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信じることは


 ……ここはどこだろうか。

 真っ暗なような…白いような。よく分からない空間。でもここは……そうだ。前に来たことがある。前にグランパパに会った夢の中によく似ている。


「ここは……っ!」


 風景が次々に流れていく。

 時には森の中。

 時には空の上。

 時には村。

 時には……


「これは……記憶、か」


 そうだ。これは記憶だ。恐らく……天人族(あまびとぞく)のもの。

 楽しげな記憶。嬉しい記憶。そして……


「……絶望」


 嘲笑。蔑み。裏切り。


「……誰も、助けてはくれなかった」


 ()()は助けが欲しかった。変わりゆく自分を救って欲しくて。

 でも誰一人、助けてはくれなかった。皆恐れ、皆裏切り、皆逃げた。


「……だから、呑まれた」


 絶望に。怒りに。悲しみに。



『……ダレ』


 突然記憶が途切れ、真っ暗な空間へと変化する。そして、微かに声が聞こえた。


『……ダレ』


「あなたを助けに来たの」


『……ミンナソウ』


『ダレモ、ソウ』


『タスケナンテ、クレナイ』


「そんなことない。本当に助けに来たんだよ」


『ウソダ!!』


 口調が突然強くなる。その声は……彼女の気持ち全てを物語っているような気がした。

 信じたくて。でも裏切られて。だから信じられなくて。


「……大丈夫。あなただって、本当は分かっているんでしょう?」


『…………』


 本当は分かっているはずだ。……信じることが出来る人だっているってことを。

 でも彼女の絶望は根深い。そのことを、信じることが出来ない。


「……おいで」


 だから知って欲しいんだ。もう一度。


「……信じて」


 信じてもらえることの、喜びを。


『…………ウソダ』


「本当だよ」


 暗闇にモヤが多くなり、私の体を包む。しかし、私から生まれる光に当てられ、消滅していく。覇気の効果だ。


「…照らすから」


 あなたの事を。


「…護るから」


 どんなことがあっても。


「…助けるから」


 絶望の淵から。


「…おいで」


『………』


 暗闇に1つの小さな光の粒が零れ落ちた。


『…ホント?』


「本当」


『…シンジテ、イイノ?』


「信じて、欲しいな」


 ふよふよと不安げに、それでも確実に私のほうへと近付いてくる。


「あなたの願い。気持ち。望み。それは、何?」


『……タスケテ。ワタシヲ…!』


「…よく、言えました」


 ギュッと優しく、それでも強く、小さくとも胸に抱きしめる。すると、私の周りから黒いモヤが晴れ始め、白いような空間へと変わっていった。


「さぁ、帰ろう」


 私は残った暗闇に向け、刀を振るった。














「……戻ってきたね」


 閉じていた目を開けると、確かにさっきまでいた森の中に立っていた。もう、あの化け物の姿はない。

 ………いや、化け物()()()存在はいた。


「うぅ…」


 真っ白な翼を背に持つ、綺麗な女性が横たわっていた。間違いない。彼女だ。


「まさか本当に助けられるとは……」


 物凄く確証のない賭けだったからね。正直、救えなければそのまま倒していた。そのほうが、彼女にとっても幸せだっただろうから。


「まぁ、その判断はできる限りしたくはなかったけどね…」


 呑まれた存在とはいえ、人だ。しかも野盗とかではなく、普通の人。前世の感覚が残っている身からすれば、それは避けたい。

 え、野盗も人なのにどうなんだって?あれは人じゃないと思ってるから。人の言葉を話す獣だ。だから躊躇などない。


「……とりあえず」


 女性の傍により、状態を確認する。


 ┠ステータス┨────────────────


 名前:レジーナ・シュテルグ

 種族:天人族

 年齢:18

 レベル:76

 職業:治癒師

 ステータス:魔力 28840 HP 5680(弱体化:2000)

 魔法:治癒Ⅷ 風属性Ⅷ 水属性Ⅴ 光属性Ⅴ 

 ユニークスキル:天人の護り

 スキル:魔力制御Ⅴ 魔力操作Ⅴ 飛翔Ⅴ 料理Ⅳ 索敵Ⅲ 状態異常耐性Ⅲ

 称号:天空ノ愛子 追放者 元魔族 神龍に救われた者 



 ────────────────────────


 …………うーんとね。色々と突っ込みたいとこはあるんだけど、とりあえず体調は大丈夫そうだね。弱体化とか書かれているけど、大して問題は無いだろう。

 問題は称号のとこだ。


 天空ノ愛子:天空(そら)に愛された者。天空を翔ける時、気候に恵まれる。


 …愛子とか書いてるからなんだろうと思って身構えたけど、大した効果はなかった。


 追放者:街、村、群れから追放された者。


 …多分、呪詛に侵された時に取った称号だろう。となると、彼女が帰るところはもう……。


 元魔族:魔族から他の種族へと変化した、本来ならば有り得ない存在。


 …やっぱり前例がないんだね。でも呪詛に侵されると魔族化するのか…


 神龍に救われた者:神龍に命、またはココロを救われた者。神龍と弱いながらも繋がりを持っている。


 …ちょっと後半は初耳だなぁ?


『契約に近いものが行われましたからね』


 …なるほど。でも盟約ほど強いものではないのね。名前も呼んでないから。


「はぁ…まぁ、これからのことを考えれば、良かったのかな」


 彼女はこれから先、どこへ向かうのか。それは私には分からないし、決められない。彼女自身が決めることだ。助けた以上、手助けはするつもりだけどね。そのときこれがあれば理由になるし。


「うぅ………あ、れ?ここは……」


「目が覚めましたか?」


 女性…レジーナさんが目を開けるが、その顔には困惑の色が見えた。記憶が混乱しているのだろう。


「私…何して……あなたは……」


「あなたの…レジーナさんの味方ですよ」


「私の名前……それにその声……」


「今は、ゆっくり休んでください」


 このまま混乱させるのは不味いので、ひとまず眠ってもらう。

 ………宿に直接転移するか。後で私だけ門から入り直そう。










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― 新着の感想 ―
[一言]  魔族は呪詛で増えるのか~(*・`o´・*)ホー  聖女は解呪出来るのかな?出来ない場合は仲間が魔族化したらバッサリ殺るしかなくなる(/´△`\)  初期なら解呪出来るか?
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