(´・ω・`)
「マリナ、そろそろ起きろ。」
「ふみゅう。」
なんか静かだなーって思ってたら、この天然巨乳娘、着ぐるみの腹ポケットで居眠りしてた。嫌な進化を遂げたおじさんは、メスのカンガルーみたいになる。溢れだす母性。
「もう、いい時間だぞ。」
「んみゅ、ふわぁぁ。あっ、マリナ、良い事思い付いたー。」
「なんだ?」
「ゼルさん、今夜はマリナと寝よ?」
「なんだと。」
褐色娘が、こてんと首を傾げて、誘ってきた。さらり揺れる金色の髪。ふぅーっ。タイミングが悪かったら、勘違いしちゃうぞ。
しかし、待てよ。これは、健全な添い寝なので問題ないのではなかろうか。こちらからは、手を出さないし。ただ、マリナは、抱きつき癖があるから、おおぅ、極楽へ今夜はイケるかもしれない。
断ろうとしたが、高価な魔道具を2つも、貰ってるから断れませんな。これなら、理由もバッチリではなかろうか。ぐへへ。
邪悪なる計画を立案していた上級悪魔たる我だが、くいくいっと、裾を引っ張られた。誰か知らないが、いいところなので邪魔しないで欲しい。邪魔をしてきたのは、冷たい目をしたレイだった。そして、無言でシャドーキックを披露され、ニコリと笑われた。い、いやー。冗談ですよ、レイさん。スネ限界なもんで、勘弁してください。
そもそもさ、スネってな、弁慶っていう矢が刺さりまくったのに、死んでも倒れなかった超人的な坊さんの、泣き所なんだぜ?そりゃ、おじさんも泣くよ。
こんな場所で、無駄死にしてはいけない。生きて、生還するんだっ。
「大人をからかうでない。」
腹ポケットに入ってるマリナの首元をむんずと掴み、仔猫のように引っ張り出して、ソファーまで、運搬し、ぺいっと投げる。
「酷い。マリナの誘いを断るなんて、悪魔みたい。」
ソファーに寝転びながら、脚をバタバタさせて講義するマリナに、澄ました顔でゼルは応える。
「悪魔だからな。」
「ゼル帰ろう。またね、マリナ。」
レイは軽やかに、フリフリと手を振って別れた。マリナは、だばーっと涙を流し、おじさんは涙をぐっと飲み込み、連行される。やっぱり、いやだ、帰りたくない。
そうだ!一緒に帰ればいいのでは無いか。悪魔的な閃き、全てを覆す予想外の一手。例えるならば、将棋で王手をかけられた時に、将棋盤をくるっと180度回すような禁じ手。
だが、おじさんは悪魔だ。実際には違うが、そういう事になっている。ゆえに、禁じ手もバンバン使う。マリナ、付いてくるんだ。届け、この想い。
右手は、レイに捕まえられている。左手は、ゴーレム戦隊の家を持ち運んでいる。両手が封じられているが、まだアイコンタクトが残っている。首をぐるっと回して、アイコンタクトを送る。
マリナ、付いてきてくれっ。必死な気持ちならそこに言葉はいらない。俺たちの間に言葉なんて、いらないだろ。伝われっ、この想い!
「むん。帰るニク。」
ポチョムキンが、付いてきた。うざい。そして果てしなく空気の読めないマッスルゴーレム。
お前じゃねぇんだよ。飲み込んだ涙の味は、しょっぱかった。




