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「ったく、超目立ってんじゃない」
ブツブツと文句を言いながら美雪は隣に立っている鷹矢を見上げる。
「しかたねぇーだろ。手がかりはこの学校の制服着てた男の霊と、ソレを冷めた目で見ていたあの女なんだから」
「でも、こんなことして見つかるの?その女のこ」
ピンク色のジャケットに手を突っ込んでガードレールに寄りかかっている美雪は不満そうだ。
鷹矢が駅でみかけた冷めた口調の女を捜すべく、桜乱堂高校の校門の前で帰宅している学生を待ち伏せるという鷹矢に無理やり付き合わされているのだが、2時間経ってもその女が門から出てくる様子は無い。
鷹矢の車の中で待機しつつ待つことができるのだとおもっていたが、実際は門から少し離れた通りに立っている。
「車で待とうよ~」
「あんなデカイくるまこの路地に置けないだろ」
サングラスを押し上げて言う鷹矢に返す言葉がなかった。
鷹矢の姿はタダでさえ目立っているのもこの場に居たくない理由だ。
黒い細身のスーツに銀のアクセサリーを腕にも首にも耳にもつけて、サングラスで顔をかくしているものの女うけしそうな顔をしているのは
わかる。
少し長めの髪の毛は綺麗にセットされている。
女子高生ぐらいの年齢の子供達から見たら、少女漫画に出てくるようなイケメン男子だ。
門から出てくる鷹矢を見て女子高生達が顔を赤らめてヒソヒソと話している。
そして隣に居る美雪を見て何かヒソヒソと話しているのに居心地の悪さを感じていた。
「あたし、帰ってもいいかな」
「オレをこの場に置いていくつもりか?半分はお前のためでもあるんだぜ」
「・・・・わかっている」
鷹矢が無償であの男の霊をなんとかしてくれようというのはわかるのだが、女子高生の視線が痛いのが嫌なのだ。
「ぜったいに、ホストに貢いでいるバカな女とか思われていると思うんだよね・・・」
「・・・・ホストに見えるかぁ?オレ」
首を傾げる鷹矢に冷たい視線を送った。
「このスーツかな?もっとリーマンみたいなスーツならみえねぇのかな?」
自分のスーツを見て言う鷹矢に首をふった。
黒いスーツに紅いワイシャツを合わせている辺り普通じゃない。
ワイシャツのボタンはかなり空いており鎖骨が見えている。
「いや、違うと思う。もう全身からホストって感じがする」
「そういうもんか?」
「あんた自覚ないの・・?」
冷めた視線から顔をそらして咳払いを一つ。
「いやぁ、・・・・霊関係の仕事に行くと大抵胡散臭い目でみられるからこういう仕事の時は普通の人っぽくしてんだけどなぁ」
「普通の人ねぇ・・・」
髪の毛は黒いが、青い瞳が胡散臭さを増している。
「まず、そのアクセサリーが胡散臭いのよ。百歩譲って、売れないミュージャンにしかみえない」
不満そうにポケットに手を突っ込んでタバコの箱を取り出した鷹矢の手を叩く。
「ちょっと、学校の門の前でタバコはまずいんじゃないの?」
「・・・やっぱりそうおもうか?」
「思うわよ・・・」
「喫煙者にはキツイ世の中にになったもんだ・・・あ?」
タバコをポケットに戻そうとして門から出てくる茶色い髪の毛の女学生を見つけて美雪の肩を叩く。
「アノ子だ」
「ちょっと行って来る」
胡散臭いホスト風の鷹矢が声をかけるよりは美雪が行ったほうが安心するだろうとのことで、走り出した美雪は
門から出てきた女を捕まえて、何か話すと 女は今気が付いたかのように鷹矢を冷めた目で見つめてきた。
この世に希望を持っていない瞳に鷹矢も冷めた視線で彼女を見る。
「嫌な目をしてやがる」
死んだ霊の目と同じだ。
ふと、幼い頃、霊が見えおびえていた頃を思い出した。
あの目が怖かった。
希望も、夢も何も無い黒い瞳。
「お待たせ」
小走りに戻ってきたのは美雪一人。
「あの女は?」
「関係ないって言われちゃった・・・・」
「拒否られたのか・・」
舌打ちをしながら言う鷹矢に美雪はヘラヘラと笑みを浮かべVサインを出した。
「それでも、情報ゲットしました~。いぇーい」
「イェーイってお前・・・」
