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話し合い

遅れて本当にすいません……

 食事を取りいくと、もう既にスーさんは忙しそうに働いていた。


「あっ!おはよう、マリーナちゃん」


 それでも、私を見つけると朝の挨拶を交わしてくれた。


「おはようございます。朝食もらってもいいですか?3人分」


「いいけど…3人?」


 配膳をしながらスーさんが首を傾げる。


「はい。とりあえずその話は後ででもいいですか?」


 今は忙しそうだからね。人が増えたこととかは後で話した方がいいだろう。


「分かったわ。じゃあ厨房で貰ってきて。そっちのほうが、部屋に持っていくなら早いから」


「はい」


 言われた通り厨房へ。するとスーさんのお父さんの他にもう1人の姿があった。…間違いない。スーさんのお母さんだ。どうやらもう立って仕事出来るほどに回復したらしい。よかったよかった。


「おはようございます!」


 厨房の音で掻き消されてしまう為、大きめの声で話しかける。


「あ?…おう、おはようさん。朝食か?」


「はい。今日は3人分お願いします」


「3人?まぁいいが…」


「あなた、この子は?」


 あ、そっか。そう言えば目を覚ましてから会うのは初めてだね。


「どうも。マリーナと言います。この宿に泊まらせてもらっています」


「あらそうだったの。マリーナちゃんね。部屋で食べるの?」


「はい。なので貰いにきました」


「ありがとね。そうやって来てもらった方がこちらとしては楽だから有難いわ。でも…3人分も持って行ける?」


 まぁ、心配するのも無理はないよねぇ…子供だし。


「大丈夫です。こう見えて力ありますし」


「…まぁそう言うなら」


 ちょっと心配そうな眼差しを向けてくるけれど、気持ちだけ受け取っておく。


「おーい!出来たぞ、持ってけ」


「はい、ありがとうございます」


 朝食が載ったお盆を2枚受け取る。今日の朝食はパンとスープ。サラダといったシンプルなもの。でも朝食なんだから、これくらいで十分だろう。

 もしレジーナさんが足りないのなら、私の分をあげればいいし。


「ほ、本当に大丈夫?」


「大丈夫です」


 はらはらとスーさんのお母さんが心配してくる。

 ……なんだか、孫を見る目に見えたのはきっと気のせいだ。うん。


 厨房を後にして部屋へと戻ってくる。両手が塞がってしまっている為、部屋にいるサーニャさんを呼んで開けてもらった。


「すいません…」


 部屋に入ってから、サーニャさんが謝り出した。恐らく、私の手伝いをしなかったことに対してだろう。


「私がレジーナさんと話していて下さいとお願いしたんです。謝る必要はありませんよ。それより冷える前に食べちゃいましょう」


「…分かりました」


「レジーナさんは食べられそうですか?」


「あ、えぇっと…はい」


「じゃあ、頂きましょう」


 椅子は2つしか無かったので、テーブルをベッド脇まで寄せてベッドをイス代わりに使う。



「……美味しい」


 1口スープを口にしてレジーナさんが思わずといったように呟いた。


「それは良かったです。足りなければ私の分をあげましょうか?」


「い、いえ…大丈夫です」


「遠慮はしないでいいですよ?基本私は食事が要らない体ですし」


 便利なような、不便なような体だけどね。

 なんでわざわざ私がそんなことを伝えたのかというと…【真偽の問】の効果で、レジーナさんの返答が偽だと分かったからだ。常時発動型だから、これも便利なような不便なような能力だったりする。


「え……そう、なんですか?」


「はい。食事は一種の娯楽の様なものです。なので足りなければあげますよ」


「…じゃあ、貰っても?」


「はい、どうぞ」


 朝食を差し出し、私はプレナを呼び出した。あれから労ってなかったしね。


 《……主様、忘れてた訳じゃないよね?》


「……もちろんだよ」


 否である。いや本当にごめんなさい…

 とりあえず労いと誤魔化しの意を込めて頭を撫でる。


 《……まぁ、いいやぁ》


 瞳がとろんとして、(ほう)けた表情になる。ふぅ…何とか誤魔化せたっぽい。





「…ありがとう、ございました。食事まで」


 綺麗に食事を完食して、レジーナさんが感謝の言葉を口にする。


「別に構いませんよ。…食事を終えて直ぐですいませんが、レジーナさんと話さないといけないことがありますね」


「私の、こと?」


「はい。これからの事についてです」


 これからレジーナさんが何処へ向かい、何をするのか。それを話し合っておかないと。

 とりあえず、何をするのかは行ってから考えても遅くないので、今話すべきは何処へ向かうかだ。


「……村には、戻れません」


 俯き、レジーナさんがそう言う。まぁその返答は予想していた。


「では、レジーナさんは何が出来ますか?何をしたいかでもいいです」


「……したいことは特にないです。けど…職業が治癒師なので、治癒魔法は得意です」


 治癒師……治癒魔法……


「……マリーナ様、いい所があるのでは無いですか?」


「……そうですね。繋がりもありますし、信頼もできますね。()()()なら」


「え……どこですか…?」


「まぁ、行けば分かります。でもその前に…」


 私は無限収納庫(インベントリ)から自分の鱗を取り出し、ある効果を付与する。

 そしてそれに小さな穴を開けて紐を通し、レジーナさんへと手渡した。


「これは……?」


「隠蔽の効果を付与したものです。それで、隠したいものを隠してください」


「っ!?……やっぱり、隠した方がいいですか」


「そうそう勝手に見られることは無いかと思いますが、念の為です」


 隠すべきもの。それは…ステータス上の称号。追放者と元魔族。


『神龍に救われた者はいいのですか?』


 …確かにそれも隠した方がいいか。というか、称号全部隠した方がいいかな。


「…ところで、その…」


「はい?なんでしょうか」


「……神龍に救われた者って、どういうことですか?」


 ……あっ。





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