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(´・ω・`)



 赤の森を奪還した!


 レイが歓喜に染まる。溢れ出す涙は、もう誰にも、とめることは出来ない。


「うぁぁ。、ぜぶ、ぜふぅ。」


 もう、言葉にならない。レイは、ひしっとゼルに抱きつき、小さく震えながら泣く。


「良いんだ、レイが頑張ってたのは知っている。朝から晩までポーションばかり作って、少しの外出の時間まで惜しんで、贅沢もせず、毎日不安と戦いながら、新薬を開発して、全部、見てた。全部、見てたから。」


「ぜぶ、ぜふぅ。やったよ。」


 真っ赤に、目を腫らしながら、見つめてくる。甘い空気、あざとさらしさ、そんなものを、全て捨てさった剥き出しの感情。歓喜、不安、達成感、充実感、説明出来ない感情が、ごちゃまぜになって、そこにあった。


 それは、脳裏に焼き付くような美しさ。非実在的な均整のとれた顔、美しい白い肌。さらさらとした銀の髪。長い耳。光を讃えた曇りなき眼。完璧な彼女が織りなす、この表情は、きっと生涯忘れられないであろう。年をとっても、いつでも、目を閉じたら視える。そんな気がする。脳裏に焼き付くとは、そういう事だ。


「あぁ、やったな。」


 くっそ、声がでねぇや。ワンパターンだけど、着ぐるみでモフる、モフる、モフる。そうすると、何時もの、ふにゃけた顔になる。そうだ、それでいい。溜め込みすぎなんだよ。まったく。


「ふにゃ、くすぐったいよ、ゼル。」


 お前は、凄いやレイ。尊敬するぞ。「たまに、おじさんの事を勘違いで、尊敬の目で見てくるが、俺の方が、尊敬してる。レイは、頑張り屋だし頭もいい。いつも凄いやって思ってるんだ。マジで天才だよ。良くやったぞ。」


「ゼ、ゼル。」


 やばっ、心の声が、だだ漏れじゃん。ほっぺたを軽く引っ張って、恥ずかしさを誤魔化す


「い、いひゃい。」


「さて、時間がない、帰るぞ。」


「ん、ん、ん。」


 レイは、ゼルの理不尽な暴力に不機嫌そうな嬉しそうな顔をした。

 レイは、格好良くないのに、格好つけなゼルの格好悪い所を自分だけに見せてくれて嬉しかった。


 さあ、後は帰るだけだ。

 ここの守りは、薄かった。最悪、壁をぶち抜いて、逃げてもいい。ポチョムキンもいるし、死力を尽くして撤退だ。


 ゼルの決意に水をさす、ぱちぱちぱち、と軽く手を叩く音が、部屋に響いた。




 完璧かと思われた計画だが、重大な見落としがあった。


 チュワークが、なぜここまで赤の森に、固執しているのか、相手の立場で物を見るという、基本的な事を、疎かにしていた。

 ゼルは、チュワークを過大評価していたため、曇ったメガネで見てしまったようだが、チュワークは、条件を吊り上げるためだけに、あの手この手を弄していた訳では無い。いや、そういう事をやる男だが、ここまではしない。売る気が、無かったのだ。売れない事情があった。


 実は、赤の森で、勇者協会の肝入り計画が進行中で、売却した事実が、本部にバレたら、粛清されるという危機的な状況に追い込まれていた。


 ゆえに、チュワークは、ガタガタと震える。顔面蒼白になり、手の爪をガジガジとかむ。指まで噛んで血を流すが、気にしない。


 だが、裏社会ではこのような逆境は割とある。見た目に反して回転の早い頭がくるくる回る。レイのように、頭が、良いわけではなく、常識とか倫理とか大事な物が、欠落しているため、少し強い手が打てる。

 地下下水道の王は、立ち直った。



「チュチュチュ、素晴らシイ。実に感動的ダ!」


 血で滲んだ手を叩きながら、チュワークは、熱弁する。


「そうか。」


「さて、そんな、お二人に良い話があるのですガ。」


「興味無いな。用事は済んだので、帰らせて貰おうか。」


 チョロチョロと歩き、部屋の鍵を内側から、かける。内側にまで、鍵がある扉、これが裏社会の部屋だ。


「まあまあ、焦らないデ。今度は、こちらの話を聞いて欲しイ。誤解がないように言うと、赤の森を、貴方達から、取り上げるツモリは無いのデス。」


 簡単に出来上がった密室で、ずる賢く光る盗人の目が光った。


 ゼルは、思い出す。あぁ、そうえば、あまりにどうでもいい事だから忘れていた。人は、不要な情報をリセットしている。人生で脳は、4回程、書き変わるそうだ。

 先程の悪魔討伐で、ちゃっかり、レベルアップしたのは、他にもいた。覚えてる人はいるだろうか、レイ軍が、最高戦力。頼れる孤高のゴーレム、


「ポチョムキンッ!」


 てなわけで、ポチョムキンさん出番です。


「むん。みなぎるニク。」


 ドアノブを掴み、力を入れて回す。たったそれだけだ。


 パキンッ!


 力=正義。呆気なく、ドアの鍵は、矮小なチュワーク王を見限り、筋肉なポチョムキンにひれ伏した。


 口をパクパクするネズミ。さらに、余裕を見せて、精神的に追い込むため、ゆっくりと、雑談する。


「ポチョムキン、なぜか今日は、うっとおしくないな。」


「むん。吾輩、人生経験が数週間なので、分からない事ばかりだ。それに、言語ドライブも、汚染されてるようで、迷惑をかけている。」


「え!そのような理由だったのか、誤解していた。」


「むん。こちらこそ、不快な思いさせていたようで、申し訳無い。まだ感情ドライブも勉強中で、ようやく、10歳児並みだ。言語クリーニングと、精神構築に、2ケ月かかると予想されるが、待って頂けないだろうかニク。」


「ゆっくり、やってくれて構わない。」


「むん。ありがとう。最強の盾となれるよう頑張る。」


 がしっと和解の握手を交わす。これからは、よろしく!




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