第六章: 森の奥に潜む危険
第六章: 森の奥に潜む危険 ― 魔力の腐敗
ポルたちは互いに目を合わせ、この任務の重さを感じ取った。周囲の森は次第に静まり返り、ただ風が木々を揺らす音だけが耳に届く。
森の中を進みながら、ポルはふと思いにふけった。
「最初の呪文をどうやって唱えたらいいんだろう…?」
小さな手を見下ろしながら、彼は疑問を抱いた。十分な力が自分にあるのか、それとも失敗してしまうのか。
「実験してみるべきかな、それとも本に書いてあった通りにやった方がいいのか…?」
そう考え込んでいたが、彼はふっと息を吐いた。
「まあいいや、状況に応じて決めよう。」
――それで十分だ。
エリンドールが前を歩きながら、手を挙げてグループを止めた。
「ここで罠を準備するぞ。」
その声は低く、だが確信に満ちていた。
「カイダ、夜狼を罠にかける方法を教えてくれ。」
カイダは即座に姿勢を正し、胸を張って答えた。
「はい、先生!茶色のベリーの低木の花と、小動物の肉が必要です。この二つの香りを混ぜれば、夜狼を引き寄せることができます。」
エリンドールは満足そうにうなずいた。
「いいぞ。では、その花と肉はどこにある?」
カイダはにっこりと笑いながら、自分の鞄を指差した。
「ここにあります。先ほど集めておきました!」
彼女は紫色の花と丁寧に包まれた肉を取り出し、みんなに見せた。その周到な準備にポルも感心し、リラとエロウェンも驚いたように声をあげた。
「すごいな、カイダ!」
エリンドールは微笑みながら頷いた。
「よくやった。では、罠を仕掛けるぞ。」
エリンドールとカイダが手際よく罠を準備している間、ポルはその様子をじっと見つめていた。
「二人は本当に息がぴったりだな…。戦っているところを見てみたい!」
そう思いながら、彼は自分が読んだ魔法の本を思い出した。
「確か、呪文を唱えるには媒介が必要なんだっけ…。杖とかがあれば安全だけど、手だけで唱えたら負担が大きいって書いてあったな。」
ふと、杖に使う魔石の話を思い出しながら、ポルの目にあるものが飛び込んできた。
「えっ…なんだあれは…?」
彼の視線の先には、無惨にも散らばる夜狼と普通の狼の死体があった。その体には鋭い傷跡が刻まれ、それぞれの牙で引き裂かれたようだった。
ポルの心臓がドクンと大きく跳ねた。
「これって、もしかして…!」
背筋に冷たいものが走る。何かがおかしい。この森では、普通ではない何かが起きている――。
「お父さん、これを見て…」ポルはか細い声で呟いたが、その声は風の音にかき消されそうだった。
エリンドールもすぐに気づき、その鋭い目で死体を見つめた。彼はゆっくりと近づき、一つの死体の傍にしゃがみ込んだ。
「これは…普通の狩りや縄張り争いじゃないな。」
彼の手が毛皮の傷跡に触れる。長年の経験から分かる、異常な殺傷痕。さらに、わずかに漂う不安定な魔力の痕跡――黒く、不吉な気配が漂っていた。
「魔力の腐敗だ…。」




