ep5.カラクリの椅子編・6話
一風春と鷹取が闘う頃・米倉真衣は一
米倉は身体を鍛える為にランニングを日課にしていた。
朝10時。ランニングを終えて歩いて帰る途中。米倉は´´守川神社´´と書かれた鳥居を見つけると、シャドウクラブの必勝祈願をしていこうと中に入った。
ジャリ、ジャリ、ジャリ、
白色とねずみ色の小さな砂利が敷かれた道を歩く。その先に賽銭箱があった。
米倉 「…5円玉。…あった」
カチャリン
パンパン
賽銭箱に5円玉を投じると、二礼二拍手一礼をしっかりと行い階段を降りた。
ジャッ、ジャッ、ジャッ、
サンダルが砂利を擦り鳴らす音。
守川は神社にお参りに来た米倉の後ろ姿を確認すると、見覚えのあるロリータファッションの姿をまじまじと覗いた。
階段を降りる米倉が少し離れた所からこちらを覗く守川に気が付く。
守川 「…あ!」
米倉 「あぁ…」
米倉の事を思い出した守川は小走りで近寄った。米倉は守川を無視し階段を降りると少し歩いた先にある販売所へ向かう。
販売所の中には巫女姿の女性ふたりが米倉に優しい笑顔を向ける。
米倉は必勝祈願のお守りを探す。
守川 「お前、あの時の奴だな。俺のビールとつまみ、泥棒してったよなぁ?」
米倉は守川に目も向けずまるで空気のように無視をする。
米倉 「これかなー。すいません!これ下さい!」
´´必勝祈願´´と刺繍された紫色のお守りを巫女のひとりに手渡すとお金を支払いお守りを受け取った。
守川 「おー。ありがとうございますー。そのお守りを購入した代金の一部は、俺の大好きな酒代になります(笑)」
米倉は守川から漂う酒臭さを感じると睨みつける。
米倉 「はあ?」
守川 「そんな顔で見るなよー。ここは俺の実家。そして俺は神主の親父の後継ぎの息子。…こう見えてちゃんと働いてるんだぜー」
米倉は意図をせず守川の懐にお金を入れてしまった屈辱感を感じると、守川からの感謝に無性に腹が立った。
米倉 「朝から酒煽ってるアンタが真面目に働いてる訳無いでしょ?平気で嘘付くような人間でしょアンタ」
守川 「カァーーー!生意気な小娘だこと!まぁその通りだから否定はしないけどな(笑)」
米倉 「神主の息子が酒に溺れてたら罰が当たるわよ!酒癖も悪そうだし止めたらどうなの?」
守川 「ハハハッ!!、バチは太鼓に当たるんだよ!」
米倉 「…ハァ」
守川 「…まぁ…そうだなぁ…あそこに奉ってある石があるだろ?」
米倉は賽銭箱から降りた階段の先に大きく囲われた柵の中に置かれた大きな石を見た。
守川 「この神社の御神石でな。雷が落ちてもヒビひとつ入らなかったあの石を、お前が割ることが出来たら…禁酒してやるよ(笑)」
米倉 「あんたねぇ……」
守川 「まぁ、そんな小さい身体じゃあ難しいと思うけどな。訳のわからん格好もして」
米倉は守川が発した´´訳のわからん格好もして´´の言葉が、過去の記憶を蘇らせると米倉は更に腹を立てた。
米倉 「アンタ!宣言したわね!」
守川 「ぉおなんだ?急にやる気になったか?割れんのか小娘に」
米倉 「待ってなさいよ!準備してくる!」
・・・
一米倉が守川神社を去ってから1時間後一
ジャリ、ジャリ、ジャリ、ジャリ!
ガサッ!
