ハーレムが不幸の種、普通の展開が普通じゃない?
「ねぇねぇ! ライト君って食べ物何が好きなの!?」
「ライト君ってかっこいいよね!」
「今度私とどっかいかない?」
教室に入るなり、俺は同じクラスの女子生徒に囲まれてしまった。
この設定は現実ではあり得ないながらも、味わってみて悪い気はしない。
この展開は書いてても誰も不幸にならないしいいんじゃないか?
『どうやら特待生効果らしい。いや、それだけじゃないか。特待生だけだったらあいつもあんな風に曲がらなかっただろう。たぶん俺はあいつの絡んだ事件を解決してこの街、そして国からも感謝されてある程度の名声を得たのと、俺の魔法戦士としての噂が回って将来有望とかいうのもあるんだろうな。
でも、こんなに女の子に囲まれるのは初めての経験で困る。まぁこんな学園生活を夢見てたけどこれはこれで大変だ。こんな場面フランに見られたらこの学校消されるんじゃ……?』
おっと忘れてた!
フランの存在があった!!
まさかのハーレム展開が主人公にとって不幸の種ってどんなに俺を苦しめるんだ!?
書いてる時の俺!
「ちょ、ちょっと待って!」
『もしフランに今の光景を見られたらというのを想像して戦慄を覚えたけど今はまず目の前の事だ。
フランの事も何か手を考えないといけないけど、今は目の前の光景をなんとかしないと!
このままじゃクラスの男……いや、下手すると『男の敵認定』を受けてまた無用な争いを生んでしまう!!』
あっ、ハーレム展開は誰も不幸にならないと思ったけど、物語に登場しない人物にとっては不幸だろうし、面白くないだろうな。
物はいろんな方向から見ないといけないな。
「ははは! 大変そうだな、ライト=ラインハート」
俺の名前を呼ぶ方を向くと茶髪に整った顔、高身長で細マッチョで生きるモテ男とでもいうような男がいてどうやらこいつが俺の名前を口にしたようだ。
そして、その男の脇に黒髪で目つきの鋭い、それでいて顔は女の子にモテそうで危ない雰囲気を醸し出す男がいた。
『誰だ? 俺もしかしてまた面倒事に巻き込まれる?』
どうでしょう?
ただの普通のキャラではないと思いますけど……。
「きぁぁあああ! アレックス様!!」
「こんな身近で見れるなんて!!」
「あぁ死んでしまいそう!!」
「シリウス様も素敵だわ!」
俺の周りにいた女の子達は一斉に現れて男二人の方へと移動する。
『様付け? おおかたどっかの有名な偉いさんとかなんだろうな。
それに俺のクラスはSクラスでこの学校の試験に優秀な成績で受かった生徒が集まっていらしい。だから、このクラスにいる生徒はエリートでありサラブレッドなのだ。そんな中で『様』付けで呼ばれているあいつはその中でもエリートなのか権力者の家柄なんだろう。
それにしてもこの女子たちも心変わり激しすぎだろ!? まぁ俺としても別にそんなすぐ心変わりするような女はお断りだしな。……嫉妬してる訳じゃなくて。俺は一途で清純な女の子がいいんだ。そう、あのリノアちゃんみたいに……俺はあの時出会ったリノアちゃんみたいな子がいいんだ』
様付けとかまさに普通のキャラじゃないよね。
学園に貴族……問題起きそうだな。
この主人公の心の声はフラグか?
それにしても、確かに女の子達の行動の変わりようはすごいよね。
見ていて女性不信に陥りそうだ……。
でも、そう!
俺にはリノアがいたはず!
きっとこの言葉はフラグだ!
「いや、そっちの方が大変じゃないのか? アレックス様とシリウス様とやら?」
『……うん、心の中で少し嫉妬しているのかな? 言葉が少し嫌味っぽくなってしまった。それとも前の学校でケンカ癖がついたんだろうか? それにしてもこの口ちょっとなんとか抑えないとダメかもな。自分で火種を作ってしまってはだめだ』
そうだぞ、口は災いの元。
俺も知ってるはずだろ?
ちゃんとした言葉使いにしろよ!
問題起きるだろ!?
あっ、もしかして起こそうとしてるか?
「貴様!! アレックス様に向かってなんて言い方を!!」
『あ~……やってしまったか。黒髪のシリウスとか言う奴が目を吊り上げ怒っている。
シリウスは見た目の目つきが鋭いから叫んだ事によって周りの女の子が怖がっているけど、俺からしたらなんてことない。俺はもっと見た目こわ~い人らと生活していたからな。
しかも同学年とはいえ一つ年上の人らと。
そんな環境下で生活していた俺にしたら今のシリウスは優男が少し怒っているくらいにしか思えない。そう思うと前の学校でこの辺の耐性がついたのは良かったな。
でも、それにしてもなんで自分の事じゃなくてアレックスってやつの事で怒ってるんだ? ……まさかそっち系? いや、決めつけるのはダメか。前おの学校のライア君も結局は……おそらく違っただろうし。人を見た目で判断するのは良くないな』
……ごめん。
これだけ怒鳴られても動じなくなるような生活させて、ごめんなさい。
「ははは! いや、良い。俺は気にしてないさ。それに久しぶり俺に普通に対する奴を見た」
「しかし……」
「いいではないか。ここは学校だ。身分など関係ないはずだろ?」
「そうですが……」
アレックスという男はそう言って俺の方へと歩いてくる。
『なんだこいつ? 他の奴らとちょっと違うな……』
様付けの時点で違ったけどね。
でも、まぁ貴族にしては心広いよな。
そして、アレックスは俺の前まで来て立ち止まる。
「いきなり失礼した。俺はアレックス。アレクと呼んでくれ」
そう言ってアレックスは俺に手を出してきた。
『なんだ? 握手か? それとも握手した途端に手を握り潰そうとかいう魂胆か?
……まぁどっちでもいいか。
向こうが俺の手を握り潰そうとしたところで俺が負ける訳ないし。
いざとなったら気功使えばいいしな』
こらこら!
そんな挑戦的ではいけません!
それにそんな人を疑っちゃ……うような展開ばっかにしてたんだもんな、ごめんよ。
「俺はライト。そのままライトって呼んでくれ」
俺はそう言って手を出しアレックスと手を合わせる。
『さて来るか…………あれ?』
ん?
普通だな?
まさか普通ってのが普通じゃないっていう展開?
「分かった。ライト、今日から同じクラスメイトとしてこれからよろしく頼むぞ」
「あ、あぁ。こちらこそよろしくアレク」
『てっきり手を握り潰しに来るかと思ったけどそんな事なく、普通に握手……シェイクハンドをして『これからよろしく頼む』なんて言われてしまった。
なんだかちょっと拍子抜けしたけど……でも、無用な争いがないならその方がいい』
そうだよな。
物語的にはどうかと思うけど。
『でも、俺とアレクとのやりとりをシリウスだけじゃなくて、
周りにいた生徒も驚愕した顔で見たけどいったいなんなんだ?
それにあいつはいったい何者なんだ?』
なんだろうな?
まぁ取り巻きチックってやつ?
『機嫌よく席に戻っていくアレクと俺の事を睨みながら同じく席に戻っていくシリウスの事を見ながら考えた。
……でも、考えても分からなかった』
俺もまだ思い出せていないです。