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(´・ω・`)


 満足してくれたのか、ただお腹がへったからか、解放されたので、ようやく魔導バイクの起動式に入るゼル。


「ふむ、それでは、この魔道具を起動しよう。おそらくキックスターターを踏み込めば良いはずだ。」


 ゼルは、2人が見守る中、力を込めてキックスターターに似た何かを踏み込むが、硬くて動かない。びくともしない。


「え、えー、あげるけど、無駄に壊さないで欲しいよー。」


「問題無い。オーバライド。ふんぬぅぅ。」


 心配そうに見守るマリナをよそに、顔を真っ赤にして、踏み込むゼル。欲しい、絶対にこの魔導バイクが欲しい。俺の物になれっ、強い一念で踏み込む。気持ちが通じたのか、封印が解け、ガッと抜けるように踏み抜けた。


 ドルン、ドゥドゥドゥドゥ。


 低い唸り声を上げ、魔導バイクが起動した。まるで心臓の鼓動のような音、もしかしたら本当に魔獣の心臓を使っているかもしれない。


「す、すごいよー。動いた。」

 88888。


「宜しくな、相棒。」


 称賛するマリナと、興味無さそうに拍手するレイの音が、耳に入らない程にゼルは、静かに興奮していた。

 まさか異世界でバイクに乗れるとはな。しかもこの世界で1台のバイク。優越感が半端ない。自尊心をビンビン刺激してくる。これを作った過去の勇者に感謝だ。


「さて、さっそくだが、これから慣らし運転で夜道を駆け抜けよう。後ろ空いてるぞ、誰が乗る?」


 バイクに跨って乗車し、親指でクイクイと後部シートを指すゼル。出来るなら、マリナに乗って欲しい。アイコンタクトすると、マリナがこくりと頷いた。

 深い意味は無いよ。そう、前のオーナに敬意を払っているだけ、ゲフンゲフン。確率は半分、マリナよ、いいから早く後ろに乗って抱きついてくれ。


「仕方ない、乗ってあげる。」

「うっひょー、ならマリナは、一番前を頂きっ。」


 嫌そうな顔で、レイが後ろのシートに乗ってきた。手で背中をつまみ、体が触れないようなポジションをキープした。あのー、レイちゃん、嫌なら乗らなくて良いのだけど、むしろマリナと代わって欲しい。そしてマリナに、後ろからぎゅっと抱きついて欲しいんだ。などと、煩悩にまみれたゼルには、真っ赤な顔で恥ずかしそうに後ろに乗っているレイには気付かない。

 そして、肝心のマリナは何故かバイクのノーズの部分に、こちらを向いて、コアラのように抱きつくような姿勢で乗ってきた。この魔導バイクは、鼻先の長い少し未来的な形だった。だからって、そこは違うよ、分からないかな?危ないから降りてくれ。アイコンタクトは、伝わっていなかった。人と人とは分かり合えない生き物なのだ。


「レイよ、嫌ならマリナに譲ってはどうだ?それに、もっとしっかり密着しないと落ちるかもしれない。」


「なに、ゼル?マリナに後ろから抱きつかせたいの?それ、セクハラ。」


「ち、違う。前のオーナに敬意を払ったにすぎない。それに、安全的な見地からのアドバイスだ。エロい事を考えてるから、そのような勘違いに至るのだ。」


「嘘つき。」


「あと、マリナよ。そこは乗る場所では無い。危ないから降りてくれ。」


「ええー、マリナは大丈夫だよ。それに、どうやってここから出すの?」


「くくく、我に不可能は無い。」


 魔導バイクの周りには、動かし方の分からない魔道具がところ狭しと置かれている。さらに、室内だから、脱出ルートは無い。確かに、昨日までのゼルならこんな脱出ゲームは無理だよとキレていた。


 だが、思い出して欲しい。ついさっき魔装具ラピュラスの羽の機能が解放されたのだ。これを使えばいける。

 この魔導バイクは重いが、身体の1部なら動かせる。例えば20kgの荷物を手に持って移動するのは、とても大変だが、20kg太った人が移動するのは、簡単だ。なので、意識を拡張。このバイクは、相棒、いや身体の一部だ。意識の拡張、成功。


