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(´・ω・`)


「ゼル、私怒ってる。1日で、こんなに使うなんて、どうかしてる。私が、いくら稼いでも、これでは貯まらない。心を鬼にした。しばらくお小遣い減額!」


 え! 貰えるの?

 レイのお(しか)りに、別の意味で(ふる)えるゼル。


 なんと、お小遣いは、まだ貰えるらしい。女神かな?むしろダメ人間製造器。なんて甘いんだ。

 将来、悪い男にだまされないといいのだが。心配だ。おじさんが、守らねば。

 うん?おじさんが悪い男?ですよね。


 謝ったら、普通に許してくれた。そして、甘やかされた。


 あぁ、ダメ人間になるぅぅぅ。



「ゼル、約束守れる?」


「大丈夫だ。しばらく大金を使う予定は、ない。」


「うん。行ってらっしゃい。」


「あぁ、配達は任せろ。」


 今日も、レイは新鬼神薬の製造に勤しむようだ。昨日のおじさんの無駄遣い分を取り戻すと、目が血走ってる。

 無理させて、ごめん。さて、朝の納品に行ってきます。


「私が駄目なゼルの分まで、頑張る。」


 レイは、メンズにハマる素質があった。


 さわやかな陽射ひざし。心が痛い。あのお金は、無駄にしないから。と心に誓う。



 ガチャンと、新鬼神薬のポーションびんが入った箱を、カウンターに置く。


「ジーニャ、納品だ。」


「あら、レイは?」


「稼ぎ時だからな、頑張ってる。」


「そりゃま、ご愁傷しゅうしょうさま。10,20,30,40,50,60,70。70本ね。」


 新しい数え方をマスターしたんだぞ、凄いだろ?と、どや顔で、こっちを見てくるジーニャさん。いや、小学生でも出来るから。


「うん、うん。凄いねぇ。」


 褒められたと素直に受け取ったらしく。照れている。美人だなぁ。何時ものように、空瓶入あきびんいりの箱を出してくれたので、受け取ると、みょうなお願いをされた。


「そーだ、ゼルさん。ゴミ掃除やってくんない?裏通うらどおりの、ねーやってよ。」


「ふむ。一考いっこうしよう。」



 ふむ、裏通りを通った方が近いし、それなら、掃除するのもいいかもしれない。そう考えると、なんで昨日、レイは遠回りしたんだ。今度、近道を教えてやるか。

 そうだ、ゴミの量で、掃除の段取りが変わるから事前確認のついでに、裏通りを歩いて帰るとしますか。これは、社会奉仕の心だ。

 ゴミ掃除した後は、ジーニャさんに、ゼルさん頼りになる。とか言われちゃったりして、ぐへへ。鼻の下を伸ばした、こんな気持ち悪い着ぐるみおじさんには、天罰が下るであろう。


 言葉が足らず、勘違いするのは、良くある話だ。ジーニャさんの言っていたゴミは、道に落ちてるゴミじゃないと気付くのに、そう時間はかからなかった。


 ゼルは、後悔する。壁の落書き、ギャングのマーク、違法薬物の注射器のゴミ。途中で、気付く予兆は幾つかあったはずだ。それもこれも、ジーニャさんが、美人なのがいけない。誘惑に負けた。


 つまり、今。裏通りで、ニタニタと笑う3人組の若い男にからまれている。ゼルは、ジーニャに好かれたいという下心のあまり、不用心にも、裏通りの危険な場所に、のこのこ1人で近づいたのだった。


「おいおい、待ちなよ。今話題の着ぐるみのおっさん。通行料、ここを通るなら、通行料がいるぜ。」


 もしかして、ジーニャさんに頼まれたゴミ掃除って、クソ野郎共を片付けろって事か?確かにじょう、強キャラを演じているが、おじさんには、無理なワケで。


「そうか、それは知らなかった。別の道を通るとしよう。」


「分かれば、いいんだ。」


 くるりと反転し、すたすたと歩き出すゼル。しかし、クソ野郎というものは、いつもれている。そして、弱者を複数で囲む。卑怯だが、戦術としては有効だ。この戦術は、動物の狩りのスタイルだ。彼達は、動物なのだ。人間の言葉は通じない。


 正直、関わりたくない。しかし、思ったより、バカそうだ。このまま、逃げきれるか?


