休日の予定とお手伝い
翌朝、子供達はいつも以上に大はしゃぎで走り回り、私達はもう必死になって子供達を追いかけ回す事になり、全員着席した時にはもうへとへとになっていたわ。
「お疲れ様。子供達の扱い方もずいぶん慣れてきたわね」
「まあね。やんちゃではあるけど皆良い子達だし、私も元々子供は嫌いじゃないからね」
苦笑いしながら座り、自分の水石を取り出してマグカップに水を落とす。
「あれ? 少し小さくなった?」
片付ける時に握り込んだ瞬間、何となく水石が一回り小さくなった気がして慌てて確認する。
「そりゃあ使ったら小さくなるわよ。でもその大きさならまだまだ使えるから心配なく」
隣に座ったリッティにそう言われて、改めて手の中の水石を見つめる。
「つまり、使い続けていたらいずれ小さくなって無くなる?」
「そうよ。その大きさならまだ当分は使えるけど、これくらいになったらそろそろ新しいのを貰わないとね」
そう言ってリッティが見せてくれたのは、私の親指くらいの細さになった水石。
「あれ? これくらいのをチムニーが使ってたと思うけど」
「そうよ、これくらいになると一度に出る量が減ってくるから、小さな子達に使わせるのよ。ほら、こんなに出ても、子供は飲めないでしょう?」
自分のマグカップに並々と入った水を見せて笑う。
「確かにそうね。チムニーったらカップを使わずにいつもこうやって水石から直接水を飲んでるわよ」
笑ってそう言うと、私は水石を持って上を向き、口元に水石を持っていった。
「そうそう、いくら言っても男の子達は皆それをやるわね。逆にカップで飲んでる子を馬鹿にしたりするから、結局皆やるようになっちゃうのよ。あなたは真似しちゃ駄目だからね」
「やりませんって」
顔の前で手を振って笑うと、周りの大人達もリッティと一緒になって笑っていた。
「お休みって言われても、特にする事無いのよね。畑のお手伝いにでも行こうかしら」
朝食を食べ終えて水を飲みながらのんびり考えていると、いきなりリッティに肩を叩かれた。
「それなら、あなたも一緒に見学に行ってみる? 今回は子供達も何人か連れていくから、良かったら一緒に行くように頼んであげるわよ」
「ええ? 見学って、何の?」
考え事をしていた私は、慌ててリッティを振り返る。
「何って、地上の商人との取り引きよ。今後の為にも成人なら何度か見学には行っておくべきだと思うからね」
「地上との取り引きって、具体的にはどこでするの?」
この浮き島は、確か相当な高度にあったはず。もしも地上の人がここまで自力で来れる何らかの方法を持っているのなら。ちょっと見てみたいかも。
飛行艇とか、あったら格好良さそう。
「まさか、この浮き島には翼無しでは来られないわよ。この浮き島の真下に無人島があってね。そこの海岸でいつも取り引きをするのよ。
「へえ、そうなのね。それは是非とも行ってみたいわ」
ちょっとワクワクしながらそう答えると、食べ終えた食器を手に立ち上がったリッティが笑顔で頷いてくれた。
「まあ見学だけなら、特に何か用意する必要は無いわ。少し休んだら、準備を手伝って貰ってもいいかしら」
「もちろん。じゃあこれ片付けてきますね」
そう言って彼女の分も一緒に食器を持って、早足で片付けに行く。
「ああ、悪いわね、ありがとう」
「ついでだから気にしないで。ええと、それじゃどうすればいい?」
食後にのんびりお水を飲んでいたので、特に休憩の必要は無い。
「あら、もう大丈夫? じゃあこっちよ」
ここは地下にあるので、そのまま階段を上がり歩く彼女について一階の広いロビーへ出る。
「地上の部屋は天井がものすごく高いのに、地下は普通の高さなのね」
まあそれでも3メートル近くはあると思うんだけど、他の高い天井に比べたら地下は私達サイズのような気がする。
「ああ、ええと、ここが巨人族の文明の跡だって話は聞いた?」
「その話なら、少しだけチムタムから聞きました」
「それでね、地下の部屋は元々その巨人族の人達が地下の収納庫として使っていた場所らしいわ。それで私達の先祖が、ここに入り口を開けて階段を作って、部屋を区切って地下の部屋にして使ってるのよ」
「はあ、なるほど。元は床下収納庫だったわけか。そりゃあ狭いはず」
納得していると、笑って腕を突かれる。
「ちなみに、いつも私達が寝泊まりしている部屋も、私達サイズで小さいでしょう?」
「あ、確かに言われてみればそうね。まあ広いと言えば広いけど、確かに巨人族が使うには小さすぎるわね」
「あの建物は元は倉庫として使われていた場所で、細長くて横に広い穴が壁に列になって空いていたのよ。それを今の部屋の大きさになるように間に石を積んで壁にして区切ったわけ。それで、その元の穴が何に使われていたかって言うと、一列に一つずつ引き出しが入ってて巨人族が物入れにしていた場所らしいわよ。横に長い巨大な引き出し!」
「ええ、まさかの引き出しの跡だったの!」
思わずそう叫んで、顔を見合わせて同時に吹き出した。
「あはは、それは思いつかなかったわ。そっか、巨人族にとっては、あのサイズの大きさは物入れなわけね。すごい」
確かに壁に点々と開いている部屋の扉は、何だか不自然だった。私はてっきり、石の壁に後で穴を開けたんだと思っていたけど、よく考えたらいくら翼があるとは言っても、あの位置に人力で穴を開ける工事をするのは確かにちょっと無茶だと思う。
「へえ、すごい世界なのね」
改めて高い天井を見上げて感心したように呟く。
「それじゃあこっちで荷物運びを手伝ってくれるかしら」
建物の外へ出ると正面の広場には巨大な木箱がいくつも並んでいて、何人もの人達が沢山の包みや小箱を運んでいる真っ最中だった。
「手伝います!」
声をかけて駆け寄る。
「ああ、ルリね。ご苦労様。それじゃあ向こうの倉庫に声を掛けて、言われた品物をここまで運んでくれるかしら」
ちょうど顔を上げたパムが笑顔でそう教えてくれたので、返事をした私は翼を開いて軽く飛び立ち、少し離れた場所にある木造の倉庫へ飛んで向かう。
「地上のちょっとした移動も簡単に飛んで移動出来るから楽でいいわ。こういう時には、翼のありがたみを思い知るわね」
小さく笑ってそう呟いて地上に降り立った私は、開けっ放しの倉庫の中へ駆け込んで行ったのだった。




