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買い物の約束

「……はぁぁぁ…」


 私からマジックポーチを受け取ってからしばらくして、ヴェントゥスさんが深い、深ーいため息をついた。


「…マリーナ様、一体何を作ったんですか?」


 サーニャさんがヴェントゥスさんの反応を見て、そう聞いてくる。そこまで酷い物は作ってないはずなんだけどなぁ…。普通のマジックポーチだよ?


『…容量家一軒分のマジックポーチが普通でしょうか?』


 ……うん。普通じゃないね。いやでも言い訳させて欲しいの。作ったの初めてなんだよ?そしたら色々と試行錯誤したりするでしょ?


『…それで失敗するどころか馬鹿みたいな容量のマジックポーチ創るほうが異常かと』


 馬鹿って…この世界にあるかどうかすら分からないみたいな代物じゃないんだし、そこまで言わなくても…


『まぁ無限容量にならなかっただけ良かったとは思いますよ』


 ハクが辛辣…


「……マリーナ様、聞きたいことが2つほどあります」


 おっと。


「はい、何でしょう?」


「まず、これは本当にマリーナ様がお作りに?」


「そうですよ?材料から買って作りました」


「材料はまぁ普通の布みたいなのでそこはいいんですが…もう一つ質問です。同じものを複数作れますか?」


 ……ヴェントゥスさんが言いたい事は分かる。何に使いたいかもね。


「…作れるには、作れます。ですが、もし作るとするならヴェントゥスさんの分のみです」


 マジックポーチはとても高価なものだ。それ故に持つ人はそれ相応の()()を要求される。もしマジックポーチを盗む為に襲われたとしても、返り討ちに出来るように。

 ヴェントゥスさんが持たせたいのは、この治療院で働く人だろう。重さがあるポーション類を持ち歩くには、これほど便利な物は無いから。けれど……ここで働く人達にはとても貴重で…同時に、とても危険な代物だ。だから私は、渡したくはない。

 ちなみにレジーナさんには私の鱗を持たせているので、守護の効果があるから持たせても問題は無い。それに渡す予定だったマジックポーチは、レジーナさんしか使えないようにしてあるしね。


「……そうですね。すいません」


 どうやら私が断った理由に気付いたようだ。いや、元から断られると分かって聞いてきた?まぁ、どっちでもいいか。


「いえ。それでどうします?」


 どうする、とは、ヴェントゥスさんのマジックポーチを作るかどうかってこと。


「…お願いしても?」


「もちろん」


 とはいえどうしよっかなぁ〜…やっぱり大きい方が…


『自重』


 は、はーい…


「え、えぇっと…」


 おっと。レジーナさんをすっかり置いてきぼりにしてしまっていた。


「勝手に個人の話を進めてすいませんでした。このマジックポーチは肌身離さず持っていてください」


 ヴェントゥスさんがレジーナさんに私のマジックポーチを手渡す。けれど、レジーナさんは貰いあぐねているようだ。まぁ無理もない、か。


「貰っておいて損はありませんよ。というか、マリーナ様は意見を曲げませんので、受け取る他ないかと」


「……ヴェントゥスさんの私に対する評価について」


「正当な評価だと思いますよ?」


『正当な評価かと』


 うぐっ…なんでサーニャさんとハクの2人まで同時に言うのよぉ…


 レジーナさんはヴェントゥスさんからの言葉が決め手となったのか、マジックポーチをおずおずと受け取った。


「……すいません、こんな物まで」


「レジーナさんが謝ることじゃないですよ。これは私のお節介ですから」


「…ありがとう、ございます。働く場所を紹介して下さっただけでなく、こんな高価なものまで」


「あくまで私は、紹介できるから紹介しただけに過ぎないですよ」


 レジーナさんがもし別の職を望んでいたなら、私にツテはなかった。冒険者ギルドでひとまずの雑用依頼を探すか、商業ギルドで募集されている職を探すかしかなかっただろう。今回は、運が良かっただけだ。


「それで、どうしましょうか。一緒に服などを買うつもりでしたけど…」


 お金を渡したのだから、私が付いていく必要性が無くなってしまった気がする。私自身服は必要ないしね。まぁ一応買いたいもの…というより、見たいものがあるのは事実だけれど。


「あ、なら私がレジーナさんと共にお買い物をしてもいいですか?」


「サーニャさんが?」


「はい。個人的に買いたいものがありますし、マリーナ様はどうやら別の用事がありそうですから」


 ……なんでバレた。確かに私一人で行きたいなぁとは思ってたけど。


「私一人では少し心細いので……レジーナさんさえ宜しければ、一緒にお買い物、行きませんか?」


 サーニャさんがレジーナさんに小首を傾げながら問いかける。可愛い。


「え、えっと…ご迷惑でないのなら、ぜひ」


 その返事を聞いて、サーニャさんが笑顔を浮かべた。目福…じゃなくて、せっかくサーニャさんが私を1人にしてくれたから、前々から行こうと思ってたとこ行こっと。


「では私は御三方が出かけていらっしゃる間に、諸々の処理をしておきますね」


 確かに色々と院長としての仕事があるよね。今回の場合はレジーナさんのここで働く為の書類とかかな。あぁ、それ以外にも治療院の諸々とかもあるのかな。


「すいません、お願いします」


 私は手伝えないからね。なんと言うか、ヴェントゥスさんの仕事を増やしてしまっただけな気が……


「構いませんよ、マリーナ様。これが私の仕事であり、何より、マリーナ様からの御依頼ですから」


 ニッコリと笑顔を浮かべてサラリと言う。

 ヴェントゥスさん、カッコイイです……















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