「待、待て、おっさん!」


「ちっ」


 スルー作戦に気づかれて、息を切らせて走ってきた。囲まれる。こんな事で、息切れするとはたいした相手ではないが、おじさんよりは、確実に強い。おまけに、両手は、ポーションの空瓶の箱を抱えてふさがっている。

 不運だ。どこかの説教フラグ建築士に教えてやりたい。不運とは、こういう事を言うんだと。商品を納品した後なのが、せめてもの救いか。財布には、わずかなお金が入ってる。これくらいなら惜しくない。


「あぁ!今、舌打ちしたな。俺等の事、めてるだろ!おっさんが、くそ弱いって事は、話題になってんだ。昨日、初級魔法を習いに行ったらしいな。しかも、有り得ない事に、発動すらしなかったとな。あひゃ、そんなヤツ、初めて聞いた。雑魚ざこすぎる。」


「着ぐるみを着ているが、別人かもしれないだろう。」


 着ぐるみを着た初級魔法すら使えないおじさん。有名になるってつらいな。どう見てもファンじゃ無さそうだ。誤魔化ごまかせないかな。


「そんなイカれた格好の野郎は、他にいねぇよ。俺等おれたちは中級魔法まで使える。それにな、どんな嘘ついてもわかかるんだよ。な、バルカンさん。」


「ふっ、バレてしまったか。聞いて驚け、俺の前で嘘はつけない。念のため、嘘発見(サーチライ)!バルカンが確定かくていする、間違いなく本人だ。」


 なにがバレてしまったかだ。ウザすぎる。バルカンのピクピクと動く熊耳がウザさを倍増する。男のケモミミに、需要は無いはずだ。

 ただ、ゼルのついた嘘は、100%嘘だと確定した。ハッタリの効く相手では無い。


「だから、どうした?」


「てめぇ、調子に乗んなよ。」


 胸ぐらをつかまれ、おどされた。前の世界なら、びびって金を払ってた。だけどな、おじさんは変わったんだ。


「スタン!」


「ぐふぅ。」


 良くしゃべる若い男が、身体にまとった電撃に感電し、沈む。さすが、威力いりょくだけは初級最強の魔法だ。やっちまった。もうお互いに後には引けない。生まれて初めて人を攻撃した。

 高電圧(スタン)は、相手に触れている状態でないと意味が無いため、実戦で、当てるのは難しいとされている。だが、相手から触ってくるなら、話は違う。この世界では、有用性が理解されていないが、日本人ならスタンガンの用途ぐらい知っている。

 さて、これで1対2だ。おっと、警戒されて距離を取られた。遠距離から魔法攻撃か。しかもおじさんはさっきから、両手が塞がっているのに。そして、恐怖で身体がすくんで、動けないというのに。


「スタンが使えるだと?うわさとは違うぞ。だが、逃がさねぇ。仲間の落とし前は、つけてもらう。」


「何を勘違かんちがいしている。」


「今さら誤魔化ごまかす気か?無駄だ。このバルカンの前で嘘はつけない。そうだ!思い出した、特別授業を受けたらしいな。つまり、ずるい方法があるんだろ。言え、スタンは、どうやって習得しゅうとくした?言いたくなるまで、いたぶってやる。」


 かんの良いゴミだ。こんなゴミに、正直に強くなるネタを教えてやる義理なんて無い。


 しかし、このバルカンは、嘘が分かるらしい。誤魔化すのは、無理だ。普通なら、この後は、ネタばらしするまで、一方的に殴られる。ゼルからの魔法は、当たらない。そして、定期的に金まで搾取さくしゅされる関係になるだろう。戦力差は、それが出来るだけ、かけ離れている。


 だけど、こいつは、バカだ。おじさん、喧嘩けんかでは勝てないが、人生経験なら勝負できる。身体は、恐怖で動かないが、口ぐらいなら動く。

 うそが分かる。はっ!それが、どうした若造(わかぞう)よ。嘘をつかなければ、いいだけだろ?


