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その者、青き空の名を持ちし者 2

 遠くで水滴の落ちる音がする。

 今、いったい『いつ』なのだろうか。

 ふと、そんなどうでもいいことを思い浮かべる。

 動かない、身体。

 鼻に付くむせる様な血の臭い。

 その匂いの元が自分の血であることは明白だった。

 痛みはとっくの昔に感じなくなり、ただ体から体温が奪われるように寒気が襲ってくる。

 かすむ視界の先には、はるか上空に見える小さな穴。

 多分、自分はあそこから落ちたのだろう。

 それを思えば、即死しなかった自分の頑丈さに心底呆れた。

 まさか、こんなに深い地下空間が存在しているとは思いもよらなかった。

 発端は、ただ、真水を生成するために必要な海水を汲み上げるパイプの異常を確かめるためたっだ。

 数日前に、この海上都市へ不法侵入した者の報告があり、そのシグナルが最後に確認されたのがこのパイプの異常シグナルが出た場所だったのだ。

 無数にある監視システムや防衛ラインを掻い潜って不法侵入してきた者だ、並みの能力者ではないことは容易にうかがえた。

 故に、この都市の生命線とも呼べる、生活用水を管轄している水質管理センターの警護総括責任者である俺が、直々に調べに来たのだ。

 しかし、不法侵入者と思われる者は見つからず、そのあげく調べた限りではパイプの異常も見つからなかった。

 狐につままれた気持ちで戻ろうとしたその時、突然足元がなくなり、俺はなすすべもなく暗く深い穴に吸い込まれるように落下した。

 助けは間に合わないだろう。

 自分の体は、自分が要く分かっているつもりだ。

 今はまだ意識がある。

 だが、この出血だ。他にも内臓の損傷や無数の骨折などを考えれば『死』が訪れるのは時間の問題だ。

 そっと、目を閉じる。

 また、遠くで水滴の音がした。


― …… きれいな 青

 ふと、声がした。

― きれいな 青空のような色の髪

 少女のような涼やかで耳に心地よい声。

 ずっとその声を聞いて居たくなる不思議な感覚に陥る。

「とうとう幻聴まできこえてきたとは」と、自嘲する。 

― 貴方は 誰?

(それは、俺が聞きたい。 お前は、誰だ?)

― あれれ? 貴方 私の声が聞こえているの?

 俺が思ったことが伝わったのか、驚いたような声で返事が返ってきた。

(聞こえているから、聞いている)

 薄れいく意識に抗いながら興味本位でその問いに答える。

― 私? 私は … …

 しかし、抗うことがもはや限界たったのかその声を最後に、俺の意識は闇に沈んだ。 



 男が、倒れていた場所は、海水の上昇によって破棄された、海水の浸水を免れていた奇跡的な区画。

 その区画にあった誰も知らない朽ちた研究施設の暗く朽ちた研究室の一角。

 男が落ち、倒れていたその体の下で、「それ」は形とりはじめた。

 その廃墟で不自然にも無傷で存在していたそれは、人工羊水で満たされた人工人間フェイクノイドの培養槽。

 その中にあった小さな小さな生命の胚がものすごい勢いで細胞分裂を始める。

 あっという間に、胎児になり、成長し赤子の形をとる。

 その勢いはとまらず成長し続ける。

 手足が伸び、背がぐんぐん高くなる。

 成長は『人』の年齢で言えば15・6歳の大きさでようやく止る。

 その段階でそれは、ゆっくり瞳を開いた。

 混じりけのない緋色の瞳。

 その瞳には、今まさに命が尽きようとしている、青空色をまとう青年の姿が映し出されていた。


まだまだ書き途中ですが全体的に長くなりそうです(汗

【用語補足】

水質管理すいしつかんりセンター

・都市全体の生活用水を管轄している部署で海水を真水にかえる場所でもある重要な施設

人工人間フェイクノイド

・現代段階の環境に適応させ人工的に作られた有機擬似生命体

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