赤薔薇騎士団頑張る
「ハハハハ~!どうしたどうした!その程度か!」
「ぎえ~!魔王だ~!魔王が来たぞ~!全員退避~!」
俺の嫁さんが敵を蹂躪している、槍のひと薙ぎで2~3人が吹き飛んでいくのだ。兎に角近く居ると危険なので味方も傍に寄れない災害みたいな奴だった。敵兵に単騎で突撃して蹴散らしていく様は敵からは魔王と呼ばれて恐れられていた。折角造った白い鎧やマントは敵の血で赤黒く染まっていた。
「もうやめてくれ!降参する」
「ぐぬ~、早すぎる!もっと根性を見せてみろ!」
俺の嫁さんはそれはそれは強かった、元は白い鎧に白いマントを装備した白薔薇騎士団だったのに、今は相手の血で真っ赤に染まった鎧とマントのせいで赤薔薇騎士団と呼ばれていた。そして騎士団長の嫁は敵からは魔王、そして味方から覇王と呼ばれていた、これが男ならば大将軍か国王に成っていたと思う。
「お帰り腹ペコ」
「うむ、ゴールド。今日も城を一つ落として来たぞ」
この1ヵ月で腹ペコは近くの辺境を10箇所程攻略してきたのだ。余りの強さに俺の部下や隊長もドン引きしているのだ。兎に角強い、戦えば戦うほど強くなるのだ、もうこいつが一人で共和国に勝ってしまいそうな勢いなのだ。
そして俺はチマチマと辺境の兵士を連れて要塞の補給物資を強奪している、最近では補給隊も警戒して警備の兵士が500人程に増えたので襲撃はお休みなのだ。
「お姉さま、お帰りなさいませ」
「おう、スマイル。今日もお前の領地を増やしてやったぞ」
「お姉さま無理をなさらないで下さいね、スマイルは心配です」
「心配無用だスマイル。夫婦の共同作業を邪魔する奴には死有るのみ」
俺の物騒な嫁とスマイルちゃんは仲が良いのだ。スマイル領は毎日の様に拡大中だ、魔王に心をへし折られた敵兵達はスマイルちゃんに癒されて喜んで支配下に置かれているのだ。たったの1ヶ月で領地と領民が毎週増えている上に最近では攻められる前に降伏する領地も出てきている。頼りに成らない共和国の上層部よりも馬鹿げた強さの魔王軍の支配下につく領地が増えてきているのだ。因みにスマイルちゃんの支配下になると漏れなくゴールド領の高品質な塩と鉄製品等が買える様になるのも原因の一つらしい。
「スマイルちゃん、今領民は何人になったの?」
「今は2万人位になりました、他の領主様も仲間に成りたいみたいです」
「う~ん、チョット増えすぎだな。塩や物資の補給が間に合わないな」
「何を言う!過ぎるぐらいで丁度良いのだ、戦いとはノリと勢いなのだ」
1ヶ月前は領民1000人程の小さな騎士爵領地が今や人口2万人の男爵領クラスになってしまった。嫁は喜んでいるが急激な人口増加は困るのだ、俺の領地からの物資の輸送が間に合わないのだ。仕方無いので王都の輸送隊からぶん取った兵器や装備を放出して急場を凌ぐ事にした。
「我が夫よ、輸送隊の襲撃は上手く行って無いようだな。私が加勢しようか?」
「いやこれで良いんだ、護衛が増えればそれだけ王都の負担が増えるから俺達には利益が有るんだ」
「ふむ、何もしなくても勝手に相手が疲れてくれるって訳か。成程汚い作戦だ」
「汚くない、誰も死なない立派な作戦なのだ」
「フフフフ、そう言う事にしておこう」
「それじゃ次の作戦な・・・・・・」
俺が考えていた作戦がドンドン違うものに成って行っている。嫁が参戦したことで展開が早すぎるのだな、戦争に勝つのは良い事なのだが、その後の処理が間に合わないのだ。折角手に入れた領地を手放すのは勿体ないのでスマイル領は安定してもらわなければ困る、ここがしっかりしていれば王都がこの地を侵略するには大変な労力が要るだろうからな。まあグラハム領は離反して軍隊が集結している様だから既に王国にはこの地を攻める力は残って無いとは思うが、スマイルちゃんの将来の為に頑張らなくてはなるまい。
「で?何をするんだ」
「スマイル領の城を作るのだ、要塞都市を森の中に造る」
「物凄く金が掛かりそうだな」
「まあ金だけは沢山有るからな、使わない金は無いのと同じだから使わないとな」
この堅実そうに見えた作戦が思っいきり困った事態を引き起こす事になるとは、この時点では誰も思わなかった。