 簡単だ。


「繰り返すぞ、何を勘違いしている。ワレは、特級魔法が使える。確かめてみろ。」


「いいだろう、命乞いのちごいか?これまた、とんでもない事を言い出したな。あえて使ってやろう。嘘発見(サーチライ)!な、何だとっ!本当だ。本当に、特級魔法が使えるだと。どうなってんだ。ちくしょう、ハメられた!うわさを流したヤツをぶっ殺してやる。」


 バルカンは、ゼルが嘘を言っていない事を確認して、青ざめる。なまじ、自分で確認しただけに、簡単にわなにはまる。

 この瞬間、一気に狩る側と狩られる側が、逆転した。ように見えた。実際には、特級ゴミ魔法ランク第1位の脳内電話回答(テレフォン)が使えるだけなので、勘違いなのだが。


あわれだな、噂を信じたか。そういえば、今朝、ギルドから、ここの掃除を頼まれたんだったかな。」


「た、頼む、見逃してくれ。もう、この場所には近づかない。俺達は、そこまで、あくどい事は、やってないんだ。」


「そうか。なら、今日は何も無かった。明日も何も無いといいな。」


「あ、ありがとう。」


 さて、道も空けてくれるみたいだし、裏通りを、てくてく歩いて帰りますか。ギリギリの勝利だった。

 3人組の1人は、一言も喋らなかったけど、シャイボーイなのかな。



 そのシャイボーイ、のちの静かなる水使い賢者サイレントは、2人の悪友あくゆうながめていた。


「くそっ!不意打ふいうらわせやがって、なんて汚えおっさんだ!」


「良かった、起きたか。」


「あ、バルカンさん。心配かけまして。かたきはとってくれましたか?あーハラ立つ!許せねぇ。まだ生きてるなら、今度、血を吐くまで殴ってやる。そうだ、あの裏通りに、呼び出しましょう。」


「いや、うわさだまされた。ヤツは、着ぐるみの下に、力を隠していた上級悪魔だ。バルカンは確定する、ラプラスは、特級魔法が使える。俺達は、見逃された。」


「そんな!うわさ出処でどころは、信頼できる。」


「…種明かししよう。」


「おっ、久しぶりに声を聞いた。サイレント。どうした。」


「その黙ってたら、格好良いって勘違いそろそろ、やめろや。ガキの頃は、普通に意味分からない事、話してただろが!」


 サイレントは、2人を手を上げて制し、すたすたと歩き、何かを買って帰ってきた。手には魔法カードを持っている。1番ありふれた初級水魔法カード、1番安いカードだ。同じのが、それも何枚も。

 魔法カードを持ち、深呼吸をして深く集中してから、魔法を唱える。


「…ウォーター」


 呪文が発動し、カードが水浸みずびたしになり、しんなりと折れ曲がった。いたって、普通の現象だ。

 魔法カードは、呪文を唱えると必ず反応する。

 水作成(ウォーター)の場合、習熟度しゅうじゅくど0なられる。習熟度50で水滴がポタポタと落ちる。習熟度100、つまり習得後は、しんなりと折れ曲がる。

 首を傾げる2人。何をしたいのか分からないが、サイレントが変わってるのは昔からだ。しかし、2人とは違う高度な魔法に関する感性を持つ。それを知ってるから、奇行にも何も言わず2人は見守る。次元の高い話は、説明されても2人には分からないのだ。

 そして、分かってもらえない虚しさから、彼は無口になった。ちなみに彼の本名は、サイリュートだが、皆、サイレントと呼ぶ。


「…ウォーター」


 呪文が発動し、カードが水浸しになり、しんなりと折れ曲がる。かれこれ、7回も魔法カードを無駄にした。

 しかし、8回目に、魔力制御の得意なサイレントの目指した現象が起きた。魔法をとなえたのに、変化が起きない。


「つまりは、魔力切れか?」


「くそっ、汚え。だが単純だ。」


 ふるふると首を振り否定するサイレント。

そして唱える。


「…ウォーター」


 呪文が発動し、カードが水浸しになり、しんなりと折れ曲がる。なにか、凄い事が起きたようだ。

 そこまでは、分かる。逆に言うとそこまでしか分からない。2人は考え、そして、いつものように思考を放棄した。サイレントは、沈黙を破り、種明かしをする。


「…魔法カードは、未熟な子供以外なら発動する。つまり、以上の魔法発動実験から究明すると、上級悪魔は、超精密制御を駆使したという結論になる。特級魔法が使えるなら可能だ。恐らくは探求の魔女と渡りをつける為だけに、周囲を欺いた。しかし、2度連続で、発動させないとなると、その精度は恐ろしい。そのため、集団幻覚や、魔力増強の併用をしていた可能性もある。そのように考察すると実に興味深い。これについて2人の意見を伺いたい。」


「そうか、何を言ってるか分からないが、凄いな、上級悪魔。」


「あぁ、何を言ってるか分からないが、殺されなくて良かった。」


「…」


 ゼルのうわさは、過剰かじょうに、上書うわがきされた。


 サイレントは、再び沈黙する。



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