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記憶とこれから

本当に遅れてすいません…最近忙しすぎて…なんとか頑張ります。

 本当にそれはいきなりだった。

 いつものように過ごしていたはずだった。それなのに……




「ちょっと!どうしたのよその翼!?」

「え…?」


 いきなり友達にそう話しかけられた。


「翼が、どうかしたの?」


 そう言いながら、私は振り返って自身の翼を見る。


「え……」


 そこには確かに私の翼があった。あったけれど……真っ白だった翼は、少し黒ずんでいた。


「なんで…」

「汚れ?洗ってきたら?」

「……うん」


 家に帰り、とりあえず洗ってみる。

 ……けれど、いくら洗っても色が元に戻ることはなかった。


「どうして…」


 今度は魔法のクリーンを使ってみる。けれど、それでも翼は黒ずんだまま。

 ……そこから、私の日々は一変した。


「気持ち悪いからこないでよ」


 友達からも、親からも。そんなことを言われ始めた。

 なんで…?私は、何か悪いことしたの…?


 日に日に翼は黒ずみ、それと同時に私の心は腐敗していった。


 ……しかし、さらに追い打ちをかけるように、私の体に異変が起きていく。

 翼だけではなく、皮膚にも黒い斑点のようなものが現れ始めたのだ。


「なんでよ…」


 どれだけ経っても変わらず、逆に酷くなっていく。

 私を見る目が怖くて、部屋に閉じこもった。

 あらゆる病気の本を読み、原因を探した。

 ……でも、どこにもその答えは載っていなかった。





「バケモノめっ!」

「痛っ!?」


 そうして更に日が経ち、私の体の殆どは黒く変色してしまった。その結果さらに気味悪がられ、外に出れば石を投げられるようになった。

 ……もう。なんかどうでも良くなってきた。こんな奴らなんか。


 ─ソレデイイ


 ─コワシテシマエ


 そんな声が聞こえるようになった。その声に従えば楽になれる……そんな気がしたけれど、同時に怖かった。いや、まだ望んでいたのかもしれない。

 ……いつか治ると。いつか元の日々に戻ると。




「出ていけっ!」

「きゃっ!」


 しかし、そんな希望はいとも簡単に消え去った。

 ある日突然ロープで縛られ、私は森へと連れていかれた。そこで乱暴に投げられ、掛けられた言葉。

 ……もう、味方なんてどこにもいない。


「…どうしよう」


 たった1人で森に置き去りにされた。孤独。何がいるかも分からない。そんな状況から、気持ちがどんどん不安になっていく。

 ……そして、そんな私に話しかける声があった。


 ─チカラガホシイカ?


「力…」


 私は、そこまで強い魔法が使える訳じゃない。だから、もし何かに襲われた場合対処は難しい。

 ………欲しい。だから、そう、望んでしまった。


 ─ナラバ、ヤロウ


「…っ!?」


 その言葉が聞こえた直後…私の周りの木々が枯れ始めた。

 しかもそれだけではなく、地面までもが黒くなり始める。


「嫌っ!?なんでっ!」


 私はその場から駆け出す。けれど、私が通った場所が次々に黒く変色していく。


「なんで…っ!」


 森を走っていると、突然目の前に魔物が現れた。大きな体に鋭い牙。フォレストウルフ。しかも一体だけではない。群れだ。


「い、いや…」


 足を止めて後ずさる。しかし、フォレストウルフはジリジリとその距離を詰めてくる。


 ……しかし、フォレストウルフが黒い地面を踏んだ瞬間、苦しそうにもがき出す。


「え…」


 私はその光景をただ見つめるしか出来なかった。

 次第に落ち着いてきたのか、フォレストウルフが動きを止める。その体毛は、地面のように黒く変色していた。


 ワォォォォン!!


「きゃっ」


 フォレストウルフがいきなり遠吠えをした為、思わず尻もちを着く。


「なにが……」


 フォレストウルフは、一向に私を襲おうとしない。それどころか、私に対して頭を下げているかのように見える。

 それはまるで………そう。服従するかのように。


「…っ」


 私は混乱して何も喋れなかった。今、このフォレストウルフは、私の手下。そう感覚として理解したから。


「…あっちいって!」


 辛うじて声を絞り出す。するとフォレストウルフは、私の言葉に従うように…否、従ってその場から居なくなった。


「…コレが」


 力。わたしの、力。

 恐れるものがない。そう思うと同時に……私自身に恐怖が襲う。

 私は、一体どうなってしまったのだろう、と……


「あぐっ!?」


 そう思っていると、いきなり体に激痛が走った。

 見ると身体中から黒いモヤのようなものが出てきている。


「なに、これ…いっ!?」


 黒いモヤが、私の体を。私の意識を蝕んでいくのが分かる。

 必死に抵抗しても無駄。どんどん私の意識は蝕まれ…















「……っ!はぁ、はぁ……」


 意識が覚醒し、飛び起きた。胸に手を当て、荒い呼吸を落ち着かせる。


「……あ、れ?わたし…」


 起きた私が居たのは、部屋の中。ふかふかなベットの上。


「ここは……」


「うぅん……あ、起きましたか」


 いきなり声が聞こえ、ビクッと体が跳ねる。


「あ、ごめんなさい……えっと、おはようございます?」


「お、おはよう、ございます…」


 小首を傾げながらそう朝の挨拶を交わしてきたのは、小さな女の子だった。顔は整っていて、とても可愛い。でも、どこかで聞いたことがある声…


「…現状が、分かりますか?」


「私、わたしは……」


 ……そうだ。思い出した。この声を。私を、暗闇から救い出してくれた声。


「とりあえず体調は大丈夫そうですね」


 体にも触れていないのに、そう少女が呟く。


「あ、あの…」


「はい?…あぁ、私はマリーナと言います。好きなように呼んでください」


「あ、はい……えっと、ここは」


「ここは私が泊まっている宿です。朝食は食べられそうですか?」


 その直後、私のお腹が声を上げた。顔が一気に赤く、熱くなるのを感じる。恥ずかしいぃ……


「ふふっ。じゃあ待っててくださいね。朝食取ってきます」


「…すいません」


 起きたはいいが、私の体は思うように動きそうにない。少女…いや、マリーナさんには申し訳ないと思いつつも、食事を頼んだ。


「謝ることじゃないです。サーニャさんも起きてください。私は朝食取ってきますから」


「…ふぁい」


 目を擦りながら、マリーナさんと同じベットで寝ていた人物が起き上がる。サーニャさんと言うらしい。


「2人で話でもしててくださいね」


 そう言ってマリーナさんは部屋を出ていった。

 …………話すって、何話せばいいんだろう。

















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― 新着の感想 ―
[一言]  それこそ治療院には行かなかったのかな?原因は分からなくても入院出来なかったのが不思議。黒くなる以外は健康上問題なかったとかで追い出されたとか?  病気の様な症状が出る呪詛と出ない呪詛があ…
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