト』に接触をはかるためだ。危険な役をやらせて申しわけないと伝えると「私にとっても、可愛いお嬢様なのですよ」と優しい笑顔でドアを出ていった。
その日のうちに帰ってくるだろうと思っていたウォルターは帰ってこず、やっと顔を見せたのは1週間後。どことなく疲れた顔で、袋いっぱいの薬草と処方を書いた紙を抱えて。
どこにいたのか。誰と会っていたのか。聞いても本人は何も覚えていなかった。噂通り、接触した証拠は依頼品だけ。薄ら寒さは覚えたが、それよりも娘だ。
ウォルターには、とにかく無事で良かったと、それだけ伝えた。
医者に袋を渡したらびっくりしていた。「こんな貴重なものを袋いっぱい…!?どうやって手に入れたんですか!?」と聞かれたが答えは濁した。『ズワルト』に関わったと伝えたら少し体裁が悪い…そう思って。
医者曰く、この薬草が効くのは賭けだと言った。そもそもこの薬草をここまでたくさん手に入れること自体が珍しいのだ、と。
そこまで大変な病なのか…。そう思ったが、1日から2日ほどで娘の熱は下がり、3日目には意識も回復した。私はサラと抱き合って喜んだ。
そうなるとまだたくさんある薬草をどうすればいいか。領地にはまだ病は流行している。
迷うことなく、ウォルターに市井の主要病院に配る様手配した。貴族も庶民も家族が大事なのは変わらない。ひとりでも多くの命が守られますように…。
…もしや、これも見越していたのだろうか。
ウォルターに聞こうと思ってやめる。聞いても困らせるだけだと気付いたからだ。
ここまで読んでいただき、本っ当にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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