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(´・ω・`)


 レーションのケースを追加注文をうけて、魔獣キャンディー社に訪れる。部屋に入るなり、強烈なタックルと思われたが、今回は、したたっと走ってきて、すぽっとお腹の育児袋に入ってきた。

 黒い影、おそらく髪の毛であろう揺れる金のラインの残像しか見えなかった。確かな事は、いきなり急に、体が重くなったという事実だけだ。

 マリナは獣人らしい。種族はよく知らないが、人間の常識を軽く超えてくる。


「ラピュラスだー。うっひょう、ここは、マリナの指定席なのだ。」


「ご機嫌だな、マリナ。」


 ぱちくりと、汚れなき眼で見上げてくる。純粋なコだ。利用されてはいけないよ、おじさん以外の悪い男に。


「どったの?ゼルさん。」


「この前、作ってくれたケースが好評でな。追加を頼みたい。」


「お安い御用だよー。」


「あぁ、助かる。」


「それで、マリナと、寝てくれる気になった?」


「そういう事は、大人になってから言うのだな。」


 ただの昼寝の誘いをしたいだけであろう、天然娘をモフる。


「うぇへへ。」


 お腹の育児袋でトロけるマリナを見つめながら、モフり続ける。すやぁ。


 マリナを倒した。


 秒速で寝る女、マリナ。そして、さっそく暇になるゼル。部屋にある机を見ると、作りかけのラピュラスの縫いぐるみがたくさん置いてあった。ここはラピュラスの開発工場なのだ。新作を持ち上げて確認すると、ちゃっかりお腹に袋がついており、嫌な進化を遂げていたので、そっと下ろす。


 このまま、ぶらぶら歩いても、この娘は寝ているのだが、今日は、いい夢を見てもらえるよう、ゆっくりと微睡むのも悪くないかと思う。


 ソファーに、腰をかけ、ゆっくりとした時間を楽しむ。だんだんと、夢と現実の境目がはっきりしなくなり、いつしか夢の世界へと案内されていた。


 幸せそうに眠る2人。



「やべ、寝てしまったか。」


「うひひ、寝顔みちゃった。」


 頬をつんつんされて、目覚めた。悪戯っぽく笑う褐色娘をぼんやりと、眺める。


「あー、そうだ。マリナ。」


「なぁに?ゼルさん。」


「金が、いるんだ。魔導バイク売ってもいいか?」


「えー勿体無いよ。魔道具は1点物だから、二度と手に入らないよ。お小遣いなら、あげるー。」


「いや、大金が必要でな。」


「そっか、赤の森。マリナ的には、買い戻して欲しくないけど、いいよ。お仕事だもんね、ラプラスさん。」


 甘い時間は、唐突に終わりを告げ、世界は闇に閉ざされる。


 マリナが、真顔になり、そして寂しそうな表情をした。


 初めてみる大人っぽい横顔にドキリとする。なぜ、否定的なのか分からなかったけど、聞かないでと言っているようで、聞けなかった。1つだけ分かったのは、次の一言を言えば、理由は分からないけど、目の前の少女の不利益になるという事。


 だが、この世界に迷い込んだ日に、おじさんは決めたのだ。レイの笑顔の為なら、どんな犠牲をも払うと。だから、言うのはやめない。


「ありがとう。」


「うん。赤の森を買い戻せたら、その時は呼んでね?」


「当り前だ。」


「ありがと、ゼルさん。今日は、もう帰って。」


「あぁ。」


 両手で、部屋の外に、押し出されるが、その手に力は、入っていなかった。いつもと違う態度の理由は分からなかったけど、追い出されるように、魔獣キャンディー社を後にする。


 声を押し殺して泣く少女の手は固く握りしめられていた。


「ひくっ、嫌だよぉ。分かってるけど、大人にはなりたくなかった。昔のアタシならダメってワガママ言えたのに、レイィィ。」



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