一体何歳だよというという言葉を飲み込んで、代わりにため息を一つ。
「まぁ、いいや。とりあえず、茶しょうぜ。疲れたよ」
「そうね」
2時間も出待ちをしていたのだ、秋とはいえ夕方の風は冷たい。
ズズッと鼻水を吸って 黒いベンツへと乗り込んだ。
「いい店じゃない。ファミレスだけど」
案内されたのは窓際の座席。大きな窓からは海が見える。
赤い夕日が海を照らしている。
「オレのお気に入りの店」
「ふぅーん。ファミレスだけど、海が見えるし景色がいいわね、ファミレスだけど」
ファミレスを連呼する美雪を睨みつけた。
「うるせぇな。何が言いたいんだよ」
「いいベンツ乗ってくるくせに、ファミレスなんてくるんだぁ」
「そりゃ、来るだろうよ。どこの王子様だよ。ファミレスもマックも行かないヤツにみえるわけ?オレは」
「見える」
美雪は大真面目に頷いた。
髪の毛こそ黒いが、サラサラの少し眺めの髪の毛。
青い瞳、日本人離れした顔立ち。
その辺のタレントよりも綺麗な顔をした男はおとぎ話に出てくる王子様と言われても納得できそうだ。
声さえ出さなければ。
美雪は、じーっと鷹矢の顔を見て付け加えた。
「話さえしなきゃね」
「あ、あたしもほっとコーヒー」
お互い同じドリンクバイキングをたのんで、飲み物を取りに行く鷹矢に美雪はニッコリと取ってきて!と微笑んだ。
「おまえなぁ・・」
何様のつもりだよと言いかけて、またため息をつく。
言い合いをしてても疲れるだけだ。
サングラスを外してポケットに突っ込んだ。
「あの・・・何か足りないものはありますか?」
ドリンクバイキングコーナーでコーヒーを入れていると店員の女が顔を赤らめながら声をかけてきた。
「いえ、大丈夫ですよ」
カチッとホストスイッチが入り、ニッコリと笑って答えれば店員は顔をますます紅くして頭を下げて去っていく。
そうだ、自分に対しての女の態度はコレが普通だった。
あの美雪という女の態度は一体なんなんだ?
鷹矢はため息をついてホットコーヒーと砂糖を嫌味のつもりで10本掴んでトレイに乗せた。
「おおぅ、ありがとう~」
コーヒーを持っていくと携帯電話を弄っていた美雪が顔をあげる。
「ったく、オレを使うとはいい度胸だな」
「ゴメンゴメン。でも、可愛い女店員に声かけられてたじゃん」
「あたりまえだ、オレを誰だと思っている」
「それより、見てよ」
美雪は携帯電話を渡す。
黒い携帯電話に付いているストラップの数に嫌そうな顔をする。
「なんだよ。ストラップつけすぎじゃねぇ?」
「いいから、メールがきたの。あの校門のところで待ち伏せした子よ。高岡 幸子っていうんだって」
「メール交換したのか」
良くあの場でメールの交換などしていたなと感心して携帯電話の液晶に目をやる。
そこにはURLが一行だけ表示されているだけだった。
「なんだよこれ」
「なんかさぁ・・・アノ子に何か知らない?って聞いたら学校では話せないからって送ってくれたの。コレ見ればわかるわよだって」
アドレスにアクセスするも何も出てこない。
「これ、パソコンじゃないと見れないみたいなの」
「車からパソコンとってくる」
愛車のベンツからノートパソコンを取ってきた鷹矢が席に戻ると、10本あったはずの砂糖の封が全て空いて机に転がっていた。
「まさか全部入れたのか?」
「ん?そうだけど」
当たり前のようにコーヒーをすすっている美雪をみて顔をしかめた。
「太るんじゃないのか?」
「絶対に太らない。太らない」
暗示のように繰り返して言うのでこれ以上突っ込むのはよそうと鷹矢はうなずいた。
「・・・あ、そ」
多めに持ってきた砂糖だったが一杯に10本も砂糖を入れる人間をはじめてみた。
一体どんな味がするのか想像もつかない。
鷹矢は顔をしかめつつ、ノートパソコンの電源を入れた。
「ネット使えんの?」
ソファーを移動して隣に座ってノートパソコンを覗き込んできた美雪。
「あたりまえだろ。そういう契約してあるの」
「ふーん」
携帯電話に表示されているアドレスを打ち込んでエンターキーを押す。
しばらくしてノートパソコンの画面が真っ黒になった。
「・・・・電源落ちた?」