米倉は再び守川神社に戻った。御神石の側に2リットルの水入りペットボトルが3本入った大きなコンビニ袋を置いた。
新しく着替えた運動着にお気に入りのピンクのハンドグローブを両手にはめる。入念に準備運動をする米倉の姿を守川は神社の廊下の端に座り眺めていた。
守川 「戻ってきた戻ってきた。…帰って来ねえと思ったけど。…まぁ3日ともたんだろ」
カパァッ
守川はカップ瓶にアルミ蓋が付いた日本酒を開けるとグッと口に入れた。
守川 「ん?あ!…トイレならこの裏に公衆トイレがあるからそこ使えよなー!」
米倉は遠くから聞こえた守川の声に気付くと、そこで見ていたのかと飽きれ顔で視線を送った。
米倉はファイティングポーズで身体を前後に揺らしながら御神石を睨み付ける。
米倉 「そりゃどうも…」
米倉の右ストレートが大きな御神石の平たい部分を打つ。
シュッ!
ゴッ!
守川 「おー、痛そう…」
守川はコンビニ袋からさきいかを取り出すと口に咥えてしゃぶった。
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
・・・
一米倉が御神石割りを始めてから3日後一
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
米倉は朝10時から夜18時まで、ひたすらに御神石に打撃を与え続ける。
8月の暑さが米倉の身体を苦しめる。
汗と脂が染み込んだピンク色のハンドグローブが、打撃を続ける御神石の1ヵ所に黒いハンドグローブ跡が残るようになった。
米倉 「……」
・・・
米倉の脳裏に家族から言われた言葉が過る。
´´何なんだその格好は´´
´´それで外へ出るつもりじゃないだろうなぁ´´
´´家族で出掛けられないじゃないか、みっともない´´
´´変な格好を続けたいんなら家を出ていきなさい´´
辺りは既に暗くなっていた。
米倉 「…認めろなんて言ったか」
シュッ!ゴッ!
米倉 「自分の好きな格好をして生きるのがそんなに否定されなくちゃいけないの?」
シュッ!ゴッ!
米倉 「自分の価値観人に押し付けんな」
シュッ!ゴッ!
米倉 「…神主の息子?…酒飲んで酔っぱらってても親が死ねば誰が何と言おうと次は自分が神主になれるって余裕こいて。自分のやりたい事もやらずに生きてて楽しいのか!」
シュッ!ゴッ!!
その時
タッタッタ、
米倉の足元からロリータファッションに身を包む少女が現れた。
サファイア・ロリータ 「私も、やる!」
米倉の前に移動するサファイアは御神石に小さな右手をピタリと届く所まで近付き構えた。
米倉 「お!サファイアちゃんもやるか?」
サファイア 「やる!」
守川 「おぉぉ、トイレトイレ…」
外から帰って来た守川が、守川神社の裏にある公衆トイレへ向かおうとする。
守川 「カァー!…まだやってんの。…懲りないねー」
サファイア 「どうやるの?」
サファイアは顔を上げて米倉の顔を見る。
米倉 「こうして手を握るでしょ。そしたらここの拳を前に突き出して平らな部分にパンチするの」
するとサファイアは米倉と同じ構えで立ち、右手をグッと握りしめ御神石に向けて小さな拳を突き出した。
サファイア 「シュッ!」
ゴッ!
固い御神石が柔らかいサファイアの拳を痛め付ける。
震えるサファイア。
ゆっくり米倉の方に顔を向けたサファイアの両目にはたっぷりの涙でクルクルと目を回していた。
サファイア 「…痛い」
米倉 「大丈夫。これは石じゃないよ」
サファイア 「石じゃない?」
米倉 「これはマシュマロが氷って固まってしまったの」
目を一瞬でキラキラと輝かせるサファイア。
サファイア 「マシュメロ!?…でも、白くないよ?」
米倉 「そう。汚れて灰色に染まっちゃったの。でもね、内側にはちゃんと真っ白でふわふわのマシュマロがあるんだよ」
米倉にくっついて話を聞いていたサファイアは、米倉の話を聞くと、ステステと御神石の側に近付くと再びパンチの構えをする。
サファイア 「私、やる!」
米倉 「よし!やるよ!」
一その1時間後一
サファイアは米倉の応援隊長に任命された。
サファイア 「ガンバレーーー!!!!」
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
守川は神社の廊下で横になって片ひじを付きながら米倉の姿を見ていた。
守川 「何なんだアイツ…いつまでもいつまでも居座りやがって…酒がまずくなるっつの」
サファイア 「マシュメロ!マシュメロ!」
シュッ!ゴッ!
