紫音ルート最終話
和樹と香織を養子に迎えて2年後。
和樹は小学生2年生になり、香織は5歳となった。
和樹は島の学校に通い始めて、最初はとても不安そうだった。
ただ同級生の女の子と男の子、和樹含めて3人のクラスになり、上手くやれたようで俺は一安心と胸を撫で下ろした。
香織は残念ながらこの島には幼稚園も保育園もなく、家で紫音やお義母さんと仲良く過ごしていた。
来年からは小学生。早いものである。
ここまでだと順風満帆にことは動いている。が、そうではない。
紫音が死んだ。
心臓麻痺、突然死だった。
事を順を追って話すと、香織とともに楽しく散歩していたが、突然冷や汗をかき、香織が流石に様子がおかしいと心配しつつも「大丈夫、だよ……」と強がって意識不明になった。
泣き崩れる香織の姿を発見した人達が、救急車を呼んだが、時すでに遅し。
そのまま死亡宣告がされた。
「お母さん……!お母さん……!」
「かーちゃん何で……!?」
「紫音……!ああ!紫音……!」
「紫音……!うわああああああ!」
俺たち4人は泣き崩れた。
愛する妻の死。覚悟はしていた。していたが、やはり直面すると胸が苦しくなるくらい悲しい。
希導家のことはお義母さんには話していて彼女も「覚悟してる」と力強く宣言したが、やはりこの運命は悲しい結末である。
ちなみに、まだこのことは和樹と香織には話していない。
希導家の運命を受け入れさせるためには、まだ幼すぎる。
俺と俺の実母、紫音、そしてお義母さん。
4人の判断だった。
葬式を終えて俺は紫音の墓前にて立ち尽くしていた。
紫音の墓は彼女が好きだったコスモス畑に特別に立ててもらった。
「なぁ、紫音。幸せだったか?幸せだったから逝ったんだよな?」
ザーザーと激しい雷雨が襲っている。
ピカっと光が放たれた数秒後にドカーン!とどこかに雷が落ちた音が耳に響く。
「そうですよ、守君」
傘をささずに、雨に打たれて身体中がびちょ濡れの俺に紫音の母が優しく微笑む。
「あの子は元々成人まで生きれなかった。あなたのお陰であの子は生きながらえて、好きな人と過ごして結婚して、養子だけれど、子どもが出来て『毎日幸せ』と言ってました」
ザーと振り続ける雨、俺は優しく微笑む紫音の母に質問した。
「お義母さんは俺に怒ってないんですか?」
「怒る?むしろ感謝してます。先程も言いましたが、あなたのお陰であの子は宣告よりも長く生きれた。親からすると子の死は苦しいです。でも、だからこそ、あなたには感謝しているんです。希導家の呪いに打ち勝つことは出来ずとも、あの子を少しだけ長生きさせて頂きありがとうございます」
そう言い頭を下げた。
雨に打たれ続けて俺は涙が止まらなくてそれでも……!
「こちらこそありがとうございます……!とても幸せでした!」
そう絞り出した。
「私は一足先に帰ります。孫たちも不安がってるので。あなたもあまりに遅くならずに、ね」
優しく微笑む。
これでも救われた気がする。
「紫音、幸せな日々をありがとう」
踵を返し、俺もいつまでもクヨクヨしてられない。血は繋がってなくとも、2人の子どもを育てる責務がある。
『こちらこそ!』
そう決意を胸に立ち去ろうとした。
しかし、天から声が聞こえた気がした。
振り返り、再び墓に向き直る。
「し……お、ん……?」
『守がいつまでも子供みたいに泣きじゃくるから、神様にお願いして少しだけ会わせて貰った』
ニコッと桃色の髪をふぁさとなびかせて近づいてくる。
『僕の要件は2つ。まずは守、僕を選んでくれてありがとう。おかげですっごく幸せな日々だったよ』
「俺も……俺だってそうだ!紫音が隣にいた毎日は、すごく楽しくて幸せだったさ!」
『そう言って貰えただけで十分だよ。そして2つ目。神様曰く、少なくとも守の血は途絶えるわけ。つまり、香織と和樹が結婚してもあの子たちが選んだ相手は、この呪いから解かれるって神様が言ってた。まぁ、桜花ちゃんの方は無理だけど、あの子達には同じ想いをさせずに済むってさ』
「そう、なのか……?」
『うん。だからこれ以上泣かないで。君たちが来るまで見守ってるから。だから……え!?もう時間ですか!?』
「時間?」
『そう、そんなに長くは居座れないみたい。それじゃあね。ずっと愛してるよ、守』
「紫音……!」
『待って、最後に。あのゲーム機、もう最新じゃないけど、思いっきり遊んでね、僕の分まで!』
それだけ告げて紫音は光の粒子となって消えていった。
いつの間にか雨は止んでいた。
「ありがとう、紫音」
俺は急いで家に帰り、ずぶ濡れのままなのも気にせず、押し入れからあの時くじで当てたゲーム機を引っ張り出した。
「「なにこれ!?」」
息子と娘が口を揃える。
「母ちゃんが置いていってくれたゲーム機だ。一緒に遊ぼうぜ!」
「「やる!」」
「おっしゃ!決まりだな!」
紫音、沢山の幸せをありがとう。
俺は君のことがずっと愛してる。
俺が、いや俺たちがそっちに逝くまでもう少しだけ待っててくれよ。
紫音ルートEND




