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第5章: 初めての冒険

第5章: 初めての冒険

【朝の気づき】

「ふぅ……今日はなんだか違う気がする。」

ポルは手を胸に当て、瞑想するように息を整えた。身体の中にわずかな力の流れを感じたのだ。

「これが……マナなのか?」

彼は周囲を見渡し、ふと自分の部屋の中にいることを思い出した。

「もし失敗したら、部屋が爆発しちゃうかも……今日は父さんとカイダに付いていったほうが良さそうだ。」

そう決めると、ポルは小さく頷いた。

カイダ――彼女は勇者を目指し、ポルの父親と共に訓練を受けている女の子だ。そして明日、二人は狩りの訓練のため森へ向かう予定だった。

【夕食の時間】

ポルは夕食のテーブルに座り、足をぶらぶらさせながらパンをかじっていた。両親の顔を交互に見つめ、絶妙なタイミングを待っている。そして、ついに意を決して喉を鳴らした。

「えーっと、父さん!」ポルは最も真剣な表情を作りながら口を開いた。「明日、父さんとカイダの狩りの訓練に一緒に行きたい!」

父さん――エリンドールはフォークを空中で止め、驚いたように瞬きをした。「狩りに行きたいだって?明日?」

「うん!」ポルは自信満々にうなずいた。

エリンドールは眉をひそめ、顎をかきながら考え込んだ。「ポル、お前は魔法使いになりたいって言ってただろう。ここ数ヶ月、本にこもって呪文の練習をしてたのに。急に狩りに興味を持つなんて、何か企んでるのか?まさか鹿に魔法をかけるつもりじゃないだろうな?」

ポルは肩をすくめ、無表情を装った。「もちろん魔法使いになりたい。でもさ、父さんのカッコいい動きも覚えたら、もっとすごいことができると思うんだ。もしかしたら、魔法と狩りを融合させた新しい技を発明できるかもしれないし。」

エリンドールは眉を上げた。「魔法狩り?例えばウサギにファイアボールを放つとか?」

ポルはにっこり笑って答えた。「その通り!効率的でしょ!」

母さん――セラフィナは微笑みながら静かに聞いていたが、ついに口を開いた。「あらまあ、私の小さな星は本当に野心的ね。」彼女は身を乗り出し、顎に手を当ててポルを見つめた。「でもポル、狩りは汚れるわよ。本や呪文を置いて、泥や汗、それに鹿のフンを踏む覚悟はある?」

ポルは一瞬顔をしかめたが、すぐに元気を取り戻して答えた。「長靴を履けば大丈夫!」

エリンドールは笑いながら首を振った。「いいだろう、ポル。そんなに行きたいならついてきてもいい。でも覚えておけよ、カイダの訓練は遊びじゃない。あの子の競争心は相当なもんだ。もしお前が足手まといになったら、的にされるかもしれないぞ。」

「それなら盾を持っていくよ!」ポルは軽口を叩いた。

セラフィナは笑いながらポルの髪をくしゃくしゃにした。「くれぐれも無理はしないこと。魔法でも狩りでも、急ぐ必要はないわ。一日で世界を征服することなんてできないんだから。」

ポルは彼女を見上げてにっこり笑った。「ありがとう、ママ。約束するよ、何も爆発させない。たぶん。」

エリンドールは笑みを浮かべ、グラスを掲げた。「明日の冒険が無事に終わることに乾杯だ。そしてポル、未来の万能マスターに。」

ポルもパンを掲げ、乾杯の真似をした。「フンを踏まないことに乾杯!」

家族全員が笑い声を上げ、その温かな音が食卓を包み込んだ。明日はきっと面白い一日になるだろう。


【翌朝】

翌朝、ポルは自分の部屋の窓辺に立ち、夜明けの光が地平線を照らすのを見つめていた。外からは、父さんとカイダが準備をしている気配がかすかに聞こえる。深呼吸をして、小さな弓を肩に掛けると、足早に階段を下りた。


