星と月
眠れなかったのは慶華と主上だけではなかった。王妃もまた眠れずにいた。月の側で煌めく星が熹嬪に思えて、握り潰そうと手を伸ばした。その時だ。ずんっと痛みが腹に走った。一瞬、気を失いそうになったが、痛みが引いたときに寝室に戻り、体を横たえた。再び痛みが走る。あまりの痛みに尚宮を叫ぶように呼んだ。宿直の尚宮が慌てて飛んでくると尚宮は告げた。
「中殿媽媽、お産になります」
「な、なんですって?」
「直ぐに医女を呼んで参ります」
お産と聞いて武者震いがした。恐怖と不安が体を支配する。中殿のお産の開始に眠っていた宮廷が目覚めた。松明が煌々とたかれ、医女が大勢集まってきた。少し遅れて府院君と紅雲府夫人も参内し、産室の隣の控え室で孫の誕生を首を長くして待った。
慶華と慎嬪もやって来てお産を手伝った。苦しむ王妃の手を握り、言葉をかけ続けた。
何時経っただろう。王妃は公主を生んだ。乳母の康氏(カン氏)と養育母の天月府夫人が公主の誕生を王妃に告げると彼女はがく然とした表情を浮かべた。
「公主なんていらないわ!」
「媽媽!なんてことを!」
「出ていって!早く!」
王妃の剣幕に押されて乳母の康氏に抱かれた公主は部屋を後にした。天月府夫人は理由が聞きたくて部屋に残ったが、王妃はそっぽを向いて口を開かなった。
公主は敬慧の公主号を賜った。嫡女であったが、王妃は一向に喜ばなかった。どうしても王子が産みたかったからである。完璧な王妃になるには王子を産まなければならないと思い込んでいたのだ。