 空中に舞い上がり、窓から外に出るとしよう。目で追って外までの脱出ルートを考える、検索、成功。


 よしっ、後は背中の羽に任せるだけだ。行くぜっ、ぱたぱたと、羽を動かす。


「へぷ、へぷへぷへぷ。」


「あっ!」


 動きだした羽が、レイの綺麗なご尊顔を往復ビンタした。レイの雪のように白いほっぺたは、真っ赤に腫れていた。飛び立つのをやめて、ゼルは光速土下座をした。


「レ、レイ。ごめん。」


「ゼルぅ?」


 レイの白く細いすべすべとしたおみ足で、土下座で無防備になったアタマをグリグリと踏まれるゼル。や、やめろー、何か目覚めそうだ。


「ええーと、羽の位置を付け替えるよー。」

「ん。」


「ありがとう、マリナ。頼む。」


 てってってーてってってー♬


 マリナは裁縫道具を出して、手馴れた手つきで、羽を付け替え初める。ゼルは、アタマをグリグリと踏まれながら、付け替え完了をじっと待つ。体力の無いレイは息があがり、はぁはぁと色っぽい声を出す。ゼルが新しい性癖を獲得する寸前に、付け替えは完了した。レイは踏むのをやめて太腿からだしたポーションをちびりと飲み回復した。


「出来たよー。もふもふラピュラス改。」


「ありがとう、では仕切り直すか」


 2ndチャレンジ


 3人が、先程と同じ姿勢で魔導バイクに乗り、魔導バイクごと、ふわふわと、空へ舞い上がり、敷地の外に着陸した。


「おおーっ、飛んだよ。」

「天才である私のラプラスに、不可能は無い。」


「いやいや、まだだ。これからが、魔導バイクの活躍の時間だ。」


 しかし、このまま走行するとマリナが落ちるから、マリナには悪いけど一度降りて貰おう。そして、後から乗って貰えば問題無いだろう。

 んん!素晴らしいアイデアだ。どちらか1人等と先程の自分は判断ミスをしていた。2回楽しむ、これが真の正解。


「マリナよ、そこは危ないのだ。後で絶対に乗せるから、一度降りてくれ。」


「やだやだ、マリナは拒否する。」


 説得失敗。そして、野次馬が集まってきた。囲まれる前に、脱出しなければいけない。仕方ない、少し進めば分かってくれるだろう。ゆっくり、慎重に発進しよう。

 手に神経を集中させ、ゆっくりとスロットルレバーを回して、発進する。


「ひゃっ。」


 ふにょ


「うおぅ、この感触は。」


 バランスを崩したレイが、後ろから抱きついてきた。ナイチチなんて言ってごめん。慎ましやかだが、ふにょと存在感を示す2つのクッション。料理では、塩は多くても少なくてもいけない。その絶妙な完成された美しさを持つ美少女レイ。


 男は、背中で語る。それで満足か?違うだろ、背中の可能性を諦めるな。神経を集中しろ、まだ出来る事はあるはずだ。背中に当たる感触を存分に堪能しろ。そして背中を動かして発育途上のちっぱいを揉みしだけ。うぉぉっ、覚醒しろ、背中。


 ゼルは、背中に神経を集中した。とうぜん、手のスピード制御は、適当になる。ぐりんっとスロットルレバーを回してしまい、急発進。


 振り落とされまいと、ぷるぷると必死に密着してくるレイ。さらに背中が覚醒する。喜びの雄叫びをあげる。


 マリナは泣きそうな顔でノーズにしがみついている。今にも落ちそうだ。


 目の前に、通行人が現れる。ぶ、ぶつからない。ぐおんっと回避した。建物が、これもぎりぎりで、するりと、回避。


 ゼルの超絶ドライビングテクニックで、衝突を回避かと思われたが、運転中にも関わらず意識が背中に集中している男に、それは無理な話だ。

 この魔導バイクには、オートドライブ機能が搭載されており、最適な判断で進むように出来ていた。普通なら、事故っている。


 マリナの握力が限界に達した。いや、むしろ、良く今までそんなコアラのように魔導バイクの先端に抱きつく不安定な体勢で保ったんだと褒めてあげてもいい。


「いやー落ちるぅぅ。」


「へぶっ。」


 マリナは、後ろに飛ばされ、ゼルの顔面に抱きついて落下を回避。豊満な胸で、顔を全力ホールドした。ぱふぱふキタコレ!


 運転中、視界は0、でもご安心下さい。タナッカ製の、この魔導バイクは、オートドライブが搭載されており安全な走行をお約束します。



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