要塞都市の作業員を募集した所支配領域から大量の作業員がやって来た。作業員の賃金がここらの相場より高かった上に週休2日で残業なしと言う条件が大受したのだ。そして働き手が増えると、それ相手の商売人が集まってくる。人が集まると飲み屋や宿屋、屋台等が出来てくるわけで、作業員たちは高給取りで休みも多いので金を使う。この循環が始まると勝手に人間が増えて街が出来て行くのだ。作業員達も景気が良くなって周りに人が集まり出すとやる気が出る様で、普通なら2年位掛かりそうな要塞都市が物凄い勢いで出来てゆく、街が大きくなるとそれに伴って又周辺の領地から移民が大量に入ってくる事態になってしまった。今やスマイル領は共和国で一番儲かる領地となっていた。スマイルちゃんは大量の移民や周りの領主が勝手に降伏して下僕になるのに疲れきっていた。
「おじさま助けて下さい、私もう限界です」
「任せろスマイルちゃん、俺の部下は優秀なのだ。しかし勝手に配下になる領主達ってどうなんだろうな」
当初の計画では10万人規模の城塞都市を造る計画だったのだが、ドンドン配下が増えてゆくので今や城塞都市計画は30万人規模の都市を造らねば足らない様に成っていた。俺の余りの気前の良さが共和国の住民に大受した様だ。周辺の領主達も俺の資金力に恐れをなしてドンドン勝手に降伏してくるのだ、無敵の魔王と無尽蔵の資金、それに最先端の兵器に恐れをなした様だった。それに配下に加わるとヤッパリ税金が安くて領民も領主も儲かるのだ、共和国の代表よりも俺に忠誠を誓った方が儲かると言うのはグラハム領の立ち位置と同じだった。
「じゃあ先輩方お願いします、スマイルちゃんを補佐して下さい」
「分かった、でも良いのか勝手にスマイル領を統括しても?」
「もう事実上ゴールド子爵領みたいなもんですから好きにしちゃって下さい」
「構いませんわ、スマイル領はゴールド子爵に完全降伏いたします」
俺の領地で雇っている学園の先輩達をスマイルちゃんの補佐として呼び出したのだ。学園から大量に優秀な人間を雇って居たので文官向きの人達が大量にいたのが良かった、細かい指示や計画を建てて実行してくれる人間が居ないと都市計画や領地の支配は出来ないのだ。
スマイルちゃんは今や伯爵級の領地と領民を持つまでになったが、自分が唯の飾りって事が良くわかっている様だった。スマイルちゃんの後ろに魔王である俺の嫁と無限の資金を持つ俺が居る事でスマイル領が発展していることを理解しているのだ。
「坊ちゃん、面会希望者が来ています」
「誰だ?」
「スマイルちゃんの父親です」
「ほう、面白い」
スマイルちゃんを見捨てて逃げ出した領主が俺に面会を求めて来たようだ。まあ目的は簡単に分かるな、スマイルちゃんが手に入れた領地や金が欲しくなったんだろうな。
「待たせたな、要件を聞こうか」
「これはこれはゴールド様、お初にお目にかかります。スマイルの父親のライターと申します」
「で?何が欲しい」
「はい、スマイルはまだ若輩者。ここは経験のある私めがスマイル領の領主としてゴールド様に忠誠を誓わせて頂きたいと思います」
「成程、スマイル領全部が欲しいのか。素晴らしい厚顔だな、お前には死をくれてやろう」
オークの様に肥え太ってギラギラした目で俺に媚を売ってくる卑怯者を俺は許さない。俺は愛用のオリハルコン製の棍棒でライターの頭を粉砕した。俺は自分より弱い奴には物凄く強いのだ、オークキラーの名は伊達ではない。
「死体を埋めて肥料にしておけ。こいつでも死ねば少しは役に立つ、生きていても役に立たないがな」
「了解しました」
領民は俺の事を金払いの良い坊ちゃん、嫁を魔王と思ってる様だが実は俺も魔王の素質を持っているのだ。自分や仲間に害を成す連中に慈悲等ない。生かしておくと面倒な連中は即殲滅するのが俺の主義なのだ。
「あらあら、自分でやらなくても良かったのでは?」
「・・・・・・マミ先輩」
「嫌ですわ自分の妻を先輩なんて、マミとお呼び下さいませ」
「え~と・・・・・・マミさん?」
とうとう辺境にもう一人の嫁、マミ先輩が来てしまった。ゴールド一家が揃ったと言うことは何時でも王国を倒せる準備が整ったって事なのだ。嫁の一人が来ただけで辺境に大都市を作ってしまったのだが、もう一人増えて大丈夫なのだろうか?腹ペコは脳筋なので戦うだけが取り柄だが、マミ先輩は腹黒なのだ。王都の転覆を嬉々としてやる人間が来たら、辺境の共和国など解体して自分の物にしてしまうのではなかろうか。凄く面倒な役割を押し付けられそうで俺は嫌な予感がした、俺はノンビリと生活したいだけなんだがな。




