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第38話

 マントを羽織って、神鉱炉の上に立ち。


 透過するイメージを持つ。


 すると、すーっとエレベーターで降下していく感覚。


 ……真っ暗。


 そりゃそうか、岩の中だし、光もないし。


 一応眼鏡はかけているから、見下ろせば炎水路と呼ばれる炎水を導く水路は視認できるので、無事に辿り着けはしそうだ。


 今のところ真下に向かって続いている。


 しかし、何処まで続いているのか……。


 俺が来た居住区は、無窮山脈の中腹付近にあった。中腹と言っても世界一高い山脈、エベレストなんざ屁でもないって感じで高い山の中腹から、溶岩が流れているような地下まで行くのは時間がかかるだろう……。


 一応白き神衣を着ていれば熱気や炎からは守られるだろうけど、そこに行くまで時間がかかりそうだなあ。


 炎の守護獣ってどんなものなんだろう。炎と言うと、有名なのは不死鳥フェニックスとか……? いや、フェニックスは鳥だから大地のドワーフとは相反するだろうし……。


 と、視界に違和感を感じて降下を止めた。


 穴が斜め下に曲がっている。


 俺はその穴に沿って移動する。


 随分降りた気がするが……もう数百キロ単位は降りた気が……結構時間も経ってるし……そう言えばこれまでトイレとか行きたいとかならなかったな……食べ物は食べれたけどお腹空いたとかはなかったし……。


 ぼーっと考えてると熱くなってきた。


 ……いや、精神的なものじゃなくて、実際に熱を帯びて来たって言うか……俺が熱出したってわけじゃなきゃ……。


 間違いない。


 確実に周囲が熱くなっている!


 てことはあれだ、溶岩地帯に近付いてるってことか?


 神衣が守ってくれるって言ってたけど、そういや靴は革靴のままだった。神衣の

護は足も込みか?


 唐突に視界が広まった。


 と、唐突に落下の感覚っ!


 そうか、透過のマントの移動能力は透過中だけなんだっ!


 足元に不安があるから慌てて自在雲を引っ張り出す。


  ぼふっ。


 雲にキャッチされて、やっと俺は安心して辺りを見回せた。


 ……あれ?


 てっきり溶岩地帯に落ちてきたと思ったのに、辺りは真っ暗。


 じゃあ、あの熱は何なんだ?


 振り向いて、眼鏡をかけなおして俺が降りてきた炎水の通る道を見た。


 炎水の道は床らしき所で、真っ直ぐ奥に向かって伸びている。


 ここを通って来ていたってことか?


 この先に行くのか。


 何があるか分からないから、自在雲に乗ったままの方がいいよな。


 しかし広い空間だなあ。


 世界が破滅しかけていると大地も力を失って溶岩も引いたってことか?


 守護獣を見つけても、大地に力がなければダメなのかも……。


 とりあえず、炎水の道が続いているってことは、この先に炎水がある場所が続いているはずってわけで。


 炎の道を見逃さないように、雲を俺が座る場所分の大きさにして、地面を舐めるように進んでいく。


 少しずつ。


 熱気が強まっている、ような気がする。


 気がする、だけなんで、どうとも言えないんだけどさ。


 ……いや。



  ぼこっ。


  ぼこっ、ぼここっ。



 何かが沸き立つ音。


 そして、見通しの眼鏡を使っても歪む視界。


 これは……。


 少しずつ向こうが白く見える。


 眼鏡は視界の邪魔をしない。


 遠くを見るスキル【遠視】でじっと目を凝らすと、炎水路の果て、赤く白く熱を発する空間があった。


 その真ん中には、黒い岩で造られた神殿。


 周囲の溶岩が神殿を守るように取り巻いている。


 守護獣の居場所はあそこか?


 自在雲で行けるか?


 とりあえず雲の進行速度を遅めて、少し溶岩から離れるように上に浮いた。


 神衣がなければ、今頃熱死していたかもな。自在雲も神具じゃなけりゃ蒸発してたかも。


 そっと溶岩の上を通りかかると、突然熱が渦を巻いた。


 なんだ?


 見回して。


 溶岩が高波のように伸びあがって四方からこっち目掛けてきている!


 やべぇ、どうしよう、何か使えるか、俺の防御魔法は木壁だけだし、いや、水流もあるなでもあれは攻撃だしいやそれを防御に生かせばとりあえずどうにかしなければ!


水壁ウォーター・ウォール!」


 自在雲に乗った俺の周りに水の膜が張り巡らされ、突き抜けてこようとした溶岩と同士討ちして黒い岩と化した。


「た、助かった……」


 と思って、思い直す。


「白き神衣って、炎からも守ってくれるんだっけ?」


 咄嗟の新防御魔法が出来たけど、意味がなかったらしい。


「ま……まあ、自在雲がヤバかったかもしれないし、これはこれで」


『これはこれで、ではないだろう?』


 凛とした声が届いた。


 男か? 女か? どちらともとれる不思議な声。


『焦って力の無駄遣いをしたのは間違いないだろうに』


「いや、分かってるけど、とりあえず納得させなきゃね」


 誰とも知れない相手に言い訳して、そして俺は慌てて顔を上げて目の前の神殿を見た。


「もしかして、あんた……炎の守護獣か?!」


『だけど、ここまで来れる力の主がここへ来たということは、我が目覚めなければならない時が来たということだろうね』


 敵意がないようなので、神殿の床に降りて自在雲を戻した。


 熱気は神殿の奥から発せられている。


 俺は恐る恐る前進した。


 神殿の一番奥に、炎を球にしたような珠が捧げられていた。


 そういや、俺が落ちてきた原初の神殿も、そっくりな形してたような……。


『もしお前がここへ来られる力の主ならば、この珠を破壊する力を持っているはず。球を破壊しておくれ』


 え?


 そ、蒼海の天剣でいいのかな。


 俺は剣を構え、ゆっくりと振りかぶり……。


 珠の上に振り下ろした!


  きぃん!


 固く透き通った音と共に、珠は粉々になり、その中にあった炎がぶわりと広がる。


 やべっ、焼け死ぬ!


『さっき自分で言ってたじゃないか、神衣があると。どうやら生神は相当混乱するタイプらしいね』


「いや火とか目の前に広がったら普通に死ぬとか思いますけどっ?!」


 一瞬広がった炎は急速に収縮し、白熱する光となった。俺も見通しの眼鏡をかけてなきゃ目が潰れてたかも。


 小さな、小さな、ドラゴン……。


「まさか……火蜥蜴サラマンダー?!」


『ほう。我を知っていたか。異界より来たりし生神よ』


 火蜥蜴は感心したような声を出した。

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