君楽しみ、俺不安
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「柔らかく暖かな風とともに僕たちは今日このウェルホルム王立魔法学校の門をくぐりました――」
俺は特待生という事もあり入学式で入学生代表の挨拶をする事になっていた。
我ながらいきなり生徒の前でスピーチとか、試練を与えたものだ。
ここまで大変な思いをさせるとは……。
キャラ達にストライキ権があったら間違いなく行使されるだろう。
でも、せめてもの救いは噛んだりとか、みんなの前で恥をかくシーンが今のところないところか?
順調にこなしている。
そして、この学校の制服は魔法学校とだけど、紺のブレザーに紺のズボンと普通の制服のようで、女子生徒の制服も同じく紺のブレザーに紺のスカートとまさに日本の高校生と同じようで、俺が青春を味わえるようになっている点は褒められる。
自分で自分を褒めたい。
「――これからはウェルホルム王立魔法学校の生徒としてふさわしい生活を送り、将来の自分の進む道を間違えない為にもこの学園生活で正しい知識と思考を身に着けたいと思います。 一年生代表 ライト=ラインハート」
……決まった!
よし、ここでこれ以上、試練を与えなかった俺はさすがだ!
優しい男と胸を張れそうだ。
俺の挨拶が終わるとともに拍手喝采で拍手の音が鳴り響く。
その時、俺の脳裏にヤンキーの中で番長として戦いに明け暮れ、テストではなく腕の強さを競い合い、女っ気ゼロの中、当初の目標を忘れかけた日々が映し出される。
……うん、ごめんなさい。
まぁでも、過酷な学校生活を送っていたけど、決して悪い学校生活ではなかった思ってくれているのがせめてもの救いか?。
ツレと呼べるような存在も出来たし、友達の大切さを改めて認識できたし、楽しかったと聞かれれば楽しかったと言えると思ってくれているようだ。
でも、『青春か?』と聞かれたら違うと思う。ある種の青春かもしれないけど、あれは一般的な青春ではないと否定もしている。
……それは俺も同感です。
でも、今日からこのウェルホルム王立魔法学校に通って、今度こそここで一番になってバラ色の学園生活を送るんだ! という想いが俺の胸に響き、俺の目がしらを熱くする。
うん、俺も応援するよ。
もう小説は書き上げているはずだけど。
大丈夫! きっと……きっと俺はちゃんとハッピーエンドにするはず!
……だよな、俺?
そう思っていると挨拶をした場所から元いた場所へと戻ろうと俺は歩き出した。
「っ!?」
俺が元いた席へ戻ろうと足をかけてくる生徒がいた。
でも、俺はその足にひっかかって態勢を崩したけど、戦士学校で培った反射神経によりこける事無く、踏ん張り、足をかけていた生徒の方へ振り返る。
あぁ、確かにこの展開書いた気がする。
「大丈夫かい? ライト=ラインハート君?」
振り向いた先にはそう言って下卑な笑顔浮かべる茶髪のツンツン頭の男子生徒とその両隣でクスクスと笑っている黒髪でツンツン頭の男子生徒がいた。
こいつらわざとだな……と思っている俺。
うん、間違いないと思う。
俺が小説書くとしてこの状況で「ごめん、わざとじゃないんだ」と言って頭を下げる生徒なんて登場させない。
それこそ意味がない。
俺は『まぁこいつら貴族とかのお偉いさんは自分より身分の低い奴を下に見るからな』
『こいつらは俺みたいに一般人がこの学校に通っているのが気に入らないのだろう』って思っている。
おそらくそれが正解だと俺も思う。
貴族が庶民と一緒にされたくないと思って絡むのって定番だし。
確か、この学園で特待生ってのは、最近では俺と第一部に出したレインだけだったっていう設定だったはず。
「あぁ大丈夫だよ。あいにく反射神経はいいんでね」
俺は少し嫌味っぽく言葉を返す。
あぁ……なんでこんなケンカを買うような事を……。
そんなケンカ買っちゃいけません!
「ふん、生意気な奴だ。所詮一般人のくせしやがって」
『はいはい、お子様だこと。
その一般人のみんなのおかげで国は成り立っていているのに。
食物を作っているのは誰? 税金を納めているのは誰? 君たちは誰のおかげで生活できているの?』
って、心の中でそんな悪口言っちゃいけません!
思わず口にするとかやめてよ!?
……あっ、でも心の中で毒を吐いて少しすっきりしたんだ。
それならオッケー!
俺は少しすっきりしながら笑顔でその男子生徒を見る。
「な、なんだ? やるのか?」
しまった、やっぱり少し顔に出ていたみたいだぞ。
俺よ、平常心、平常心……。
俺はこんな奴を相手にするんじゃなくて、楽しくバラ色の学園生活を送る為にこの学校で再出発するんだろ?
戦いに明け暮れる生活は前の学校で十分だろ?
だから、こんなモブキャラを相手にしていてはいけないよ?
……だよな? 書いていた時の俺!
『魔法学校に入学したことで魔法の制限もなくなったから、たいていの相手なら問題ない。それこそ、前の学校で身体も体術的なことも鍛えたしな』
って何、不穏な事考えているの!?
「いや、そんなつもりはないよ。ただ心配してくれてありがとうと言いたかっただけさ」
俺はそう言ってその男子生徒の手を強引に取ってシェイクハンドする。
『そう、俺は今物凄く気分がいいんだ。握手をシェイクハンドと言えるくらい気分がいい。やっと憧れの魔法学校で青春を謳歌出来るんだから』
ふぅ~焦った焦った。
俺を焦らせないでくれよ。
そうだぞ、青春を謳歌しないといけないんだからな。
間違っても、俺にヤンキー漫画のような事を味わせないでくれよ。
まぁ、書いてた時の俺次第だけど。
男は俺の手を振りほどこうとするけど、俺は気功を使いそれをさせない。
『こんな目立つ場所でもめているなんて最初から思われたくないしね。最初はちょっとイラッとして嫌味を言ってしまったけど』
そうそう、最初が肝心よ?
最初にそんなケンカして危ない奴と思われたら、モテないしね?
「じゃあ今日から同じ学年の仲間としてよろしく」
俺は忌々しいといった感じで俺を見つめているさっきの男子生徒をスルーして元の位置に戻る。
『まぁあのまま話しても円満とはいかないだろうし、あれ以上あの場にいたら向こうが我慢できなくなってキレたら嫌だしな。入学式早々ケンカ勃発みたいな前の学校でありそうな展開だけは避けたい。ここでは俺はさわやかな学園生活を送りたいんだ』
ごもっともです!
その調子で!
『さて、この次は教室だ。さぁ、今日はどんな一日になるのか……楽しみだ!』
次は教室か……吉と出るか凶と出るか……。
俺は今日もどんな一日になるのか不安です……。




