第98話 リポポの過去と妄想
「またリポポにちょっかいを出してるんでしょ。」
猿の獣人と思われる女性はシュヴァインに近づきながら言った。
2人が並ぶと身長の落差が凄い事になっている。
シュヴァインがおよそ190センチを超えるぐらい。
対して女性の方は150センチより少し低いくらいだ。
「おいおい、シンミャ、俺っちは何も悪くないぞ。悪いのはコイツなんだ。」
「うるさい!さっきからちゃんと見てたんだから。問答無用よ!!」
慌てるシュヴァインの豚っ腹に強烈な正拳突きが決まった。
「はむぅ。」
下腹部を押さえ崩れ落ちるシュヴァイン。
なんて武闘派な人なんだ。
「シンミャ、相変わらず元気そうね。」
「リポポも、活躍は聞いているわ。」
「リポポさん、こちらの方は?」
「あっ、紹介しますね。私が前にパーティーを組んでいたシンミャです。」
「シンミャよ、よろしくね。」
シンミャさんが笑顔で握手を求めてきた。
良かった、怖い人ではなさそうだ。
「ガルドです。サイモンの町で魔具師をやっています。」
「へぇ~、魔具師なんだ。強そうな匂いがするんだけどなぁ。」
「あら、ガルドさんは強いわよ?」
「いやいや、俺はただの魔具師ですよ。それより、そちらのシュヴァインさんは大丈夫なんですか?」
「あっ、コイツ?それなら大丈夫よ。タフなだけが取り柄だから。そのうちに復活するわ。」
ハッハッハっと豪快に笑うシンミャさん。
これがいつものやり取りなんだそうだ。
シュヴァインさんも昔のパーティーメンバーだったそうで、駆け出しの2人を先輩のシュヴァインさんがリーダーとして活動していたんだそうだ。
「う、ブゥ~。痛たた。おい、シンミャ!いつも突然殴るのは止めろと言っているだろ。」
「あら、殴られるのが嫌なら躱せばいいじゃない?」
「馬鹿言うな、お前のパンチを躱せる奴なんてほとんどいないじゃねぇか!」
確かに、アレは見事な一撃だった。
リポポさんも腕の立つ冒険者だしな、シンミャさんも高レベルの冒険者だと思う。
シュヴァインさんは、う~ん、よく分からないや。
「ほら、そんな事よりさっさと仕事に行くわよ。」
「フゴッ、こら!引っ張るな。」
「じゃあね、リポポ!」
シンミャさんは手を振りながら片手でシュヴァインさんを引きずるようにして去って行った。
なんとも豪快な人だ。
引きずられながらシュヴァインさんがこちらへ何かを言っている様子だったけど、聞こえなかったので無かった事にしよう。
ちなみにシンミャさんの解析結果はこんな感じだ。
シンミャ
猿の獣人の19歳の女性
帝都の冒険者
身長147センチ
体重43キログラム
B78 W57 H82 Aカップ
明るめの茶髪をショートカットにしており、小柄なので一見すると少女のような印象だ。
大きな目と耳がチャーミングでボーイッシュな女性だ。
「アイツがいなければ、ここももっと良い場所なのにな。」
リポポさんがポツリと言い放った。
「何かあったんですか?」
「いえいえ、さぁ、次に行きましょうか。」
リポポさんが珍しく話をそらしたな。
たぶん、何かあったんだろうけど、これ以上を聞くのは野暮だろう。
まぁ、聞かなくても何となく分かるけどね。
おそらくシュヴァインさんはリポポさんの事が好きになってしまったのだろう。
しかし、リポポさんは仲良しのシンミャさんがシュヴァインさんを好きな事を聞いていたので、パーティー内の三角関係に悩んだに違いない。
そして、その悩みが大きくなって限界を迎えた時にリポポさんは慣れ親しんだパーティーを抜ける事にして、ソロの冒険者として旅をして回っていたのだろう。
今にして思えば、初めてリポポさんを見かけた時は何処と無く、人を寄せ付けないような雰囲気を出していたと思う。
きっとパーティーとの一件で他人と関わり合う事に少し臆病になっていたのだろう。
「ガルドさん。ガルドさーん。」
ピートに手を引っ張られて、ようやく我に返った。
どうやら盛大に妄想へと浸っていたみたいだ。
気が付いた時には目的のペコラさんの工房の前だった。
どの道を歩いて来たのかも覚えていない。
リポポさんが道を聞きながら案内してくれたらしいのだが、俺は上の空で生返事ばかりだったので少し怒っているらしい。
これは申し訳ない事をしたな。
お詫びにまた美味しいキノコ料理のレシピでも紹介しよう。
まずはペコラさんだ。
良い人だったらお近付きになりたいし、是非ともお願いしたい物もあるしね。