顔を近づけて見る美雪の頭を思いっきりチョップした。
「いたっ」
「みえねぇんだけど」
「画面真っ暗だよ」
「なにかあるはずだ」
霊能力のカンが何かを告げている。
鷹矢はじっと画面を見つめる。
相変わらず画面は真っ黒だ。
「ちょっとかして」
横から手が伸びて、カチカチとマウスを動かした美雪。
画面にはもう一つウィンドウが立ち上がり、英語の羅列が表示されている。
「なんだこれ?」
「html。ホームページの言語ってやつかな・・」
「あぁ、なんか聞いたことある」
人間一つぐらいとりえがあるもんだと関心していると、美雪は慣れた手つきでキーボードを叩き始めた。
「あった。ほら、ここアドレスが隠されてたんだよ」
綺麗にネイルされた指で画面をなぞるあたりを見ると、ホームページのアドレスだけは鷹矢にも見ることが出来た。
「これを、コピペしてっと・・」
かちゃかちゃと音を立てて打ち込んで、美雪は最後にエンターキーを押した。
画面が切り替わり、一瞬の光の後に写真が表示された。
上から見下ろした町の映像、ビルらしきエレベーター、地下鉄の駅、学校、学校の机に置かれた花、
パソコン。
10秒ほどの間隔で画像が切り替わっていく。
写真はカラーで色が付いている。
そして、画面に コレを見たものは10日以内に死ぬという文字が現れ真っ暗になった。
「なに、今の・・・・それに女の声が聞こえるきがしたんだけど」
「・・・・無音じゃなかったか?」
不思議そうな鷹矢に美雪も不安になってもう一度画面をだした。
ビル、エレベーター、地下鉄の駅、学校、学校の机に置かれた花、パソコン。
そして10日以内にしぬという文字が現れる。
「声なんて聞こえるか?」
もう一度画面を開いて、画像を見ていく。全ての画像が終わった後文字が出るまでの一瞬の間に美雪は「ココ!」と
言ったが、鷹矢には聞こえないようだ。
「霊の声・・ってやつだな」
オレには聞こえないと不満そうにしている鷹矢に満面の笑みを浮かべて甘いコーヒーをすすった。
「教えてあげようかぁ~。なんて聞こえるか」
ブスッとして鷹矢は頷くと満足そうに微笑む。
「良く聞こえないんだけど、誰も信じてくれない、あたしは殺される。信じてくれない、バカにしたヤツラ全員殺してやる」
って・・・女の子の小さい声が聞こえる」
「・・・誰も信じてくれない・・か」
鷹矢は呟いて、またパソコンの画面を眺めた。
「・・・・」
何十回と繰り返し、切り替わる写真を眺めていたが隣に座る美雪がアッと声を上げる。
何事かと、パソコンの画面から美雪をみると青ざめた顔で鷹矢を見ていた。
「なんだよ」
「・・・・もしかして、コレ見たら本当に死んじゃうのかな・・・」
「・・・・かもな」
男子高校生は、このサイトを見て死んだのだろう。
「期限は10日間か・・・それまでにこの呪いを解かないと俺達も死ぬかもしれねぇな」
「・・・・どうしよう」
美雪は今にも泣きそうな顔をしている。
男子高校生の死を見ている美雪に掛ける言葉も無く鷹矢は何度目かのため息をついた。
「お前さ、パソコン得意?」
頷いたのを確認して、鷹矢はパソコンの電源を落とした。
「この画面に出てくる写真をプリントアウトしてくれないか?」
「わかった」
「この場所が何処にあるのか探そうあと、ホムペを作ったやつも・・・だな」
「・・・うん」
元気が無くなった美雪に鷹矢は安心させるように笑みを作って顔をのぞきこんだ。
大抵の女はコレで落ちた、ホスト時代に使っていた業だ。
「・・・・何笑ってんのよ。気持ちわるい。それに顔が近い!」
が、この女には通用しなかったか。
鷹矢は舌打ちして美雪を睨みつけた。
「せっかく、慰めてやってんのに」
「慰めるを間違ってんだけど」
「お前以外の女は大抵顔を紅くして全てを忘れたんだけどなぁ」
一体どういう生活をしてきたのかと美雪は軽蔑の眼差しを向ける。
「あんたさぁ、バカでしょ。やっぱり裏方とかいって今でもホストやってんじゃないの?」
「やってねぇーって」
「女は嫌いだとか言ってて、大好きなんじゃない」
「あのなぁ・・・」
ガシガシと頭をかいていてまた大きなため息をついた。




