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魔月さん、こんばんは

 ……


 蟻たちをなるべく刺激しないようにゆっくり、音を立てずに進み、やっと外にでることに……なのだけれども……

 

 「わ……」

 「もう夜だったのね……」

 空には、まん丸の魔月が強い蒼白い光で周囲を明るく照らしている。すっかり夜だ。

 「こ、これは……。いや、進むのも遅く、ヘビとの戦闘も長かった……必然か」

 と、空を見上げつぶやくイヴェルタさん。

 「ばっはっばっはっは! そんなもんじゃ。代わり映えのない坑道だでな」

 「うむうむ。ま、ちと手こずったのも事実じゃがな」

 と、当然じゃ! とドワーフの爺ちゃんたち

 「では、このまま野営地の方に向かいましょう。アリたちの手前、あまり騒ぐことはできませぬが食事としましょう。少しは酒もだせるでしょう」

 と将軍様。お酒と聞いて盛り上がるドワーフの爺ちゃんたち。人族の兵隊さんやイヴェルタさんは疲れて早く休みたい感じね。私? う~~ん……そうね、”疲れた”かなぁ。気が張ってたのだろうね。お腹も減ったし、たくさん食べて早く寝よう!

 

 野営地に着けばポドカルプス婆様やフイ様がお出迎えだ。簡単だけれども王太子様の労いのお言葉もあったわ。作戦の成果については偵察に行ったノーム族の方の報告で判断すると。

 温かいスープでほっと一息。土産話を聴きに来たフイ様には悪いけど今日は早めに休ませてもらおう――と、いっても、もういつもよりも遅い時間なんだけれどもね。おやすみ~~


 ……


 「おはよ。はふぅぅ~~」

 「ヤルルちゃん! 遅くまで飲んでいたでしょ!」

 少し遅れて寝床の鎧馬車から這い出てきたヤルルちゃん……。顔色は良いようだ。

 「ちょっとよ、ちょっと! だって、野営じゃない。そんなにお酒はでないって?」

 「……何故に疑問形なんじゃ?」

 「うん。語尾が上がってるし? 首かしげてるし?」

 そう……。自分で言って首をこてんと傾げるヤルルちゃん。うん。今日もかわいいぞ!

 「どうせフイ様のところで飲んでたんでしょ」

 「だって~~。侯爵様からお呼ばれされたんですもの。王太子様もいたし? キノコも美味……。あ! そうそう! ちゃんと”くさや”売り込んでおいたわよ!」

 ……まぁいいけどさぁ。てか、まだ”くさや”持ってたんだ……。どれだけ買ったんだ? てか、マジックバッグに入っているとはいえ腐らないんだなぁ。てか、納豆同様、すでに???

 「おいおい……野営地であんな臭いの焼くなよ……」

 と、呆れ顔のメメ。

 「あの臭い……魔物避けになるかも?」

 と、キキ。まぁ、少なくとも獣人避けにはなるわね……

 「王太子様も美味いって言ってたし? すぐに定期便ができるかもね! ラグのミイケ屋に言っておけばいいわよね?」

 「「「いらん!」」 さ、魔力回しでもすっか!」

 朝から”くさや”の話かい! もう! 

 

 私たちが手をつなぎ輪になり”魔力回し”を始めるとお茶を囲っていたポドカルプス婆様や魔法使いの方たちが集まってきた……

 「……ルル。魔力、乱れたわよ」

 おっと!

 「ごめん……でもさぁ」

 こう注目されちゃぁね。少々恥ずかしいのですけれども……

 「ほほぉ~~ん。これが話に聞く”魔力回し”というやつかね。うむうむ、実に見事なもんだわ」

 と、うんうんと頷くポドカルプス婆様。他の魔法使いの方々も頷いているわ

 「魔力まわし……かね? ふむ?」

 もちろんフイ様の姿もあるよ!

