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霊感ホスト  作者: かなえ
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大急ぎでクラブ聖に戻り事務室のパソコンを使って、写真をプリントアウトしている間に鷹矢はソファーで眠ってしまったようだった。


「できた」


後ろで寝ている鷹矢を起こさないように小さく呟いて、プリントアウトした写真をまとめる。

パソコンは誰が使うかわからないので、履歴を全て消しておいた。

もし、本当にサイトを見ただけで死んでしまうのだったらこれ以上の被害は出したくない。


「おはようございます」


出勤してきたアランは笑顔で頭をさげる、美雪も頭を下げた。

「あれ、鷹矢さん寝てるんですね。珍しい」

ソファーで寝ている鷹矢を眺めてアランは驚いた顔をした。


「昨日からあんまり休んでないもんね。私も眠いけど、この人は全く寝てないんでしょ?」

「霊はまだ居るんですか?」


二人分のお茶を入れて言うアランに首をふった。

「それが、居ないのよ」

「よかったですね、もしかしたら、もう出ないかもしれませんよ」


まるで自分の事のように喜んでくれているアランに美雪は顔を曇らせた。


「そうもいかなくなっちゃってさ・・・」


美雪が今までの出来事を話すとアランはプリントアウトした写真を見せてくれと言ってきた。


「・・・この写真の学校は桜乱堂高校じゃないですか?」

「えっ?」


学校が映し出された写真をまじまじと見て言うアランに美雪も写真を覗きこんだ。

何処にでもあるような学校だ。

この写真一枚では何処の学校までは判明できない。

アランは写真をまじまじとみてもう一度頷いた。


「その高校、今日行ってきたけど・・・こんなだったかなぁ?」

「間違いないと思いますよ、週刊誌でこの学校の事件をみたことがあります」

「事件?」


アランは頷いて、事務所の隅に置いてあった雑誌の束から週刊雑誌を取り出してきた。

パラパラとめくって、本を美雪に渡す

2ページに渡って書かれている記事の見出しは「謎の連続死。なぜ?」というタイトルだった。

「O高校、今月に入り7人の自殺者。電車に飛び込みだって・・・」

記事を読んで美雪が言うとアランは頷いた。


「前にその記事を読んだ記憶があったので、この雑誌探しておいて正解でしたね」

「呪いのサイトについては全く書いてないわね。A子さんが謎の失踪をしてから、次々と生徒が自殺。

A子さんはイジメにあっていたらしいって・・・・結局この記事はイジメの闇についてしか書かれていないわね」


「さすがに、”呪いのサイト”を記事にはできなかったんですかね」


アランが出してくれたコーヒーにたっぷり砂糖を入れるてスプーンでかき混ぜる。


「だって、呪いとかバカバカしいものね・・・。記事ではイジメをしていた生徒が自責の念で自殺した・・だって」

「あの男の子の霊もイジメをしていたってことですかね?」


「そういう子に見えなかったけど・・・。この学校を調べてみたら何かわかるかしら・・・」


美雪は小さくあくびをして雑誌を眺めた。

失踪したA子さんの写真にはモザイクが入っており顔を確認することは出来ない。

「イジメ・・ねぇ。ちょっと探してみるか」


コーヒーを持ってパソコンの前に座るとカチカチとキーボードを叩き始める。


「なんですか?」

「裏サイトっていうか、こういうのって掲示板とかに書いている人がいるかなぁって」


「なるほど」


パソコンの画面には、桜乱堂学校の謎というタイトルで掲示板が建てられていた。

お互いの情報交換も含めて書いてあるようだ。


マウスをグリグリと操作しながら真剣に画面を見る。

学生達が集まる掲示板ですぐに探すことが出来た。

学校に通っている生徒達が情報交換で使っているようだった。

第三者が書き込むより信憑性がある。



「ヤベッ。寝すぎた!」


声を上げて飛び起きた鷹矢に美雪は軽く手を振る。

「おはよー」

「おはようじゃねぇーよ。今何時?」

「もうすぐ10時。夜のね」

「やべー。寝るつもり無かったのに」


ガシガシと頭をかいて起き上がると掛けられていた毛布が床に落ちた。

不思議そうに毛布を拾ってアランに渡す。


「悪いな。かけてくれたのか?」

「いえ、僕じゃないです。僕が出社したときには掛けられていましたよ」

「ってことは、お前が?」


信じられないというように見られて美雪は頬を膨らませた。

「あんたねぇ、私をどういう人間だとおもってんのよ」

「悪い悪い。で、写真はできたか?」

 

