第5話
「私のヒーローの姿?SILVER CROWとして?」
「そうだ。これから起こる危機に立ち向かう、希望に満ちた姿、と私は捉えた」
私は捉えた?何だそのいい加減な感じは。今少し胸が高ぶったというのに。
「どういう意味?捉えたって誰かの噂か何か?」
「私には予知夢を見ることができる。確かに曖昧だが、間違ったことは無い。未曾有の災害も、それに立ち向かうヒーローも。全て運命だよ」
「ヒーローじゃないかもしれないのに?敵としてあなた達に立ち向かってるかもよ」
彼は笑った。まるで、私がおかしい事を言ったかのように見えるほどだ。
「それは無いだろう。私には分かる。君は根っからのヒーローだ。君の情報を沢山調べさせて貰った。15で孤独になったってのに、君は迷うことなく自分の身を犠牲にして人を助けることを選んだ。私は君を信頼している」
変わった人だ。巨大組織のトップとは全く思えないほど直感的で身勝手だ。
「私はあなたを信頼してない。まだ、名前すら聞いてないし」
「すまない。名乗り忘れていたな。シン・コンドウという。日本を転々と生きてきたが、京都は今回が始めてだ。よろしく頼む」
コンドウと言えば、コンドウ産業か。元は、戦争時に名を上げた兵器製造会社。終戦と同時に兵器の製造は止め、都市部の再興を始めた。ただ、噂では未だに兵器産業を続けて会社を保たせているとか。この人がどうであれ、内側が腐っているかもしれない。
「やっぱ信頼できないなぁ。けど、一旦は協力するよ。ただし、これから先は私自身が決める。つまりあなたの思うヒーローになるかは別ってこと。この事件を解決するだけ」
コンドウはゆっくり頷き、ハナザキをついに連れてきた。彼が使っているのは電動車椅子なのだが、どう見ても良い代物だ。それだけで、どれほどの財力か分かる程度に。
金持ちは信用していいものか、私には分からない。特にこういうタイプのは、どうにも読めないのだ。
私は富裕層が、上へ上へと逃げて行ったのが許せないのだ。治安のこともあるし、気持ちは分かるような気もするが、どうにか下を綺麗にするということをして欲しかった。
この街を全員が見捨て、諦めているのに腹が立った。だからこそ、彼の主張には大きな価値を感じる。
で、私は希望に賭けたい。だったら、信じる他にない。そうやって納得することにした。
「それで、コンドウさん。僕らはこれから何をするんです?この事件の犯人の所に行くとか?」
ハナザキは、どう見ても緊張しているし、変になっていた。それを見ると、私は逆に冷めてしまった。
「ハナザキ。残念だが犯人はまだ分からん。だが、手がかりは見つかっている。詳しくは彼に聞け。日本神話学のプロフェッショナル。エリス・エドワーズ博士だ」
コンドウの呼び声と共にテントに入ってきたのは、小柄で黒縁メガネをかけ、少し歳をとった感じの白衣を着た不思議な男だった。
「どうも、SILVER CROWあなたのファンだ。あなたの発明品のロマンには驚かされたよ。僕のことはエリス博士と呼んでくれ」
「悪いが私は別件でここを離れなくてはならない。エリス博士とハナザキ、そしてミナトの3人で事件を追ってくれ。別で捜査部隊も動かすが、本命は君達だ。ただ、できる限り隠密に頼む。神様については然るべきタイミングに全国に公表するつもりだからな」
そんなことを言って彼は去っていった。同時に、テントの外の大勢の人も去っていった。多くの車も去っていき、どうやら結局数人しか残らなかったようだった。
待っていましたと言わんばかりに、エリス博士が口を開いた。
「さて、さっきの調査で分かったことなんだけど、この場所には神器を使った痕跡が見られた。君はそんなもの持っていないだろうから君の容疑はすぐに無くなった。僕たちも分かってはいたんだけど、一応君を調べるしか無かった。本当にごめん」
早口。とにかく。でもそこが気に入った。あと、嘘をつかない正直な性格だろう。
「最初から分かっていたのか?はっきり言って僕は彼女がやったのかと……」
ハナザキは、私を明らかに疑っていた。そのためか、全員が私を疑っているのかと思い込んでいた。おかげで、私についてよく考える機会になったのだが。
「あくまで憶測だったから。ちゃんと彼女について調べたよ。それはそうと、神器の使用が見られたってことは、はっきり言って答えは分かっている。神様がやった。そして僕は行方不明になった男の子の守護神が怪しいと思う。逆に、そうじゃ無かったら、かなりマズい。明確な悪意を持った神様が京都に潜んでいることになるからね」
「ごめん。私半分ぐらい分かんなかったんだけど、その男の子が危ないってこと?」
「待って。僕は全部分からなかったぞ?まず神様がどうした?」
「まず一つ目。その男の子自身も危ないけど、周りも危ない。まずは発見次第、慎重に安全に確保する。そして二つ目………についてはどうしようか。ひとまず、神様の存在を信じて欲しい。ちなみに神器は、神様だけが持っている道具だ」
日本のファンタジー王道みたいな単語ばかりで、私は珍しくそれが好きだっただけ。今やそういう娯楽は廃れきっているから。みんなお金にしか興味がない。私は珍しく、昔の映画や漫画が好きだけど。
スーツもそのせいで、ロマンと実用性を求めた。
「とりあえず!その男の子を探せばいいんだよね?」
「つまりはそうだ!」
「それなら僕の得意だ!ぱっぱと見つけよう!」
ハナザキの先導の元、現場を飛び立ち向かったのは、監視カメラの記録室だった。
「まさかと思うけど、力技するつもり?」
「AIに読み込ませるのは規則で禁じられててね。情報漏洩を防ぐためにもアナログな記録方式なんだ。君は嫌か?」
「別にやるけど………気が遠くなるなぁ」
「僕は嫌いじゃないよ。地道な作業は好きだ」
「じゃあ取り掛かろう。制服を持ってきた。君達も着てくれ。統一感が出るだろ。即席だけどチームとして、やっていこう」
少し窮屈な服に着替えると、自然とハナザキやエリス博士と心が通った気がした。
こうして意気揚々と始まった力技捜査だが、これから実に三日かかった。