今日の守川はスルメをかじりながら缶ビールを煽っていた。
御神石に向かってひたすらに右ストレートを打ち込み続ける米倉の姿。その姿が守川の脳内に残る昔の記憶とリンクし始める。
守川(心の声) 「そういやぁ、大学まで剣道やってた頃は、アイツみたいに御神石に向かって毎日竹刀打ち込んでたっけ。……あの頃は御神石に何やっても親父に怒られなかったなぁ。今じゃ何しても激怒りされんのに……」
サファイアは米倉の横で正拳突きを空に向かって打ち込んでいた。
サファイア 「マシュメロ!マシュメロ!」
守川 「ダアァッ!!何変なこと考えてんだっ!……あ~、親父はアイツがここに来てから体調崩して寝込んでっから病院行かせれば、コロナになったって家に隔離療養だしよー。親父が働いてる姿見ながら飲む酒が一番旨いのによ。……そうだ、ババアに祭りの準備しろって言われてたんだわ」
一翌日一
午前中から猛暑日となった今日も、米倉とサファイアは御神石に打撃を続ける。
そこへ販売所で働く巫女の格好をしたふたりがやって来た。
巫女 「あのー。もしよかったらこれ食べてください」
ふたりの手にはクーラーボックスが握られていた。
サファイア 「マシュメロ!?」
米倉 「いつもお気遣いありがとうございます」
米倉は巫女からクーラーボックスを受け取ると蓋を開けた。
巫女 「今日は守川神社で手作りしてる水大福とお団子です。あとで日傘の大きいのがあるので持ってきます」
米倉 「いやいやいや…長居をするつもりは無いのでそこまでしなくて…戴きます」
ペコッとふたりの巫女が頭を下げてその場を離れると、サファイアがクーラーボックスに頭を突っ込む。
サファイア 「お団子ーー!!!」
米倉 「はいはい。…あ。手が固まって…」
米倉は両手に強く力を入れ続けていたせいか、手がうまく開かなくなっていた。そこで、名乗りを上げたサファイアが串に刺さった御手洗だんごと水大福を両手に持って米倉の口に順番に放り込んだ。
米倉 「あむ…冷たくて美味しい…ありがとう」
サファイア 「私、我慢する」
米倉は水の入ったペットボトルを手首を何とか使って開けて口に入れる。
米倉 「ハハッ!サファイアちゃんも食べな!」
サファイア 「え?………食べる!」
サファイアはモグモグとハムスターの様に食べ始める。
・・・
一その日の夕方一
守川は神社に勤める者達と大きな資材を神社前に運び始めた。
守川 「おぉおぉ!どけどけ!危ねぇぞ、これから矢倉建てるんだ」
サファイア 「なんだなんだ?」
サファイアは外に出てくる神社の人達を不思議そうに見ていた。
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
夕暮れの空が紫色に変わると、少し涼しい風が神社の中に流れてきた。
ただひたむきに米倉は御神石に右の拳を打ち込む。
米倉(心の声) 「…負けてばっかだった。…家でも、シャドウクラブでも。…だからって逃げたくないし諦めたくない。…自分で決めた事をやり続ける、やり抜く事が私の生き方なの」
シュッ!ゴッ!
シュッ!ゴッ!
