第100話 お前もか
ペコラさんとハナさんとは今後も友好的な交流が持てそうで良かった。
これで生活環境をより充実させる事が出来そうだ。
工房を見学していたリポポさんとピートも帰ってきた。
機織りや色彩豊富な色糸があったりと予想以上に楽しめたそうだ。
今後も帝都へ来る機会が増えるかもしれないな。
今日の商談に満足感を得ながらペコラさんの工房を後にした。
その後も散策をしながら途中で夕食を済ませて宿へと戻った。
夕食はリポポさんのご機嫌をとるためにキノコ料理があるお店へ案内してもらった。
キノコ料理と言っても、丸焼きにしていたり塩での味付け程度のレベルだった。
パスタとかあればもっとバリエーションが増えそうなんだが、そこはリィナに相談だな。
とりあえずはリポポさんのご機嫌が無事に戻ってくれたので良かった。
宿へ戻るとスタッドさんに呼び止められた。
「あんたにお客さんだ。一番奥の部屋で待ってるぜ。」
きっと諜報員からの接触だ。
そう思った俺は、リポポさんとピートに部屋で先に休むように言って奥の部屋へと1人で向かった。
一番奥の部屋、普段から照明も点いていない薄暗い場所だが夜になると尚更に暗い。
暗くて何色かも分からないドアをノックする。
コン、コン、コン。
「どうぞー。」
部屋からは対照的に明るい少年の声が返ってきた。
ドアを開けて中に入る。
意外にも部屋の中は綺麗に手入れが行き届いており上品な部屋だった。
いくつかの蝋燭に明かりが灯され、雰囲気をより引き立たせていた。
「あんたがガルドにゃね?」
部屋の中央で椅子に腰かけて待っていたのは少年だった。
スラリとした細身に小麦色の肌と黒髪が野性味を感じさせる。
頭の猫耳がピクピクと忙しなく動き、大きな黄色の瞳が俺を見つめている。
彼は黒猫の獣人だろう。
「えぇ、俺がガルドです。あなたは?」
「にゃーはクロだにゃ。あんた、なかなか面白そうにゃね。」
「へっ?面白そうって?」
「にゃーの人を見る目は確かにゃ。良いにゃよ。あんたの依頼、受けるにゃ。」
「えっ!もしかして腕利きの諜報員って。」
「それはにゃーの事なんだにゃー。」
「そうなんだ。てっきり使いの人かと思った。」
「失礼にゃねー。まぁいいにゃ。どんな依頼かにゃ?」
クロは椅子の上で胡坐をかいた。長い尻尾をユラユラと揺らしている。
俺は近くの椅子に腰かけて依頼の内容を説明した。
「わかったにゃ。そのカメラで決定的な瞬間を撮影すれば良いんにゃね?」
「その通り。出来るかな?」
「楽勝にゃ!使い方を教えてほしいにゃ。」
早速、魔道具の使い方と10分しか撮影出来ない事を説明した。
クロは物珍しそうに魔道具を見つめ、楽しそうに鼻歌交じりに聞いていた。
「にゃー にゃにゃーん にゃにゃにゃにゃーん。」
あれ、このメロディーって聞き覚えがあるな。
某将軍様が白馬に乗って浜辺を疾走しているあの曲だ。
しかもさっきカメラって言ってたよな?
「もしかして、クロって転生組?」
「そうにゃよ?ガルドと一緒にゃね。」
「えっ、なんで知ってるんだ!?」
「そんにゃの、見ればわかるにゃ。猫の目は誤魔化せないのにゃ!」
マジかよ。
猫の目ってなんだよ。
暗い所でもよく見えるだけじゃないのかよ。
「にゃーは前も猫だったにゃ。神様って奴にチートをあげるから転生しろって言われたにゃん。」
「マジか。元猫なんだ。」
クロは自身のスキルについても、あっけらかんと話してくれた。
猫の目とはスキルの名前で、自分に有益な人物か、どのように有益なのかを何となく分かるようになるらしい。
なんともスッキリしないスキルだ。
さらに野生の勘と言うスキルも持っているそうだが、本人は効力を感じていない。
多分だが、前世の頃から野生の勘は持っていたのだろう。
しかも生まれた時からレベルが周りよりも上がりやすかったらしく、今では50を超えているそうだ。
これって勇者とか主人公が貰うようなチートなんじゃないのか?と自分との違いに憤りを感じつつも、ケラケラと屈託のない笑顔で笑う彼を見ると納得してしまいそうになる。
「どうしたにゃ?」
「いや、何でもないよ。」
境遇の違いを嘆くよりも、今を変える努力をしないとね。
自分で自分を言い聞かせて落ち着いた。
「そうにゃ、報酬の話がまだだったにゃ!」
「そうだね。俺は相場とか知らないから、クロの希望を教えてよ。」
「にゃーは高いにゃよー?」
クロはまたケラケラと目を細めて笑う。
その台詞が本心なのか冗談なのか。
「にゃ!そうにゃ、今から良いトコに行こうにゃ!」
「えっ、今から!?」