プリントアウトした写真と週刊誌の記事を見せる。


「いじめねぇ」

鷹矢は呟いて タバコに火をつけた。


「で、ネットでいろいろ調べたら凄いことが解ったわよ」

「ネットか・・便利な世の中になったよなぁ」

しみじみ呟く鷹矢に美雪も頷く。


「私が高校生の頃なんてネットとか無かったわよね。携帯もなかったし。最近の子は携帯とかパソコン使って掲示板にいろいろ

書き込んでいるのよ。匿名だから書きたい放題かいているんだけどね」

「いい世の中なんだか、悪いんだかわからんな」

「で、さすがに一ヶ月で7人も自殺している学校だから掲示板が沢山たってたんだけど凄いことがわかったわよ」


興奮気味に話す美雪に頷いて、タバコの煙を口から吐き出す。


「何が凄いんだ?」

「まず、A子さんは霊が見えるって言っていたらしいわ。A子さんはサイトを持っててそのサイトが多分あのサイトだと思うの。

その、サイトを見た人たちが死んでいるみたいなのよね」

「なるほど」


鷹矢は頷いた。



「でも、サイトを見ただけで死ぬものなんですか?」


もっともな意見をいうアランに鷹矢はうなずいた。


「ありえない話じゃないな。A子は霊感がもともとあったんだろ?だが、ネットを使ってっていうのは初めて聞いたぜ」

「心霊の世界も進化しているのね」


しみじみ言う美雪にアランは笑う。


「たしかにそうですね。メールとか、ネットとか使って心霊現象を起こすなんてすごいですねぇ」

「本当」


「だから厄介なんだよ」


鷹矢は一人呟いて、ため息を付いた。


「とりあえず、そのサイトを消さないとまずいな・・」

「そうですね、誰かが面白半分に見てしまう恐れがありますね」


アランの言葉に美雪は思い出したようにパソコンを叩いた。

慣れた手つきで、呪いのサイトを開いて首をかしげている。


画面には このページは削除されたおそれがあります。と表示されていた。


「無くなってんのよ」

「はぁ?」

鷹矢もパソコンを覗き込んでアドレスを再度入力するも、ページは出てこなかった。

「この店に帰ってきた6時ごろは確かに見れてたんだけど・・・9時ぐらいには見れなくなってたわ」

冷めたコーヒーを飲みながら美雪は続けた。


「ちなみに、掲示板ではサイトを見ないほうがいいって注意されてたの。

でも、中には勇気ある子が見たらしいけど 無くなってたって。えーっとA子さんが失踪して2週間後にサイトが消滅しているみたい」

「どうして俺達は見れたんだよ」

「わからない、もしかしたら一瞬だけサイトが復活した・・・とか?」


首をかしげている鷹矢と美雪の後ろからアランがおずおずと声をかける。

「もしかしたら、今日会ったという女人がサイトをアップしたんじゃないですか?」


「どうして彼女が?」

美雪が言うとアランは首をかしげる。

「さぁ?」

「でも、ありえない話じゃないわね。掲示板の話が本当だとしたら、A子ちゃんのサイトは彼女が失踪した後に中身が変わっていたみたい

だし」

「中身が変わってた?」

「うん、もともとのサイトは心霊サイトだったみたいなの。何処にでもあるような、怖い話とか写真とかのサイトだったんだけど

A子ちゃんが失踪してからそのサイトは私がみたような、写真が切り替わって”10日以内に死ぬ”っていうのに変わってたらしいわ」


美雪の話を聞きながら鷹矢はソファーに座って目を瞑る。

しばらく考えて、口を開いた。

「まず、A子って可愛い女子高生が居た」

「可愛いかなぁ?」

口を挟んできた美雪に鷹矢は週刊誌の写真を開いて指差した。

「顔モザイクかかってっけど、可愛いぜ!これは」


週刊誌の写真は手入れをされた少し茶色の髪の毛が綺麗に巻かれている。

今時のお洒落に敏感な高校生というかんじだ。

「たしかに・・・」

じーっと雑誌を見つめて頷く美雪に頷いて、鷹矢は続けた。

「A子ちゃんは、霊が見えてた。ソレを学校で公言して苛められた。イジメを苦に自殺して、霊になったA子ちゃんは

見たものは死ぬっていうサイトを作った、見た人が死んだ」


「霊ってサイトとか作れるんですか?」


アランの質問に鷹矢は顔を引きつらせた。


「できるんじゃないかな?」

「いやいや、無理でしょ!霊がパソコン触れるの?」

「気合できんだろ~。ほら、念写とか言って念力で写真とったりするじゃん。アレと一緒だよ」


「無理でしょ~。良くテレビで見るのはぼやーっとしたやつじゃない。サイトなんて作れるはず無いじゃない」

「A子さんじやなくて、今日会った子が作ったのかもしれませんよ」

「それに、A子ちゃんが自殺したなんてどこにも書いてないじゃない。失踪よ」

アランと美雪が交互に言うのを聞いていた鷹矢はポンと手を叩いた。


「わかった!A子ちゃんはどこかで生きていて、サイトをアップした。しかし、まさか自分がのろった相手が

自殺してしまって、出て来れなくなった」


「・・・・うーん。それが一番ありそうな感じね」


美雪は頷くとアランはまだ納得がいかないように首をかしげた。


「しかし、A子さんはまだ学生ですよね。雲隠れするにもどこに?お金も無いでしょうし・・・」

「うーん」

「そうよ」

美雪は頷いた。

「それにサイトを見たときに聞こえた女の霊の声は?あれはA子ちゃんだとおもうけど!」


「うーーーーん」


腕を組んで考え込んでしまった鷹矢に美雪はため息をついてお手上げというように両手を挙げる。


「全く解らないじゃない!」








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