【狩りの出発】

ポルが中庭に到着すると、父さんの目が肩に掛けた小さな弓に向けられた。父さんは微笑みながら首を横に振り、優しく言った。

「その弓は、お前にはまだ少し早いな。」

そう言って、父さんは膝をつき、ポルに木製の剣を手渡した。それは滑らかでしっかりとした作りの剣だった。

「本物を扱う前に、もっと練習が必要だ。今日はこれで十分だろう。」

ポルは木剣をしっかりと握りしめ、その重みを感じ取った。それが本物でなくても、何か意味があるように感じられた。父さんはポルの髪をくしゃくしゃと撫でながら言った。

「ポル、強さは剣の振り方だけじゃない。魔法でも、剣でも、大事なのは力をコントロールすることだ。」

ポルは深くうなずいた。本物の剣を手にするのはまだ先の話だが、それもまた冒険の一部だ。


【突然の仲間】

ポルが木剣を握り直していると、急いで近づいてくる足音が聞こえた。振り返ると、リラとエロウェンが勢いよく走ってきた。

「待って!私たちも行く!」リラが言いながら、ポニーテールを揺らして駆け寄る。

エロウェンも嬉しそうに笑いながら言った。「そう、私たちも一緒だよ!」

ポルは目を丸くして驚いた。「どうして今日の狩りのことを知ってるの?」

リラはいたずらっぽい笑みを浮かべた。「カイダが教えてくれたの!」

ポルは心の中で驚きと落胆が入り混じる感情を覚えた。「えぇっ!? この二人も来るなら、マナの初めての実験をするチャンスが……」

しかし、その気持ちを隠し、「君たちが来てくれるなら心強いよ!」と笑顔で答えた。

父さんは苦笑しながら腕を組んだ。「さてと、大所帯になったな。今日は色々と手を焼きそうだ。」

そして、鋭い目つきでグループを見回し、こう言った。「全員、冒険の準備はいいか?」

「はい、隊長!」


【森へ】

一行は森へと足を踏み入れた。ポルの心は興奮と緊張が入り混じっていた。

「本で読んだことがある……自然や科学に関する内容だ。でも、それがどう魔法とつながるんだろう?」

ポルは木々を見上げた。高くそびえる幹や、風に揺れる葉のざわめきが彼に何かを語りかけているようだった。

深呼吸をし、湿った土や松の香りを胸いっぱいに吸い込む。

「もし、この世界の魔法と、僕の世界の科学を融合させられたら……?」

その時、ポルは父さんに問いかけた。「父さん、今日は何を狩るの?」

父さんは少し考え込んで答えた。「うーん……夜狼ナイトウルフがいいだろう。ギルドホールに貼られていた依頼を見た。討伐したら金も稼げるかもしれない。」

「でも今は昼だよ?」

「そうだな。」

「じゃあ、どうやって……?」

カイダが得意げに笑いながら口を挟んだ。「ふふふ……コツがあるのよ。夜狼はうまく誘い出せば昼でも出てくるんだから。」

父さんは真剣な声で言った。「お前たち四人はここで待て。俺が許可を取ってくる。」


【許可申請】

父さんは一言そう告げると、数歩前に出た。すると、彼は足にマナを集中させ、突然跳躍した。目にも留まらぬ速さで枝から枝へと飛び移り、森の天蓋を突き抜けるように登っていった。

ポルはその光景に目を見張った。「うわぁ……父さん、すごい……!」

リラは肘でポルを軽く突きながら笑った。「さすが、うちの見せびらかし屋だね。」


木々の頂上にたどり着いたエリンドールは、太い枝に腰を下ろし、遥か下に広がる森を見下ろしていた。彼はチュニックから冒険者ギルドの紋章が刻まれたバッジを取り出し、それにマナを通した。

「こちらはエリンドール・ナイトヴェイルだ。西の森での夜狼討伐の許可を申請する。」

彼の声は冷静だが、まるで百戦錬磨の戦士のように力強かった。

一瞬の沈黙の後、ギルドの担当者が応答した。「聞こえてますか?少し通信が不安定なようです。もう一度申請内容をお願いします。」

エリンドールは眉間にしわを寄せながらもう一度繰り返した。「こちら高ランク冒険者、エリンドール・ナイトヴェイルだ。西の森にて夜狼討伐を希望する。なお、パーティーは中学生三人と、幼稚園児一人を含む。」

……沈黙。

「……幼稚園児?」担当者の声が困惑している。

「そうだ。幼稚園児だ。」エリンドールは淡々と答えた。「質問は無用だ。早く許可を出せ。」

担当者はため息混じりに応じた。「わかりました……討伐許可を承認します。ただし、最近夜狼が凶暴化しているとの報告があります。特に幼稚園児の安全にはくれぐれも注意してください。」

「了解だ。」


エリンドールは木々の間を素早く降り、地面に静かに着地した。そして、真剣な目で一行を見渡し、声を張り上げた。

「よし、左の道へ進むぞ。少し歩けば岩場に出るはずだ。そこに罠を仕掛ける。」

「了解!」

ポルの胸の鼓動は早まり、冒険への期待が高まるばかりだった。


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