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(´・ω・`)


 ぺ、ぺ、ぺ、ぺ、とレーションを吐き続ける魔道具が、なんとも頼もしい。コイツは、今、金を吐いている。


 そういえば、「塩ふき臼」という話が、日本昔話にあった。舟の上から、何でも出てくる魔道具で塩を出したら、その塩の重みで舟が沈んだっていうお話だ。全部、拾おうとするから、沈むのだ。

 おじさんは、人より弱い。つまり、手の平が小さいから、護れるモノはきっと少ない。だからこそ、見失わない。レイの笑顔だけを護る。


「ゼル、こぼれてる。止める?」


「まだだ、まだ、いける。我を信じよ。」


 レーションの運搬は、冒険者に依頼するようになったが、箱詰めだけは、秘密保護の観点から、いまだ手作業でやっている。今、まさに箱詰め作業に従事している所だ。


 箱が重たい。たまに、弾丸のように、吐き出されるレーションが痛い。出て来る場所が安定しないのだ。びしっ、びしっと顔に当たる。くそっ、目をつぶったら、また取りこぼした。

 この仕事は向いていない。ポチョムキン、代わってくれ。カムバーック。

 無限に続く苦役かと思われたが、どうにかミッションを完了した。


 ぺ、ぺ、ぺ、プシューッ


 材料が切れたので、本日は、ここまでだ。はぁ、はぁ、いい戦いだったぞ。まるでドラゴンと戦い、苦心の末に、討伐したかのようなやりきった顔で膝をつくが、レベルは上がらなかった。俺たちの冒険はこれからだ。


「ん。」


「ありがとう、レイ。」


 レイが、飲み水を出してくれた。のどを潤すと、少し力がみなぎる。

 この水は、レイちゃんが、魔法で出してくれているのだ。「美少女ハーフエルフから出る水」この響きだけで、何倍も美味い。なんと、危険な響きだ。みなぎってきたぁぁ。


 ゴーレム戦隊が、心配そうにこちらを見てきた。そうだ、もしかしたら、ジャンク屋に、箱詰め機も眠っているのでは、無いだろうか。そうだ、そうに違いない。

 素晴らしい閃き。しかしながら、疲れきった時の閃きは、だいたいの場合、ただの判断ミスであるので覚えておいて欲しい。


 救いを求める者は、ワラにでもすがるというが、おじさんが、すがったのは、高さ10㌢しかないゴーレムだった。


「ゴーレム戦隊、作って欲しいモノがある。」


 全員で、びしっと決めポーズ。意味が分からないが、付いてきてくれるようだ。


「レイ、借りるぞ。」


「ん。ゼルと、ゴーちゃん、行ってらっしゃい。」


 レイは、微笑む。白く透き通るような肌が美しい。引きこもりな彼女は、お日様のダメージを受けない、完全無欠のもやしっ娘だ。



 やつれた顔の女性がいた。目には隈が出来て、いつもしている化粧も中途半端だ。その足元で、3人の犯罪者が、縛られて転がっていた。後ろに、控えるはマッスルゴーレム、ポチョムキン。


「着ぐるみの人、あのゴーレムなんとかなりません?イライラで、心とお肌が荒れそうです。」


「ふむ。仲良くやっているようで、なによりだな。」


 ジャンク魔道具店で、パートナーの小娘の愚痴を聞き流す。すでに荒れてるよ?なんていう仲間は死んでいった。

 ゴーレム戦隊が、わっと、散り散りに店の奥へと駆け出した。頼りにしているぞ。


「正直、いて欲しくないです。ですが、本当に困った事に、護衛としては、優秀なんです。」


「う、うむ。」


「むーん。吾輩の話とか照れるニク。」


 クソっ、こういうトコロが、無ければいいのだが。暑苦しい。いい素材をふんだんに使い、会話も出来る高い知能を持った、強いゴーレムで、スペックは高いのに、残念すぎる。

 時間をかけて、コレを製作してしまった作者には、少し同情している。


「うわぁぁぁ。」


「頑張ったな、小娘。」


 泣きだす彼女を慰める。少し、優しくなれるかもしれない。


 さて、ゴーレム戦隊と、ジャンクパーツを回収し、ストレスを溜めないうちに、さっさと帰るとするか。可愛い女性が泣いている?残念ながら、この手の平は、小さい、悲しい事にな。


 キョロキョロ探して、ゴーレム戦隊の選んだパーツをゲットしていく。ジャンクなんで基本的には安い。カウンターに、小銭をバラまき、お買い物は終了した。


「き、着ぐるみの人。」


 助けを求める声だ。弱った女性は仕留めるべきだ。しかしながら、おじさんは紳士なので、そういう愚劣な事はしない。


 しかしながら、少し、助けてやるか。ぷるぷると震えてるのを見せられると、さすがに見逃せない。ここは異世界なので、魔法を使えばいいか。例えば、森林空気マイナスイオン

 おっと、これは中級魔法だったので、まだ使えなかった。


 そういえば、悪魔キャラであったな。それなら、それらしく、癒やすべきであろう。そう、簡単だ。悪魔の魔法を唱えればいい。なに、魔力はいらない、ノーコストで効果は絶大。


 耳許で、囁くように、魔法を唱える。


「新作アクセ、高級ドレス、高級ディナー、マイハウス。」


 それは、悪魔の甘言。

 アダムとイブが禁断の果実を食べるに至った神のプロテクトすら破る破壊コード。


「あぁ、なんて似合ってるんだ。綺麗な人。優雅に食事されるのね。素敵なお家。いいセンスだ。きっと、素敵な人が住んでいるんだろうな。」


 強要、強迫、命令は、3流仕事だ。強い言葉は、独創性を殺す。活力を奪い生産性を下げる。依頼は、2流。


 1流は、イメージさせる。それだけで、いい。やる事は、それだけだ。

 後は勝手に、足を踏み外す、階段から転がり落ちていく。さっきまで、一歩も歩けないと倒れていた奴隷が、嬉々として力強く荷を運ぶ。


 小娘の目は、虚ろ。その目は、現実では無く夢想する幸せな未来を見ている。すでに、堕ちた。さぁ、後は聞くだけだ。語りだせ。


「そう、私はセンスがいい。アクセはもう決めてある。服も、細いサイズが着られる。食べたかった料理がある。マイハウスのデザインもある。」


「ほう、ほう、素晴らしい。」


「着ぐるみの人、私、頑張ります。」


「期待しているぞ、小娘。」



 爽やかに、拳と拳を合わせようとしたら、空をきる。そして、彼女の拳を、顎に入れられた。ぐふぅ。


「でも、その話と、このゴーレムとは別の話です。うぷぷ。」


 まったく、調子が出て来たようで何よりだ。ゼルは、やれやれと首を振る。

 悪戯が成功して、素で、口元を隠して笑う名前も知らない彼女は、凄く素敵だった。高級バッグの何倍も綺麗だった。


 そして、なぜだか分からないけど、心を開いてくれたような気がした。



 あれ?そういえば、名前知らなくね?



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