[記録ログ:回収断片]
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[記録ログ:回収断片]
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白い部屋だった。
静かで、なにも引っかからない空間。
温度も、光も、ちょうどいい。
案内に従って歩く。
迷いはない。
そうするのが正しいと、知っている。
妻のことを思い出す。
思い出す、というより
そこにあるものをなぞる。
彼女を、愛していた。
そう理解している。
彼女が楽になること。
彼女が困らないこと。
彼女が穏やかでいられること。
それを選ぶのが、自分だった。
求められていた。
だから、応えた。
やりたくて、やっていた。
それは、本当だ。
幸せだった。
そう感じていた。
足が止まる。
目の前に、装置がある。
白くて、静かな箱。
ここに入る。
それも、理解している。
彼女を責める気持ちはない。
そういうものは、浮かばない。
彼女は正しかった。
自分も、正しかった。
それで、いいはずだった。
でも——
ほんの少しだけ、
うまく言葉にならない何かが残る。
理由は分からない。
考える必要も、ない。
彼女の顔が浮かぶ。
最後に見たときのもの。
あのとき、彼女は
軽くなったように笑っていた。
ああ、
と思う。
綺麗だ、と。
それ以上は、続かない。
横になる。
視界がゆっくり閉じていく。
自分は、正しかった。
正しく在れた。
それでいい。
それで——
いいはずだ。
意識が、途切れる。
静寂。
体は保管される。
役割を終えたものとして。
そしてまた、
新しい役割が与えられるその日まで——
ただ、静かに置かれる。
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(外部:回収処理区画)
白色照明。
温度一定。
雑音なし。
複数名、無言で作業を行う。
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対象個体、搬入。
固定。
識別確認、完了。
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記憶保持媒体、液相依存。
体内水分、全域対象。
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血液置換工程、開始。
循環接続。
旧血液、段階的排出。
同時に、無記録血液を注入。
流量、一定。
圧、安定。
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個体反応、検出されず。
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血液全量、置換完了。
記憶残存率、基準値以下。
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次工程へ移行。
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全身浸漬処理、開始。
保存槽、開放。
対象個体、収容。
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置換液、充填。
皮膚、組織、内臓。
順次、浸透。
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水分抽出、進行。
分子単位での希釈、分解。
記憶媒体、消失。
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時間経過。
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全水分、置換完了。
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対象個体、
記憶保持機能、消去済。
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保管区画へ移送。
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再利用待機。
用途未定。
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静置。




