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呪いの権化との戦い

 ひとまずサーニャさんにはここから離れてもらう。結界があっても心配だからね。


「お気を付けて…!」


「もちろんです」


 サーニャさんのことを転移することはできない。転移した先に何がいるか分かったもんじゃないからだ。なので走って離れてもらった。


 さて。やろうか。

 まず無限収納庫(インベントリ)から刀を取り出す。化け物とはいえ人型だから切るのはちょっと抵抗があるなぁ……


 刀を抜いて構えると、化け物の手にモヤが集まり始めた。


「何をする気…?」


 油断なく構えていると、そのモヤがある形を成していく。

 八本ある手にそれぞれ、斧。槍。盾。弓。剣。メイス。ハンマー。ハルバード。

 ………ちょっと多くないかな?それ全部使うの?


「だよねっ!」


 ハルバードを縦に振るってきたので、横っ飛びで躱す。するとハルバードが地面に衝突し、小さなクレーターが出来た。


「ひぇ…」


 あれが当たったらどうなるんだろう……イレギュラーな存在だから、防御しきれるかどうか分からない。まぁ、当たらないに越したことはないか。


「今度はこっちからっ!」


 魔力で空中に足場を創り、その上を駆け上がって上から斬りかかる。


 ガギンッ!


「ちっ!」


 重々しい音が響く。盾で防御された。

 その状態から槍で突こうとしてきたので、盾を刀で押した反動で離脱。地面に降り立つとすぐさま次の攻撃がきた。

 ……槍の投擲。


「投げるのあり!?」


 まさか投げてくるとは思わなかったので驚いたけれども、何とか躱す。

 槍はそのまま地面へと突き刺さり、そこから地面が変色し始めた。


「…あまり状況は芳しくないなぁ」


 正直、浄化に回す余力はない。神力による結界を、私とサーニャさんに展開しているからだ。けれど、このまま放置する訳にもいかない。


 〘マリーナ様!〙


 突然、サーニャさんの声が聞こえた。どこから…?


 〘今風の声(ウィスパーウインド)で声を届けています!〙


 あぁ…そういえぱそんな魔法あったなぁ。


 〘十分に離れましたから、結界を解除してもらって構いません!〙


 ………この申し出は有難い。けれど、サーニャさんが私のために嘘をついてるって可能性がある。


 〘それは本当ですか?〙


 だから同じ魔法を行使し、真偽を確かめる。


 〘……本当です〙


 ……はぁ。


 〘分かりました。じゃあ()()()()()()ください〙


 実はハクから教えてもらった神龍の力の中に、【真偽ノ問】というものがある。私の問いかけに対しての返答の真偽を判別する力。一応神の代行者だからね。嘘を見破る能力を持っている。

 そして先程のサーニャさんの返答は……偽。つまり、サーニャさんはここからそう離れていないということだ。


 〘で、でもっ!〙


 〘でもじゃない、です!〙


 またしても槍を創り出して投擲してきたので、後ろ飛びで躱す。また、地面が黒く染まる。


 〘サーニャさんの身の安全が第一です!〙


 〘…あなた様はいつもそうです。自分のことを、全く考えない〙


 〘…お叱りは、後で受けますよ〙


 〘…絶対ですからねっ!〙


 そこで魔法が終わったのが分かった。

 ……絶対無事に帰らないといけない理由が出来ちゃったなぁ。


「さて。ちょっと試そうか」


 刀に魔力を注ぐ。すると、刀の金色の波紋が煌めきだした。綺麗…だけど、これじゃあだめだ。今度は神力を注ぐ。すると波紋がまるで波のように揺らめきだした。

 ……別にこんなとこ凝らなくてよかったんだよ、()()()()()


 今更だけど、イシュワーム様の呼び方はイシュにぃになった。グランパパによると、密かに喜んでいたらしい。

 閑話休題。


 魔力を足に集中し、一気に踏み込む。先程との違いに本能で気付いたのか、必死に攻撃してくる。


「はぁぁ!」


 化け物が振るってきた剣と刀が衝突し、激しい火花が散る。

 ……しかし、その直後、剣が()()()


「まだまだぁ!」


 そのままの勢いで、剣を持っていた手を肘の部分から切り飛ばす。


 ギャァァァァァァ!!


 痛覚があるのか、叫び声を上げる。しかし、切り口から血は出ず、代わりに黒いモヤが立ち上っていた。そしてそのモヤが切り飛ばされた手と同じものを形作る。


 メイスで殴りかかってきたので、さすがに躱す。地面に衝突したタイミングで手首を切り飛ばせはしたけど、やっぱりすぐに元通り。


 ……さっきも今も、切った感触はあまりなかった。つまりモヤで出来た見せかけの体?となると本体がいるはず。それを倒さないと無理か……。


「ジリ貧だなぁ…」


 神力を流すことで武器を切ることは出来る。でも、それもすぐに元通り。

 私が言えたもんじゃないけど、ほんとチートだなぁ……


「…どうしようかなぁ」


 弓から黒い矢が飛んできたので、刀で切る。すると、真っ二つになった矢が刀に吸い込まれるようにして消えていった。


「……突破口はそれしかない、か」


 刀が黒いモヤを吸収できるのなら、弱体化に繋がるかもしれない。今は、それに賭けるしかない。


「やるか」


 一旦距離を取ってから、一気に近付く。

 弓が連射されたので、飛んできた矢全てを切って弾いていく。おそらく地面に刺さればまた変色してしまうからだ。


 ………だから、気付くのに遅れた。遅れてしまった。

 

 ───真上から迫る、ハンマーとメイスの攻撃に。




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