祝言「永遠のプリンス」
ー 1887年6月ー
謙信が生きて伊勢の元へ戻った……あの日から2年後
「お父様、お母様。お世話になりました。おじいさま、おばあさま。お兄様、直胤。本当にありがとう」
「伊勢、綺麗ですよ」
「おばあさま、ありがとう」
祖母・しまは、涙ぐみながら遠い昔に愛し、今なお心の中で生き続けている謙信の祖父・能景に話しかけていた。
私たちは、一緒になることはできませんでしたが……あなたと私の孫はこうして皆の祝福を受けて祝言をあげることになりましたよ。
◇ ◆ ◇
「さぁ、皆さん。写真を撮りますよ。こちらを見て笑ってくださいね」
真っ白なウェディングドレスに身を包んだ伊勢と万感胸に迫る謙信が見つめあって微笑んでいる。ふたりの周りにはたくさんの顔が見える。
いまでは新鋭のドレスデザイナーとして活躍している紅華。今日のウエディングドレスも紅華が伊勢のためにとデザインしたものだ。その横には政宗が立っている。
幸は、女性記者として奮闘しており、なんと……賢太兄様と付き合っている。
その横には、信玄様としのさんが穏やかな顔で並んでいる。体調を崩している信玄様をしのさんが支えていると聞いた。
式には参加していないが、あの絶さんからもお祝いが届いている。絶さんは、渡米した際に研修医として付き添っていた若い医者と婚約したらしい。
みんな……それぞれの道を歩み始めていた。
「伊勢。俺はこの日を迎えるために、前世で義を貫き通し、生きてきたのだ。……もう二度とお前を離さない! 伊勢……愛している」
「謙信様。愛しています! 」
「はい。それではみなさん、写しますよ〜! 笑ってください 」
ピカッ!! バチッ!!
◇ ◆ ◇
ひらひらと……三匹の蝶が、舞っている。
よく見ると一匹は孵化したばかりの赤ちゃん蝶で、二匹の蝶がその赤ちゃん蝶をやさしく見守るように飛んでいる。
観音菩薩に手を合わせていた天室光育和尚は、その三匹の蝶たちを優しい眼差しでじっと見つめ、微笑んだ。
「謙信殿、伊勢殿……私には、お二人の未来がまたも見えましたぞ」
◇ ◆ ◇
ひらひらと……三匹の蝶が飛んでいく。
幸せな未来へ向かって飛んでいく……。
ー 祈恋「私のプリンスは・上杉謙信?!」 完 ー