サファイア 「…マシュメロ!マシュメロ!…真衣ちゃん!ファイトーーーー!!!」
米倉(心の声) 「こんなに固い石だって……私の前に現れたものは全て倒す!、誰にも邪魔なんかさせないんだからっ!!」
その時
米倉の応援をするサファイアの様子が変化した。
サファイア 「マシュメロ!…ん?…なんか力がみなぎってきたよ!真衣ちゃん!」
するとサファイアは少しだけ身体が大きくなると、小学1年生から小学6年生程の体格にまで急成長した。
シュッ!ゴッ!バキッ!
その直後に打ち込んだ米倉の打撃が御神石の上部に細い亀裂を入れた。
サファイア 「キャー!真衣ちゃんもうちょっと!ロリータパワーでガンバレーーー!!!!」
シュッ!ゴッ!ゴッ!
ゴッ!ゴゴッ!ゴゴゴッ!!!
米倉は左右の拳を御神石に次々と打ち込んだ。
米倉の打撃が加わる度に御神石にヒビが入ると、亀裂の幅が開き始めた。
サファイア 「イケーー!!!!!」
米倉は最後の一打に全力を込めて右ストレートを打ち出した。
シュッ!!!!
ガバキバキバキィイィイィイイインンンッッッ!!!!!!
ゴロ、ガゴン、ゴロン
守川は矢倉を張るためのロープを思い切り引っ張っていたのだが、大きな破壊音と御神石が割れた姿を目撃しロープから手を離した。
守川 「…おい……嘘だろ……何をやっても割れなかったんだぞ…」
米倉は血が滲むピンク色のハンドグローブの手を守川に向けて指を指す。
米倉 「アンタ宣言したわよね!、お酒絶対に止めな!、私が石を割れたんだから、アンタにだって禁酒くらい出来るでしょ?」
すると
割れた御神石に触って確認しているサファイアが身体を震わせて米倉に顔を向ける。
サファイア 「真衣ちゃん、これ、マシュメロじゃ、ない?」
涙目をグルグルと回しながらサファイアは米倉に聞く。
米倉 「ごめんサファイアちゃん!私が割るの遅かったから石に変わっちゃったんだ!」
両手を合わせてサファイアに謝る米倉に、サファイアはポコポコと優しいパンチを米倉の背中に食らわせると身体のサイズが元の小さい姿に戻った。
サファイア 「真衣ちゃん、今度マシュメロ1000個くれなきゃ手伝わないからね!」
と涙目で叫ぶと米倉の影の中に消える。
米倉 「ふぅ…危ない危ない…」
ミシ、、ミシ、、ダンッ!
割れた御神石、矢倉がうまく組み立てられず崩れ落ちる様、神社のあちこちに捨てられたゴミと空き缶。未だコロナで不調な状態にも関わらず、守川の父であり神主の守川金次郎が杖を突きながら姿を現した。
金次郎 「ゴホ、ゴホッ!…清人!どうなってるんだっ!!!」
守川清人 「…なんで今出て来る」
金次郎 「何故御神石が割れておるんだ…」
何か嫌な予感を察知した米倉。
米倉 「…え。…っとそれは、」
米倉が金次郎に向かって言葉を走らせようとした瞬間。
守川清人 「あっちゃあぁあー!、俺がやったんだよさっき!矢倉の鉄筋倒しちまってよぉ!」
米倉 「いや、」
神社の廊下に立つ金次郎は懐に入れていた自分の下駄をひとつ取り出すと剛腕をふるい守川に向かって投げつけた。
ブンッ!!
ゴッ!