 「ま、侯爵様にはわからないだろうがねぇ。うむうむ濃密な魔力に満ちているねぇ」

 「ほう? ポドカルプス殿。魔力とは目に見えるものかね? メサ、どうか」

 「はい。見えはしませんが、なんといいましょうか……。魔法使いの素養の無い私には言葉に表せません」

 「ふぅむ。感じる……か。確かにな。ふむ……これが濃密な魔力というものか。興味深いね」

 「ほ。わかるかい。ま、それなりの資質、才能、なにより研鑽がいるさね」

 「これが魔法使い……というものか。ふむ……。が、ウチの屋敷にいるアスベオ老には感じぬが」

 「ま、あの爺さんも随分としぼんだからねぇ。ふわっはっは」

 もう……ポドカルプス婆様。しぼんだって……

 「そういえば、ゴテインも魔力の鍛錬として瞑想を取り入れたと聞く」

 あ、アルビさんもやってきた。イヴェルタさんとジーギスさんをお供にね。 

 「メイソウでしょうか」

 「ミッツ様より真なる瞑想方法が伝授されたやら。神殿に籠もり神像の前で瞑想を行うと神気を感じるまでに気が研ぎ澄まされると」

 と、王太子様

 「ほほう。神気でございますかアルビ様。キキ?」

 「え? 私? 知らないよ?」

 「瞑想でございますか。精神にたいへんよいとか。その真なる作法、高位な神官の一部で口伝にて伝わるとか。プロスフェルデ伯爵が神気を感じるというのも納得でございます」

 と、フイ様の後ろに控えていたメサさん

 「精神によい……か。精神の力、それが魔力というのだろうか」

 と、フイ様

 「さぁどうかねぇ。まぁ、精神力は魔法の発動効果の下支えになるのは確かだがね」

 と、ポドカルプス婆様

 「獣人族の強靭な肉体、機敏性、筋力が身体強化の魔法であるのなら、魔力の鍛錬、その瞑想も効果があるということか。ふむ……ウチにも取り入れたいな」

 「はい。フイ様」

 「で、その魔力回しというのも存分に効果があるということだね?」

 「まぁ、精神集中しますし?」

 「でも、魔力の存在がわからないと回すどころか動かすこともできませんよ」

 と、メメ

 「む! それもそうだな……。私のような凡夫にはな」

 ……凡夫って……。侯爵様でしょうに。一緒に頷いてるのは王太子様でしょ……

 「まぁ、その魔法使いにしたって自分の魔力のありようを正確に知ってるのはそうはいないよ。が、さすがは勇者様だけあるねぇ。その技も公開されていると聞くしねぇ。今度、時間をたっぷりいただいて、ゆっくりと話を聞きたいものさ」

 「ふむ……ということはまずは瞑想か。王都の神殿にもポケル神官がいらっしゃると聞く。人を派遣し話を聞きに行くか……」

 「良きことだとおもいます。是非に」

 「そして、肉体の鍛錬、その成果を神々に披露する場、”奉納の舞”も効果があるやら」

 と、王太子様の補足……。

 「ほぅ。”奉納の舞”と。神々のご加護もありそうですな」

 

 ああ……筋肉踊りかぁ。まぁ、神様は楽しみにされているみたいだし? 鍛えて、瞑想して……そう考えると効果あり? あのゴテイン様なら一人で魔力回しだってできそうだしね。ん?! ”奉納の舞”で神様と魔力回しをしているとか? なんて? ありえない……よね? んん……???

 「どうしたんだいルル? なにか思い当たることでも?」

 と、フイ様

 「どうせ筋肉踊りの風景、思い出したんでしょ」

 と、メメ。ま、まぁ、それもあるけれどもさぁ。

 「これでも色々考えていたの!」

 「ふぅ~~ん」

 「筋肉踊り……とな? ゴテインのな。なるほどな。くくくふふ……」

 は、ははは……。ですよねぇ

 「アルビ様、神事でしょうに……笑っては……くくく」

 フイ様だって笑ってますよ

 「フイ様も……」

 メサさん、たいへんですね……

 「さぁて。ご飯にしましょうか」

 「うん。お腹へったもんね」

 そうね。ご飯もだけど蛇のその後も気になるしね

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