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青春のかたち  作者: さくらんぼ
5/5

「変化」の、かたち。

「楽しいっすね!!」

あの時の、桃季の笑顔と、声が。

背景の夜空と、駅の眩しい光が。

忘れられない。


今だって、目の前にはPCがありながらも、頭の中はそれらが陣取っている。

嬉しかった。嬉しいんだ。

僕が提案したことで、アイドルがあんなに笑ってくれたことがたまらなく嬉しかった。

 

あの時の笑顔は、画面越しの笑顔と何も変わらなかった気がする。


昼休憩に携帯を見ると、メールが一件。


桃季

「またいつか"青春ごっこ"しましょう!」


メールが10:14にきていた。こんな平日に、こんな時間に送られてきたことに、アイドルの生活の不規則さが伺える。


BULEKNOWの新着動画

〜BULEKNOW NEWアルバム制作

          behind the scenes〜


突如、通知が出てくる。1日前のものだ。

そういえば、公式チャンネル登録したんだっけ、、。


何を思ったか、その動画を開く。まだ会社にいるんだぞ、、。と善良な自分が脳内に語りかけたが、無視した。


「じゃあ、もうこれで決定でいい?」

ホワイトボードに箇条書きで何やら様々な案が書いてある。1人の男が一つに⚪︎をつけ、くるっとこちらを振り返る。

メンバーだろうか。

「うん、いいと思う」

「いいよー」

「俺も賛成」

口を揃えて、3人が同意した。

ただ1人を除いて。

「、、、。そんな簡単に決まるんじゃダメなんじゃないの?そんなもんなの?」

空気はシーンとなる。

桃季は続けた。

「ファンの人に喜んでもらえるやつがさ、そんなんでいいの?まだ会議始まって10分ぐらいしか経ってねえんだけど」

と自分の腕時計を見る桃季。

「俺はそんなんダメだと思うし、なんでもっと案でないの?ほとんど俺が出したやつじゃん」

空気は硬直したままで、他のメンバーは俯いている。

場面が変わって、唐突にダンスの練習風景になった。

まるで、空気を紛らわすかのように。


僕は何故か緊張して、コメント欄をタップした。

「桃季くん、ちゃんと向き合ってる感じしてむちゃくちゃいい、、ギャップ、!!」

「メンバーもこれで成長するよね」

「やっぱこのグループに恵那川桃季は必要不可欠だ」

「メンバーも良くないよねこれ」

「BULEKNOWが売れる理由の一つだよねこれ」


比較的賞賛の声で溢れかえるコメント。

それらにホッとした。


こんな世界なんだ。

一つの行動で、何千人、何万人に賞賛され、非難される。

僕だったら、そんなのは気が狂いそうになる。

自分の世界のちっぽけさを感じた。

やっぱ桃季はすごいなあ。


「ね、これ見て」

僕のすぐ側にいた、同じ会社の女性社員2人が、何やらスマホの画面を見てひそひそと話している。

「炎上、、?」

「え、まじ?恵那川桃季、、ひくわ〜」

「恵那川桃季ってだれだっけ?BLUE KNOWだっけ?」

「そうそう」


心臓が飛び跳ねる。え、さっきの??

急いでスマホを取り出した。パスワードを間違う。

まどろっこしい。こういう時に限って、、!

「恵那川桃季」と調べると、顔写真とともにプロフィールがでてくる。震える手でスクロールすると、大量のニュースが表示されていた。全て同じ内容のようだ。

「恵那川桃季バラエティでの失言」

バラエティでの失言??

「某バラエティ番組にて、大御所芸能人に対して失言が大炎上」


ネット上では、桃季に対する批判の声しかなかった。


「メンバーに対して偉そうにしてたくせに笑笑」


自分が言われてるわけじゃないのに、ショックを受ける。胸にグサグサくる。足がすくむ。



大丈夫に決まってる。人気アイドルなんだ、炎上なんて慣れっこだろう。批判コメントも見ないはずだ。

バラエティ担当なんだから、なおさらだ。たがが一つの炎上で、心折れないだろ。


そう言い聞かせて、とりあえず仕事に集中した。



仕事終わりの夜。

いつもなら絶対にしない、歩きスマホをせざるを得なかった。

恵那川桃季炎上の行方を、人々の批判を、全て目に通す。

そうしないと、落ち着けなかった。

スマホが突然震える。

現れた名前に、心臓は飛び跳ねた。


「もしもし、、、」


「真さん、、?」


「俺、、どうしよ」


相手の声は震えていた。












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