第一章☆美咲
第一章☆美咲
お葬式の後、形見分けがあった。
「お祖母ちゃん、見た目は質素だったけど、宝石とかごろごろ持ってたんよ」
よしこ叔母ちゃんが美咲に言う。
まだ子どもの美咲には、宝石の価値はまだよくわからない。
「私、これ!絶対これ!」
よしこ叔母ちゃんは目の色変えて大きなルビーの指輪を手にとった。
「よしこは欲張りだなぁ」
圭一叔父さんが呆れて言った。
「なによう。いいじゃない」
美咲は宝石箱の中にお花を見つけた。
いや、正確には、花をかたどった宝石の指輪だった。
「あら、かわいいじゃない。美咲ちゃん、それにしたら?」
「うん」
大事そうに美咲は蒼いサファイアの指輪を手のひらに包み込んだ。まだ指にはめるには指輪が大きすぎた。
「お祖母ちゃん、ありがとう。大事にします」
よしこ叔母ちゃんと美咲は並んで、新しい遺影に手を合わせた。
お祖父ちゃんは船乗りだったそうだ。舶来物の調度品が並ぶ古びた家は、家族会議で、しばらくよしこ叔母ちゃんたちが管理することになった。
「あんまり興奮しすぎて鼻血出そうよ」
美咲がよしこ叔母ちゃんを見たのはその時が最後だった。
翌年、よしこ叔母ちゃんは強盗にナイフで刺されて死んだのだ。
紅い血のシミがくだんの指輪を思わせたけれど、あの指輪は盗難にあったまま行方しれずになった。
「よしこは欲に目がくらんだから」
親戚が口々に言った。
美咲はよしこ叔母ちゃんの悪口は言いたくなかった。
忌引で休んでいた中学に翌日から顔を出した。
意地悪な子も特にいないし、水の中のさかなのように学校を泳いでいた。
図書室に行くと鉱物図鑑を開いた。
「神沢さんは石が好きなの?」
本の整理をしながら司書の田中先生が聞いた。
「ええと、私…」
なぜか美咲は咎められたような気がして、本を閉じて棚に戻すと一目散に図書室を逃げ出した。