下駄は守川の頭に命中する。
金次郎 「お前は神社の事を何ひとつ分かっとらん!汚すだけ汚しおってー!!このバカ息子が!!」
守川 「っわかんねえよ!、アンタのバカ息子が´´バカ´´取って来るからよ!ちょっと待ってろ!」
守川の目には何か決心した生きる瞳に変わっていた。
米倉はさっきまでとは違う守川の雰囲気に少し驚いた。
米倉と守川の視線がふと合った。
守川 「俺は今日から酒を止める。…ここの神主にふさわしい男になってやる。…別にお前があの石を割ったからじゃないからな…」
米倉 「…嫌いじゃないよ。その目付き」
神社前では祭りの準備に何人もの人がいるものの、金次郎と守川の怒鳴り合いが終わっても尚、誰もいない湖にいるかのような静けさが続いていた。
・・・
次の日。守川は早朝から自分の部屋の押入れを漁っていた。
ガサ、ガサ、ガザザ
守川 「あったあった…」
守川は重そうに両手で押入れから紺色の袋を取り出すと畳の上に置いた。
守川 「ちゃんと丁寧に保管してらぁ」
紺色の袋から何かを取り出す。
それは剣道の胴着一式だった。
守川はゆっくりと自分の過去の記憶を思い出すように胴着の紐をほどいた。
ザッ、、シュ、シュビ、、カチャ、ギュ、
守川の手際は胴着のひとつひとつを身体に取り付ける度に速さを増す。
そして、頭の先から足の先まで、剣道の胴着一式に包まれた守川は、スマートフォンとしがない財布だけを持って家を出た。
・・・
師範と会うのは何時ぶりだ?。と言うかちゃんと生きてるのか?。
俺は大学時代に世話になった剣道部の師範の自宅兼道場を目指した。
守川神社を出発し電車で1時間。
胴着に身を包むと中から香る臭いに当時の記憶が蘇った。
俺は目を瞑り剣道部時代を思い出す。
そこからバスに乗り換えて更に30分。
あぁクズだ、クズだよ俺は。だらしがない神主の息子だと周りから言われるのも当たり前の人生しか送ってねえ。
…何度も何度も挫折して、何度も何度も這いつくばって前だけは向いて生きてきたつもりだ。…今となっては深夜しかやってない行き付けのbarで出来た仲間としかつるまねえ52才のおっさん。
……それでも、それでもだ。あのバカみたいな格好した小娘にウチの神社の御神石を割られてみろ。´´何が起こるか分からねえのが人生だろ´´ってアイツに言われた気がしてならなかったんだよ。………もう一回。もう一回だ、やらせてくれよ、心入れ換えるからよ親父。
…神主、目指す。心決めたんだ!
ザッ、サッ、ザッ、サッ、サッ
守川が大学時代に剣道部の合宿でよく来ていた師範の道場。
その前に守川は到着した。
古びた趣のある木の入口は開かれている。
守川 「…着いた。……入るか」
胴着を纏った守川は入口で靴を脱ぐと、素足でよく磨かれた木の床に触れた。
ピタン、ピタ
軋みひとつしない綺麗な道場の床張り。
守川が入った所から上座に位置する所に、白髪を長く伸ばし一本に結んだ衣手姿の男性が背を向けて立っていた。
守川 「…お久しぶりです。師範」
三日市箕六 「…ほぅ。その声は、清人か…珍しい客人だ」
守川 「…30年ぶりでしょうか」
三日市 「私の心は、いつもの若いときと一緒よ…清人、ここへ来た理由は」
守川 「…稽古を、つけて頂けないでしょうか?」
守川の答えを聞くと一度目を瞑り再び目を開ける三日市。
三日市 「よろしい。…まずは、乱取りといこうか」
三日市は壁に掛けてある竹刀を2本取ると、1本を守川に手渡した。
三日市 「今日まで何があったのか…己の竹刀で体現してみよ」
三日市の瞳は銀色のナイフの様に鋭かった。
放たれるオーラに守川の全身に鳥肌が立つ。
守川 「ダアァアァアァアアァッッ!!!」
守川は鳥肌を、緊張を、打ち消したい衝動に刈られ大声を上げた。
三日市は一切動じない。
道場の上座。そこに掲げられた掛け軸には´´利他の心´´と達筆な文字で書かれていた。
蹲踞の姿勢で三日市に相対する守川。
目を瞑り心を落ち着かせ、一息、吐くと獲物を狩る鷹の様な目付きで三日市を見据えた。




