敗北処理! カマセ昏倒!
「ウソ、あの化け物きてんの?」
「家の、名誉に関わる、事ですから……全力を尽くすに決まっているでしょう」
「あー……なるほど。それはそうか……」
そんなもんかぁ……あの物凄いの来てんのかぁ。口八丁でどうにかは……
「……出来無いよなぁ……まぁ、まず。絶対に」
「私のように話を聞く、相手では、まず有り得ませんよ……武を通じて語り合うを良しとして生きているような人ですから」
うえーいっちゃんめんどくさいタイプじゃん……カマセだって話くらいは聞くってのに。
「もうすでに、あの子の元に襲撃をかけているでしょう。彼を止めなければ、いずれにせよ終わりはしませんよ……」
「あっそう……うわー、面倒だなぁ……どうしようかな」
童子切さんも抵抗してるだろうから……そうだ。やりあってる間に不意打ちとか。
「……取り敢えず、行くだけいってみるかなぁ」
「行くんですか?」
「ま、どうにかするつもりではいるけど。どんな手を使ってもおかえり頂かないと行けないから。面倒だし。ホント」
真っ正面から戦うのは嫌なんだよなぁ。あいつ。
「そう、ですか……綱義は、本気で強いですから、お覚悟しておいた方が」
「まともにぶつかったりはしないからしないから、大丈夫ですよ。うん……それじゃ」
……勢いでお姫様抱っこしてるけど、流石に重いなー。背負い直さないと。
「で、警戒して来てみたら……なんで負けてるの、あんた」
「……聞いてくれるな。俺自身、自分の見る目の無さを、恨んでいるところだ」
あのデカイのが、学校の門前の路上にひっくり返ってる。はっきり青痣もできてる。
「童子切さん……じゃないよね。多分。失礼だけど、あんたに勝てるビジョンが思い浮かばなかったんだけど」
「察しの通りだ……全く持って、家屋の問題に割り込んで。無粋な男だったよ」
無粋な男……あ。
「……もしかして、辰門司が、殴り合ってるときに割り込んで来た?」
「あぁ。『童子切の奴とやるなら、俺ともやってもらおうか!』とか言いながらな」
あー……なんだろう。あいつの事よく知らんけど想像できるわ。
「なるほど、二対一になってぼろ負けしたのかな?」
「二対一、と言うよりは二連戦だな……あの……いや、もう面倒だ。士鬼の奴と戦った後に乱入して来た……全く、遠慮がない」
……なんだろう。こいつの迫力、完全に消え失せてるなぁ。
「負けて、気を張ってたのが緩んだ?」
「正直に言えば……な。私の予想の遥か上を成長速度を見せられ……対応が追いつかずあっさりと負けた。油断、慢心、無様にすぎる負け方で、逆に笑えて来た……お前達が無事という事は、安奈の奴は……」
「んーん、おねーさんの勝ちだよ。向こうの方がボロボロで出だし出来なかったけど」
「勝者の方がボロボロか。はっ、奇妙にすぎるな」
笑ってるって言うか、微笑んでるって感じだけどね、今のあんた。
「で、何の用だ……敗者の俺は、静かに引き上げるつもりなのだが」
「ん、あぁ。それならいいのよ……あんたと関わり合いになるとか、嫌だから」
「……荒事は好まない、か。性格と才能の高さが釣り合っていない奴だ」
「ほっといてよ……私は、普通に生活……カマセと普通に遊んだり、笑ったり出来ればいいんだから」
カマセは武術とか、そんなのばっかりだけど……偶には普通に買い物とかもしたいし。
「……俺のように、才能と性格が噛み合っている奴は珍しいと言うのは、本当らしい。其方の担がれている方や、俺を倒したあの男は、どうやら俺と同類のようだが」
「それはあんた達が恵まれてるってことじゃん?」
「……ククッ、全くもって違いない。俺と言うのは実に恵まれている」
うーん、穏やかになっている……ま、でも良いか。喧嘩せずに済みそうだし。
「ま、アンタがそんな風になってるならまぁ、安心かな。じゃ、私たちはこれで失礼するから、一応、体に気をつけてとだけは言っておくねー」
……一応救急車くらいは呼んでおこうかな。変に恨まれるかもしれないしなぁ。
「えっと、携帯携帯……ん?」
なんか向こうから走ってくるんだけど……うわ、テンプレみたいな黒塗り高級車だ。
「つ、綱義様ぁ! ご無事ですかぁ!」
「ヒィカオニアザァ!? すすすすす直ぐに本家に戻り治療を!」
「おちおち落ち着け、まず、まずはゆっくりと、傷つかないように、車の中に!」
「畜生、俺たち以外は全員のされたとか……情けない!」
……出てきたオッサン三人がものすっごい小物っぽくて草が生える。
「これは……救急車呼ばなくても良い奴だな。うん。今の内にさっさと帰ろう」
関わり合いになるのも面倒だしー。さっさとかーえろかえろ……しかし。
「……従者だかなんだか知らないけど、全員おっさんなのに、ことごとく若造より体格がヒョロイっていうのは、割と面白いというか」
よい、しょ……ようやくベッドまでたどり着いた。重いんだよあんた。
「フゥ……疲れた。別に体力全快の時なら良いんだけどなぁ」
「……うぐ、この、この俺、が……」
はぁ。ったく。結局最後に油断して負けるんだから、こいつは。
「なんでもうちょっと考えて動かないかなぁ……そうすりゃ変に怪我することもないのに」
……まぁ、こいつがこんなんじゃ無くなったら、それはそれで気持ち悪いから、いいか。
主人公(っぽい奴)サイドは勝ったというのに、主人公(本物)は普通に負けている。




